「陰陽五行」や「暦」に精通していた天武天皇(明日香村埋蔵文化財展示室より)



【古事記神話】序文 (~その6 天武天皇 後編)


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壬申の乱に大勝利した大海人皇子は、都に戻ってきます。前回はそこまで。
そしていよいよ天武天皇に即位し…というのが今回の記事。あくまでも「序文」に過ぎませんが。


【読み下し文】
歳大梁に次り 月夾錘に踵り 淸原大宮にして 昇りて天位に卽く 道は軒后に軼ぎ 德は周王を跨へたまひき 乾符を握りて六合を摠じて 天統を得て而して八荒を包ねたまひき 二氣の正しきに乗り 五行の序を齊へ 神理を設けて以て俗を獎め 英風を敷きて以て國を弘めたまひき 重加へるの智海は浩瀚として 潭く上古を探り 心鏡煒煌として 明るく先代を覩たまひき


【大意】
そして酉の歳の二月に(※)飛鳥浄御原の大宮にて「天位」(天皇)となられました。道(孔子が説いた概念)は軒后(黄帝)より優れ、徳は周王を越えるものでした。乾符(三種神器)を引継ぎ六合(天下)を総べ、天の正しい統嗣を得て国の隅々まで治めました。(陰陽の)二つの氣性は正しく作用し、五行の序は正しく循環していました。神の理を整え俗(ならわし)を奨め、下の者を導くすぐれた教えをもって国を弘めていきました。智識は海のように広く、深く上古を探求し、心は鏡のように輝き煌めき、前代をよく観て通じていました。


【補足】
・今回は少々苦労し、かなりの時間を消費。冒頭の「歳次大梁 月踵夾錘」がどうしても読み解けず、家にある虎の巻本みたいなものからそのまま借用しました。なんとなく「年月」っぽいことを書いているのだろうな~とまでしか分かりません。
・今回の場面で特筆すべきところは見当たりません。言わずと知れた「天才 天武天皇」。形容する言葉が羅列されるのみ。陰陽道の影響が強いな…という程度でしょうか。
それにしても、天武天皇の頭の中の構造を見てみたい…などと思っているのは私だけ?



これまで3回に分けて天武天皇の記述を訳してきましたが、これは次回に訳を予定しているものの「修飾」に過ぎません。

「修飾」がこれほどのものとなる天武天皇って…とあらためて偉大であると感じます。
もちろん古事記編纂を太安万侶に勅したからではありますが。