スサノオ神が「曽尸茂梨」から五十猛神とともに上陸したとされる神島・小神島・神上





【古事記神話】本文
(~その40 スサノオに海原を事依さす)




遂に「三貴子(みはしらのうづのみこ)」が生まれました。

天照大御神には → 「高天原」を事依さして(統治を委ね)…
月讀命には → 「夜之食國(よのおすくに)」を事依さして…

と来ました。
このタイミングで月讀命を紐解く記事をつらつらとやっていましたが、

続いて最後にスサノオ神の登場です!


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【読み下し文】
次に建速須佐之男命に詔して 汝は海原と知ろしめし所を事依させたまひき也 故に各依せ賜ひし命の随(まにまに)知ろし看す(めす)中に 速須佐之男命 命さし所の國知らさずして八挙の須(やつかのひげ)心前に至りて啼き伊佐知伎也 [伊自り下四字以て音 下此に效ふ] 其の泣きし状は青山枯山の如く泣き枯れ河海は悉く泣き乾き 是を以て悪しき神の音 狹蠅の如く皆満ちて万の物の妖 悉くに發ちき


【大意】
伊邪那岐命は次に建速須佐之男命に海原を治めることを命じました。三貴子各々が命じられた通りに治めている中で、速須佐之男命だけが命じられた国を治めず、成人し髭が胸元に届くまで泣きわめいていました。その泣く様は青山が枯山になるほど、河や海は乾くほどのもの。悪神の声は蠅が集るが如くに充満し、災いが次々と起こりました。


【補足】
◎スサノオ神には海原を治めるようにと命じました。これは紀では異なる記述となっています。以下の通り。

* 紀の本文 … 天照大神(天照大日孁尊)→天へ、月弓尊(月夜見尊・月讀尊)→天へ、素戔嗚尊(神素戔嗚尊・速素戔嗚尊)→根國へ
* 紀の一書 … 大日孁尊→天地を照らす、月弓尊→天地を照らす、素戔嗚尊→根國を収める
* 紀の一書 … 天照大神→高天原を治める、月讀尊→滄海原を治める、素戔嗚尊→天の下を治めるように命じられるも伊弉冉尊のいる根國を思い泣いてばかりいるので好きにしろと追放
* 紀の一書 … 天照大神→御高天之原を任せる、月夜見尊→日とともに天の事を任せる、素戔嗚尊→御滄海之原を任せる

見事にバラバラですが…ツクヨミ神に関しては取って付けた感があると感じています。言わば天照大神の「ついで」のような感じ。もちろん「日」と「月」だからともに「天」となるのでしょうが。

これが他記事にて書き続けた、ツクヨミ神は天武天皇が創生したものであり、自身をなぞらえたという説に賛同した要素の一つ。

◎一方で「根の国」に追放されたり「滄海原」の統治を任されたスサノオ神。個人的には「滄」の字に目が留まります。

こういったところで個人的な情感を挟むと、故梅原猛氏の悪い癖と同じようになってしまうのですが…

敬神活動と古代を紐解くことに自身の半生をほとんど費やすという、アホなことをやらかしている私の原動力となっているのが「古代ロマン」。ここは私的な情感を挟んでみたいところ。

「滄」はもちろん「青い」という意味。「滄海原」ということは「青々とした海原」ということ。

ところが私には「真っ暗闇の海原」としか頭に思い描けないのです。
これは子供の頃に読んだ本の挿絵が、そうなっていたということも大きく影響していると思います。その挿絵の作者もこの記述を同様に感じていたのでしょうか。

「滄」には「冷たい」「寒い」という意味もあります。どちらかというと「冷たくて…寒くて…真っ暗闇な海原」の統治を任されたとしか、頭に思い描けないのです。つまり「根の国」とほとんど変わらないイメージ。

明るく眩しく温かい「天」とは正反対の場所をスサノオ神に与えた…といったところ。もちろん神話の中の世界なのですが。

◎「伊佐知伎」を音読みせよと指示があります。「啼き伊佐知伎(いさちき)」で「泣きわめく」といった意味なのだろうと思います。

◎「狹蠅」の「狹」は「田植え」のことと思われます。したがって「田植えの時期に群がる蠅(ハエ)」といったところかと。


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以降の主人公はスサノオ神。

「ゆとり世代」以前の人なら
あらゆる場面で触れたことのある内容の神話となります。



神素盞鳴尊が鎮まる日御碕神社 神の宮とウミネコが飛び交う日本海



過去記事一覧
■本文 11.天地開闢 12.淤能碁呂嶋 13.美斗能麻具波比 14.蛭子・粟嶋 15.大八州國前編 16.後編前半 17.後編後半 18.国生みその他主要六嶋 19.神生みの開始 20.河と海の神生み 21.大地の神生み 22.伊邪那美命は病に 23.病の伊邪那美命が生んだ神 24.伊邪那美神が神避り… 25.迦具土命を斬って神々が生まれる 26.軻具土命を斬って…続き 27.軻具突智命の遺体からも神が… 28.黄泉国へ 29.変わり果てた伊邪那美命の姿 30.「逃走中!」 31.桃の名は… 32.永遠の別れ…  33.筑紫の日向の小門の阿波岐原へ 34.禊祓で成った神々 1 35.神々 2 36.神々 3 37.「三貴子」の誕生! 38.天照大御神に高天原を事依さす 39.月讀命に夜之食國を事依さす

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