極真空手の立ち稽古には正拳顎打ちと呼ばれる技があります。

正拳顎打ちは、沖縄空手の流れを組む伝統的な空手には見られない、極真オリジナル技と言えます。

正拳顎打ちと伝統的な空手の技を比較すると大きな違いがあります。

 

正拳顎打ちは両腕を開いた形から突きます。

伝統的な正拳突きは引き手の形から突きます。

 

正拳顎打ちは突いた拳を素早く戻します。

伝統的な正拳突きは突いた拳は殆ど戻しません。

 

なぜこのような違いがあるのでしょうか?

 

1.両腕を開いたガードががら空きの形

正拳顎打ちは両腕を開いた形から行います。

ボクシング等の顔面パンチ有りの打撃格闘技の価値観で見るとガードががら空きに見えます。

一体なぜ両腕を開いたガードががら空きの形になるのでしょうか?

 

両腕を開いた状態は

「誘い」

と解釈する事ができます。

 

敢えて顔面を開けた状態を作り、相手の顔面パンチを誘います。

相手のパンチが来た瞬間、ヘッドスリップをしながら正拳顎打ちを放ちます。

 

このように正拳顎打ちを行うと、ボクシングで言うところの

「クロスカウンター」

となります。

 

この戦略は以前紹介した

 

「今の極真と昔の極真の違い:正中線の維持とズレ」

 

で解説したように、正中線をずらしながら行う動きでなければ成立しません。

 

実際、多くの正拳顎打ちは正中線をずらさずそのまま行っていますが、大山倍達総裁の正拳顎打ちは正中線をずらしながら行っています。

正中線をずらさずに正拳顎打ちを活用するのには無理があると思われます。

 

2.突いた拳を引く

突いた拳を引く事は格闘技では常識です。

むしろ突きっぱなしになっている事の方が異質と言えます。

 

ここでややこしいのは、

「突いた拳を引く」

事と

「引き手」

を混合してはいけないことです。

 

「突いた拳を引く」

とは文字通りの動きですが、空手で言うところの

「引き手」

とは突き手の逆側の手を引く形とします。

引き手についての詳しい解説は

 

引き手の意味:身体操作か?用法か?

 

をご覧ください。

さて、突いた手を引く解説の前に、

 

伝統的な空手の技が突きっぱなしになっている理由

 

について解説します。

 

例えば右正拳上段突きを放ちます。その際、

 

・ガードされた場合

転掌掛けにして掴み、次の技に繋げる

 

・払われた場合

裏突きに変化する

 

・横に回避された場合

裏拳や手刀に変化する

 

・後ろに回避された場合

右腕を残して左の突きを隠しながら突く

 

・カウンターを取られた場合

上段受けに変化する

 

このように様々な用法があります。

しかし、突いた拳を引いてしまったのでは、それら用法に繋がらなくなります。

よって、基本稽古では突いた拳を引かずに残して置き、様々な用法に変化できる状態にしていると考えられます。

 

しかし、正拳顎打ちでは、拳を素早く引きます。

その理由は、顎に拳を当てた際、素早く引いた方が相手の脳が揺れやすいからです。

突きっぱなしよりも、素早く引く動作を入れる事で、より相手の脳が複雑に揺れます。

また、距離が詰まった時に効果的です。

 

確認方法として、初めから拳を相手の顎に接触させます。

その状態から隙間を作らずに押し込んでも脳は揺れません。

しかし拳を相手の顎でバウンドさせるように引くと、大きな衝撃を与える事が出来ます。

顎で検証する事が心配であれば、胴体部で行ってください。

 

前羽の構え

正拳顎打ちを最も効果的に使う為の構えが

「前羽の構え」

です。

正拳顎打ちの形と同様、前羽の構えも顔面をがら空きにしています。

 

ちなみに正拳顎打ちの戦術を拳ではなく開手で行うと、太氣拳の動きと酷似します。

合理的な戦術を突き詰めると、他の武術の戦術と共通してくるのは自然な事だと思います。

 

流派に優劣無し!

沖縄空手の流れを組む伝統的な空手は武器術の比重が多いと感じます。

言い方を変えると、素手対素手の技術には特化していないとも言えます。

極真空手は、伝統重視の空手には不足していた

「素手対素手に特化した技術」

を加えたと考察します。

その旨を示す技の一つが

「正拳顎打ち」

ではないでしょうか?

 

伝統重視の空手の技は素手以外にも、棒やトンファーを持っても使えます。

しかし正拳顎打ちは、素手でしか使えません。

 

また正中線をずらす動きは、素手対素手では必須テクニックです。

しかし、対武器には効果的ではありません。

 

戦う局面を知り、その為に有効な技術を知る事で、精神論では無く、論理的な意味で

「流派に優劣無し!」

だという事がご理解いただけると思います。

 

【蘇る空手最強伝説】

1.空手の気合いと表情の効果:打たれ弱い人と打たれ強い人の違い

2.いびつで最強の腕〈剛腕〉:握力と突きの強さの関係

3.三戦立ちの用法:金的防御と蹴りの威力アップ

4.基本稽古を三戦立ちで行う理由:本当の全力とは?

5.今の極真と昔の極真の違い:正中線の維持とズレ

6.正拳中段突き:突きと言語

7.引き手の意味:身体操作か?用法か?

8.正拳上段突き:武術の突きと格闘技のパンチの違い

9.裏拳顔面打ち:スナップか?突きか?

10.裏拳左右打ち:真横に打つ?斜め後ろに打つ?

11.裏拳脾臓打ち:打撃と投げ

12.裏拳回し打ち:後頭部と背面

13.正拳顎打ち:前羽の構えとクロスカウンター

14.上段受け:ショルダーブロックとダッキング

15.外受け:柔道対策!対木村政彦?

16.内受け:ショルダーブロックとクロスアームガード

17.下段払い:直線運動と円運動

18.内受け下段払い:諸手突きを受けるのか?

19.手刀顔面打ち:素手と頭蓋骨

20.手刀鎖骨打ち下ろし:鎖骨が折れる条件

21.手刀鎖骨打ち込み:貫手と対首相撲

22.手刀内打ち:受けと目への攻撃

23.手刀脾臓打ち:実戦のサイドポジション

24.肘打ち:騎馬立ちで行う理由

25.肘上げ:対組技とエルボーブロック

26.肘下ろし打ち:騎馬立ちと馬歩(中国武術)の違い

 

↓ビジター参加をご希望の方はこちら↓

↓セミナー参加をご希望の方はこちら↓

 

LINE公式アカウント登録者募集中〈DVDの一部が無料視聴できます〉
https://lin.ee/vVzb6cz 

 

川嶋塾ホームページ(上級者向け)

https://www.kawashimayu.com/

 

川嶋空手教室(初級者向け)

https://karate.kawashimayu.com/

 

動画チャンネル(空手や武術やコアな情報を発信中)

https://www.youtube.com/channel/UC1SKpkLky1mYmwFACEJb1sA

 

著作・DVD一覧(新作順)