空手では、なぜ大きな声で気合いを出すのでしょうか?
諸説ありますが、ここでは気合いの効果について、大山倍達総裁の動きを研究して導き出した川嶋独自の見解を解説します。
・顔面受け身
先ず前提として、
「素手の実戦(街で突発的に起こる喧嘩のようなもの)」
を想定します。
そのような戦いでは当然、顔に打撃が飛んでくる事が想定されます。
顔への打撃の対処の理想は「躱す」「払う」「ガードする」等です。
しかし相手が強い場合、どうしても当てられてしまう事があります。
そんな時に、ただ無防備に顔に打撃を受けてしまっては、倒されたり、大きなダメージを受けてしまいます。
そこで、ダメージを軽減する為の表情の作り方を習得する必要があります。
言うならば、
顔面受け身
です。
顔面受け身の考え方は、柔道の受け身と同じです。
柔道家は、投げられる為、受け身を取る為に試合に臨みません。
あくまで勝つ為に、相手を投げる為に動き、相手の投げは防ごうとします。
それでも勝負である以上、
「一生投げられない」
なんて事はありません。
どんなに強い柔道家でも、いつかは投げられる事があります。
よって、受け身ができない柔道家は存在しません。
同じ理屈で、実戦のみならず、ボクシングやキックボクシング等の顔に打撃を受けるリスクがある格闘技では、顔に打撃を受けない事を理想としつつも、
「一生顔に打撃を受けない」
なんて事はありません。
格闘技では顔に打撃を受けると、例えダウンせずとも、ポイントを取られたり、判定で不利になってしまいます。
しかし勝敗以前に、柔道の受け身と同様、顔に打撃を受けた時には、大怪我に至るリスクを減らす技術が必要な筈です。
しかし現状の打撃格闘技では、強度の高いスパーリングや試合経験を積む事で、はじめて「顔面受け身」に近い技術を習得します。
しかしそれでは多くの人が習得前に怪我をしたり、脳にダメージを負ってしまいます。
また、強度の高いスパーリングや試合経験が不足している人はいつまでも習得できません。
そこで柔道の受け身のように、誰もが安全に顔面受け身を習得できるよう、
「顔面受け身習得手順」
を紹介します。
・目への攻撃
実戦では、相手の指が目に入るリスクがあります。
目突きのように、明確に目を突こうとする攻撃だけでなく、相手が防御反応をした時等に、偶発的にせよ意図的にせよ、指が目に入ってしまう事があります。
目に指が入りそうになった時は、目をつぶる事で目を守れますが、完全につぶってしまっては、相手を視認する事ができなくなり、他の攻撃を受けるリスクが高まります。
そこで、視界を確保しつつも目を守る為、
「半眼(薄目)」
にします。
半眼でも指が当たれば危険ですが、目を見開いた状態で当たるよりは遥かにマシです。
・歯への攻撃
顔面パンチ有りの打撃格闘技では、スパーリングや試合の際、
「マウスピースの装着」
が必須です。
しかし実戦ではマウスピースを装着する時間はありません。
また、昭和初期以前の昔の組手では、マウスピースは無かったと思われます。
よって、マウスピースに頼らずに歯、特に前歯を守る為には、
「上唇で前歯を隠す」
ようにします。
上唇で前歯をカバーする事で、前歯が折れてしまうリスクを軽減する事ができます。
・顎への攻撃
顎に強い打撃を受けると、脳を揺らされダウンしてしまいます。
顎や首に力が抜けていると、脳がより大きく揺れてしまいます。
よって、顎や首に力を入れる事で、脳の揺れを減らす事ができます。
歯を食いしばった状態です。
しかし、歯を食いしばった状態は、歯と頭蓋骨が一体化してしまい、脳に衝撃が通りやすくなってしまいます。
そこで、少しでも脳の揺れを軽減させるには、
「上歯と下歯の間を僅かに開ける」
ようにします。
そうする事で、上顎と下顎の間に僅かなブレが作られ、脳の揺れを軽減させる事ができます。
・衝撃
いくら顔に力をいれても、まともに打撃が直撃したら大きな衝撃を受けてしまいます。
回避や防御が間に合わない時、「目」「歯」「顎」を守る表情を作りながらも、少しでも衝撃を緩和させる為には、
「顔の角度を斜め下に傾ける」
ようにします。
板や瓦の試し割りでは、打撃が当たった時の角度が対象に対して垂直でなければ割れづらくなります。
顔への打撃に対して顔を斜め下に傾ける事は、試割りのコツの逆の視点です。
打撃衝突時に僅かでも顔の角度がズレる事で、伝わる衝撃は軽減します。
・痛み
顔に対する打撃は、例え致命傷を避けれたとしても痛みが伴います。
顔の痛みは、脳に近い分、混乱や恐怖等、より大きな精神的ダメージを誘発させます。
痛みを少しでも緩和させ、そして混乱や恐怖を払拭するには、
「気合い(大きな声)」
を出します。
人間誰しも、大きな痛みが生じた際は、声を出します。
声を出す事でほんの少しでも痛みが紛れるからです。
また、顔面受け身の際は、痛みが生じてから発声するのでなく、
「痛みが生じる可能性」
を想定して発声します。
いわば、
「痛みへの覚悟」
を声に乗せて発生します。
そのように発声する事で、打撃を顔に受けた時の痛みによる混乱や恐怖等を軽減する事ができます。
・大山総裁の表情と気合い
これまで述べた、
・半眼(薄目)
・上唇で前歯を隠す
・上歯と下歯の間を僅かに開ける
・顔の角度を斜め下に傾ける
・痛みへの覚悟
を守った表情を作った上で気合いを出します。
すると、どうでしょう?
「顔面受け身」を行いながら、技を出すと、必然的に大山総裁の表情、声質に似てくるのです。
逆算すると、
「大山総裁はルールも防具もない戦いを繰り返してきた」
と考える事ができます。
この考え方が正しいか否かを。大山総裁亡き今、確認する術はありませんが、少なくとも「顔面受け身」の考え方が、現代の顔面パンチ有りの格闘技に活きる事は確かです。
・格闘技の顔面受け身
顔面パンチ有りの格闘技でのシャドーやミットの際、
「シュ!シュ!」
と口をすぼませて息を吐く事がありますが、その時の口の形は、
「もっとも打たれ弱い口の形」
になるので、お勧めしません。
「シィ!シィ!」
「ハッィ!ハッィ!」
と「イーと発音した時の口の形」を意識すると、
「もっとも打たれ強い口の形」
つまり顔面受け身の形になります。
実際に強い選手のシャドーやミットは顔面受け身の形に近い表情や声質になっている事が大半です。
格闘家の皆様は、顔面受け身の考え方を是非参考にして欲しいと思います。
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