(伊勢国多気郡 神服織機殿神社)




【古事記神話】本文 
(~その48 機織る忌服屋に逆剥ぎ馬が…)




弥生人にとってアマテラスとはどういう神だったのでしょうか。

記紀神話から朧気ながらもその実像は浮かび上がってきます。でもふだんどんなことを考え過ごしていたのか…

思うことは自由。

今回の【大意】【補足】から
いろんなことを思ってみて下さいませ…。


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【読み下し文】
天照大御神忌服屋に坐して 而して神御衣織らしめたまふの時 其の服屋の頂を穿ちて 天斑馬を逆剥ぎに剥ぎて 而して堕とし入る時の所 天衣織女 見驚き 而して梭を陰上に衝くに於ひて而して死す [陰上は富登と訓む]


【大意】
天照大御神は「忌服屋(いみはたや)」に居て神御衣(かんみそ)を織っていました。その時、速須佐之男命が服屋の天井に穴を開け、斑(ふち)のある馬を逆剥ぎにして落とし入れました。天の衣を織る女はそれを見て驚き、梭(ひ)で陰上(ほと)を突き死んでしまいました。


【補足】
◎「忌服屋(いみはたや)」ですが、「特撰版 日本国語大辞典」には「斎服屋」とし、「斎み清めた機殿(はたどの)、神聖な機(はた)を織るための建物」とあります。つまり「忌」と「斎」を同義とみているようです。

「忌」は多くの場合、「いやなこととして避ける」という意味で用いられます。ところが「斎」と同義の意味も。ここでは「避ける」ではなく「斎」であると。

◎天照大御神はその「忌服屋」で「機織り」をしていました。これはどういうことなのか…。

これは「棚機つ女(たなばたつめ)」であると解されます。神が川から「御生れ(みあれ)」する際の神御衣(かんみそ)を織ること。

━━カミさまは一年に一度、海から、または海から通じている川をとおって、遠いところから訪問してくるものと考えられていました。そこで人びとは、村ごとに、海岸や川ばたの人里はなれたさびしいところに湯河板挙(ゆかわだな)とよぶ小屋をつくって、カミの妻となるべき処女を住まわせ、カミのおとずれを待ちうけさせていたのです。そして、この棚機つ女はふだんはカミの着物を機にかけて織っていました。カミがおとずれてきたとき、これを着せて、自分は神の一夜妻になるためです━━(筑紫申真 「アマテラスの誕生」より)

これが中国から伝わる「七夕まつり」と同化していくのですが…
これは上賀茂神社(記事未作成)で行われる「賀茂のみあれ」まつりで、その様子が表されるのですが…

何よりもこの記述では、天照大御神は高天原を統べる主宰神でもなければ、最高神としての太陽神でもありません。主神を斎祀る巫女となっています。これこそが天照大御神の正体!

人里はなれた川の畔の小屋で、一年一度の一夜妻となるためにせっせと機織りをしていたのが天照大御神だったのです。斎王の原型です。

その後に「衣を織る女はそれを見て驚き…」とありますが、天照大御神が巫女となると具合が悪いので取り繕ったもの。別の女性を登場させ、実際に織っていたのは天照大御神ではないとしました。

一方で紀の方は実際に機織りしていたのは稚日女尊となっています。天照大御神の妹神。

あくまでも神話でありこの時代に正確なことは伝わってはいないと思います。ですがやはり「忌服屋」に一人で籠り、「その日」のためにせっせと機織りを続ける純潔な巫女…その女性を天照大御神として考えていたと。後の時代にいろいろな附会が付け加えられたのでしょう。


(伊勢斎宮跡) *写真は2007年夏頃撮影と思われます


過去記事一覧
■本文 11.天地開闢 12.淤能碁呂嶋 13.美斗能麻具波比 14.蛭子・粟嶋 15.大八州國前編 16.後編前半 17.後編後半 18.国生みその他主要六嶋 19.神生みの開始 20.河と海の神生み 21.大地の神生み 22.伊邪那美命は病に 23.病の伊邪那美命が生んだ神 24.伊邪那美神が神避り… 25.迦具土命を斬って神々が生まれる 26.軻具土命を斬って…続き 27.軻具突智命の遺体からも神が… 28.黄泉国へ 29.変わり果てた伊邪那美命の姿 30.「逃走中!」 31.桃の名は… 32.永遠の別れ…  33.筑紫の日向の小門の阿波岐原へ 34.禊祓で成った神々 1 35.神々 2 36.神々 3 37.「三貴子」の誕生! 38.天照大御神に高天原を事依さす 39.月讀命に夜之食國を事依さす 40.スサノオ神に海原を事依さす 41.伊邪那岐大神が須佐之男命に怒る 42.スサノオはアマテラスの元へ 43.宇氣比で諌めよう! 44.宇氣比の結果は… 45.三女神 46.五男神のうちの… 47. スサノオが暴れる