2025年5月2日付の「テレ朝ニュース」が、
『秋田 風力発電の羽根落下 設置会社“前日に異常なし”』
と題した見出し記事を報じていました。


再生可能エネルギーとして注目されている風力発電は、いまや、全国各地にあり、この事故は他人事とは思えません。
羽の落下で亡くなった方は、“家族に山菜採り(タラの芽)に出かける”と告げて自宅を出たそうです。
 

以下に、この記事を引用し、電力会社が改善すべき再発防止策や国が取組むべき法規制(例:風力発電の設置基準)について、考察しました。

《以下、記事の引用》
2025年5月2日、秋田市で風力発電の羽根が落下し近くに男性が倒れていた事故で、5月3日朝から電力会社の社長らが現場に入り、事故の状況を確認しています。 

5月2日午前、秋田市の風力発電の風車の羽根が落下しました。 
現場では近くに住む宍戸敬さん(81)が倒れているのが見つかり、その後、死亡が確認されました。 

さくら風力 盛高健太郎社長 
「皆さんの憩いの場である場所において不安な思いをさせてしまいまして、大変申し訳なく感じております。本当に申し訳ございません」 

風車を設置した「さくら風力」の社長らは、5月3日午前8時すぎに現地に入りました。 
「さくら風力」は事故前日の5月1日に行った目視による点検で異常はなかったとしています。 
警察は、5月3日朝に現場に入り、羽根の落下と宍戸さんが亡くなった因果関係を調べています。
(記事の引用、ここまで)

《筆者の考察》
秋田市で起きた風力発電の羽根落下事故は、再生可能エネルギーの推進と安全性の確保がいかに両立しにくいかを浮き彫りにしました。
 

風力発電は「クリーンエネルギー」として国も積極的に導入を進めていますが、機械的な巨大構造物である以上、設置と運用には極めて高い安全管理が求められます。
 

今回の事故では、81歳の男性が命を落とすという最悪の結果を招きましたが、その背景には企業と国の「安全設計と法的対応の緩さ」があったといえます。

<電力会社が改善すべき点>
まず電力会社が改善すべき点は、形式的な目視点検への依存です。
記事によれば、事故前日に目視点検が行われ「異常なし」と判断されていました。
しかし、羽根の先端は地上80m以上。高所にある巨大構造物の劣化や亀裂を肉眼だけで確実に判断するのは実質不可能です。
今後は、高所点検にドローンや高精度カメラ、赤外線検知、振動センサーなどを組み合わせた多角的な診断手法を義務化することが必要です。

さらに、現行の維持管理基準の見直しが急務です。
多くの電力会社では、設置から一定年数経過した設備にも同様の点検体制を適用していますが、金属疲労や部材の経年劣化のリスクが無視されがちです。
特に風力発電設備は海岸部や山間部といった過酷な環境下に設置されることが多く、腐食・亀裂・摩耗といった進行は想定より早くなる傾向があります。
これに対し、予防的に部品を交換する「予知保全」体制の構築が不可欠です。

<国の法的整備の必要性>
一方、国が講ずべき法的整備には以下の2点があります。

1)設置基準の見直しと「立入禁止半径」の法制化
現在、風力発電所の敷地周辺に明確な「飛散リスク区域」の設定義務はありません。
だが、今回のように羽根が敷地外の公園内に飛来し死亡事故に至った以上、設置基準に「人が立ち入る可能性がある区域から一定距離を保つこと」や、「リスク半径内を原則立ち入り禁止区域に設定する」ことを義務化する必要があります。

2)定期点検の方法と頻度の厳格化および報告義務の導入
目視だけでなく、第三者機関による点検結果の報告義務化とともに、国による巡回監査制度の構築も検討すべきです。さらに、設置認可時には「撤去計画」「長期劣化対応計画」を義務付け、適切なライフサイクルマネジメントを制度化すべきです。

再生可能エネルギーの導入拡大は持続可能な社会の構築に欠かせませんが、安全性を軽視したまま推進すれば、地域住民の信頼は失われます。
命を守ることが大前提であり、企業も国もその責任を重く受け止める必要があります。
今回の事故を教訓とし、全国の風力発電所の緊急総点検とともに、技術と法の両面からの再設計が求められています。
 

 

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