(稗田阿禮を祀る賣太神社)



【古事記神話】序文 (~その7 稗田阿禮への勅語)



【読み下し文】
是に於ひて天皇詔して「朕は聞く 諸家の所に賷らす帝紀及び本辭は 既に正實と違ふる 多く虚僞を加ふるなり 今之時に當たりその失ふるを改めてずは 未だ幾年を經ずして其の旨滅びなむと欲す これ乃ち邦家の經緯 王化の鴻基なり 故に惟れ 帝紀を撰錄し 舊辭を討覈し 僞を削り實を定め 後葉に流へむと欲する」時に舎人有り 姓は稗田 名は阿禮 年は是れ廿八 人と爲り聰明にして 目に度らば口に誦み 耳に拂らば心に勒す 卽ち阿禮に勅して語り 帝皇の日繼ぎ及び先代の舊辭を誦み習わすことを令じる 然れども運移りて世異なりて 未だ其の事を行ひたまはざりき


【大意】
(天武)天皇は詔しました「朕は耳にする。諸家が所有する帝紀及び本辞は実際とは異なっており、虚偽が加わっている。今こそ改めないと、あと幾年で本当のことが分からなくなってしまう。これは我が国の経緯、王化(君主の徳化)の大きな基である。したがって帝紀を撰録し旧辞を討覈し(詳しく調べる)、偽りを削って真実を定めて後世に残したい」と。時に稗田阿禮という舎人がいた。人と為りは聰明。目にすれば口ずさみ、耳に入れば心にきざむ。天皇は阿禮に天皇の系譜や先代の旧辞を読み習わせることを勅語しました。ところが天皇は薨去してしまい、頓挫したままです。


【補足】
・いよいよ稗田阿禮(稗田阿礼)が登場!その阿禮に命じた天武天皇のことを、これまで延々長々と綴っていたわけです。いわば天武天皇の修飾部分であり、まったく中身の無い話を延々長々と…。
・今回は特に難解な箇所もほとんど無く、すらすらと…とまではいかないまでも、数時間程度で仕上げられました。