空手には
引き手
と呼ばれる動作、フォームがあります。
伝統の基本や型では、突きや受けの逆側の手が引き手である事が多々あります。
しかし、ボクシング等の打撃格闘技では、ガードを大切にします。
ガードをしなければ、相手の攻撃を容易に受けてしまうリスクがあるからです。
よって、フルコンタクト空手では、
基本稽古は引き手を取った突き
組手稽古ではガードをした突き
と、わざわざ2パターン行う場合も珍しくありません。
そもそも引き手とは何のために行うのでしょうか?
引き手の意味
私が高校時代に日本空手協会(松濤館流)の道場で学んだ引き手の意味は
相手を掴んで引きながら突く・打つ
でした。
この引き手の使い方は、松濤館流の開祖であり、日本に空手を広めた船越義珍先生の写真からも確認ができます。
船越先生から空手を学んだ大山倍達総裁の写真からも確認ができます。
また、沖縄空手の戦略として、
相手を据え物にして打つ
という言葉があります。
この意味は、動き回る相手に打撃を当てるのではなく、
相手が動き回れない状態
の時に打撃を放つ意味があると考えられます。
「相手が動き回れない状態」を作り出すための手段の一つが
相手を掴んで崩す・引く
です。
この時の形が「引き手」になると考えられます。
その他にも、これまで私が見聞き、検証してきた引き手の意味を紹介します。
1.武器術
棒で打つ時の形と引き手を取った時の形が共通します。
トンファーを使った動きも引き手を取った時の形と共通します。
この事から引き手には武器を手にした時の動きも含まれる事が考えられます。
2.対武器
凶器を持った相手の手首や袖を取った際、次の攻撃に移る時に、取った手を離すのは危険です。
相手の手首や袖を取ったのならば、その手を放さず、空いた手で攻撃をした方が安全です。
また、掴んだ手は自分の身体に密着させる事で、より安全を確保できます。
3.関節技
掴んだ手をひねりながら引き寄せる事で関節技に繋がります。
空いた手は突くだけでなく、腕を極める事もあります。
この時の形は外受けや手刀受けの形と重なります。
4.後方に肘打ち
後ろから掴まれた際、後方に肘打ちをします。
例・平安その三19挙動目、セイエンチン24挙動目
5. 横回避
相手の顔面攻撃に対してヘッドスリップのように横に回避する際、回避する方向の手を下げる事で回避速度がアップします。
ガードを降ろすと聞くと、格闘技の感覚では良くない事のように感じますが、ボクシングの試合でも、ヘッドスリップと併用してパンチを打つ際は、片側のガードは瞬間的に下がります。
基礎や身体操作
試合ではなく、武器の攻防を含めた実戦を想定すると引き手は合理的に使う事ができます。
しかし、現代では実戦を想定する事は殆どなく、戦いの場はルールがある試合がメインです。
そうすると、引き手を取った技を行う合理性は低下します。
それでも空手家の嗜みとして引き手を取った技を毎回行う場合、基礎や身体操作として位置付ける事があります。
・基礎
引き手の位置
突きの軌道
を明確に定め、その通りに正確に動く事で
巧緻性(ボディコントロール)を高める
事に繋がります。
スポーツに於ける巧緻性とは「体を思い通りに巧みに動かす」という意味です。
よって、巧緻性が低い状態でいくら練習を重ねても非合理です。
巧緻性が低い人には、空手の引き手や突きの軌道を正確に覚える事は、巧緻性を高める基礎練習として合理的です。
・身体操作
引き手が伴った突きを通じて肩甲骨の前後動作を学ぶ事ができます。
肩甲骨の使い方によって、大きな力を発揮できる感覚を掴むことで、他の技術にも応用する事ができます。
健康促進
引き手が伴った突きは、ボクシング的なパンチと比較して、
背面側の筋肉
が使われるので、筋バランスが良いと言えます。
また全身運動にもなる為、エクササイズやダイエットとしても効果的です。
引き手の使い方や意味を知る事で、稽古がより合理的、効果的になります。
是非、参考にしてください。
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