【古事記神話】本文 (~その20 河と海の神生み) 



「八百万の神々」などと言いますが、日本人が神として崇めた対象は極めて特異性のあるものと考えています。

自然に存在するもの、自然現象、人そのもの。

自然のものだけでなく、人そのものも同格に神として祀ること自体も特異なことと思いますが、

人の手により作り出されたものまで神として崇めるなどという、これはもう特異中の特異。

例えば「鏡」など類稀なものであるなら理解できようものが、日常生活品にまで及ぶとは…

もったいない精神などが生まれるのは、これが原因でしょうか?

日本人の精神の素晴らしさを感じます。

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【読み下し文】
此の速秋津日子速秋津比賣二神は河海に因り持ち別け生みき神の名は沫那藝神 [那藝の二字以て音 下此れに效ふ] 次に沫那美神 [那美の二字以て音 下此れに效ふ] 次に頬那藝神 次に頬那美神 次に天之水分神 [分の訓みは久麻里と云ふ 下此れに效ふ] 次に國之水分神 次に天之久比奢母智神 [久以下五字 以て音 下此れに效ふ] 次に國之久比奢母智神 [沫那藝神自り國之久比奢母智神に至り并せて八柱の神]


【大意】
速秋津日子と速秋津比賣の二神は、河と海に分けて神を生みました。沫那藝神(アワナギノカミ)、次に沫那美神 、次に頬那藝神(ツラナギノカミ)、次に頬那美神、次に天之水分神、次に國之水分神、次に天之久比奢母智神(クニノクヒザモチノカミ)、次に國之久比奢母智神 [沫那藝神から國之久比奢母智神まで八柱の神]


【補足】
海と川に分けて国を生んでいきます。自然のものと加工品は分け隔てなく祀るのに、海と川は分けるようです。
◎沫那藝神・沫那美神は、海の沫(あわ)を神格化した神。
◎頬那藝神・頬那美神は、川の水面を神格化した神。
◎天之水分神・國之水分神は、言うまでもなく川水の「水配り(みくまり)」を司る神。
◎天之久比奢母智神・國之久比奢母智神は、「汲瓢持(くみひさごもち)」のこととされ、灌漑を司る神。
なんと灌漑設備までを神にしてしまいました。前回記事でも「家宅六神」が登場しています。これらの異質な神々を並び立てることに、あまり違和感を感じない日本人の感性…。「沫」や「頬(面)」までも神にしてしまう日本人の感性…。私個人的には大好きですが。

山頂に頬那藝神を祀る都賀那岐神社が鎮まる「伊那佐山」