2025年4月25日付の朝日新聞が、
『大学付属小で授業264時間不足 担任、国数社など削り総合学習に』
と題した見出し記事を報じていました。
この大学付属小は、信州大学付属小学校ですが、信州(長野県)は、「教育県」といわれ、受験的な詰め込み式教育を行なわないイメージがあります。
また、信州大学では「総合学習」という授業があり、その中で、国語、数学などを教育していた・・・という担任の先生の判断があったのかもしれません。
以下に、この記事を要約し、学校側が取るべき再発防止策を考察しました。
《以下、記事の要約》
◆信州大学付属松本小、授業時間不足 補習で対応へ
信州大学(本部・長野県松本市)は2025年4月24日、付属松本小学校の1クラスで、2024年度に学校教育法施行規則で定められた授業時間が複数の教科で不足していたと発表した。
対象は3年生以上の約35人で、国語、社会、算数、道徳など7教科で、本来必要な年間665時間に対して264時間不足していた。
原因は、担任教員が児童の探究学習を重視し、国語や算数の時間を「総合学習」に振り替えていたため。
信州大学付属松本小は、1~2年生で教科の枠にとらわれない独自カリキュラムを行っており、担任は3年生以上にもその手法を適用したと説明している。
信大は他学年や他の付属校についても調査を進めるとともに、教頭や校長が週ごとに授業の実施状況を確認するなど、再発防止に取り組むとした。
信大は「児童・保護者に心配と迷惑をかけた」と謝罪している。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
<問題の是非と学校側が取るべき再発防止策>
今回の信州大学付属松本小学校の授業時間不足問題は、単なる「ルール違反」ではなく、現行の教育制度と個別教育実践の間にある矛盾を浮き彫りにしました。
まず是非を考えると、単純に授業時数が不足していたこと自体は、学校教育法施行規則に照らして形式上の問題があります。
しかし、今回の担任教員は単に怠慢だったわけではなく、児童の探究心を育むために「総合学習」に重きを置くという、教育的意図をもって行動していました。
国語や算数といった個別教科の知識を、総合的なテーマの中で関連づけて学ばせる試みは、現代の教育理念、特に「主体的・対話的で深い学び」(アクティブラーニング)にも合致しています。
一方で、現行法令では、教科ごとに標準的な授業時数が定められており、形式的には各教科の履修を担保する必要があります。
たとえ中身が充実していても、ルールを逸脱すれば、児童の学習権や教育機会の平等性に対する社会的信頼を損ないかねません。また、学力評価や進学などにおいて、公的な基準との齟齬が生じるリスクもあります。
<学校側が取るべき再発防止策>
第一に、教員個人の教育方針と学校全体のカリキュラム運営との整合性確保が必須です。
担任教員が創意工夫を凝らすことは重要ですが、教頭や校長が定期的に授業計画・実施状況をチェックし、全体の教育目標や法令に沿った運営がなされているかを確認する仕組みが必要です。
第二に、総合学習を重視する場合のガイドライン整備です。
例えば、総合学習内で扱った内容が、どの教科の学習目標に対応しているかを明示し、授業時数の換算方法を標準化すれば、形式的な履修要件も満たしつつ、柔軟な教育実践が可能になります。
第三に、保護者・児童への丁寧な説明と合意形成です。教育方法の意図と狙い、標準時数との関係について透明性をもって説明し、理解と信頼を得る努力が不可欠です。
突然の報道で不安を与えるのではなく、あらかじめ教育方針を共有し、教育の質に自信を持って示すべきです。
今回のケースは、型にはまった授業だけが正解ではないことを示す一方で、制度の枠組みを無視するリスクも教訓として残しました。
信州大学付属松本小学校には、この両立に向けた模範となる対応を期待したいところです。
【好評発売中!】
『サービス業のISO(設計・環境側面・危険源・気候変動)』(令和出版)2025年4月30日発売
『~マーケット・クライアントの信頼を高めるマネジメントシステム~ サービス業のISO (設計・環境側面・危険源・気候変動の実践ガイド)』 著:有賀正彦 - 令和出版
『できるビジネスマンのマネジメント本』(玄武書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)
http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001