経済情報雑誌『ZAITEN』には、経済評論家の佐高信さんが毎回いろいろな人と対談する『佐高信の「賛否両論」』が連載されているが、さる7月3日に発売された8月号のそれには、元農林水産大臣の山田正彦さんが登場していた。
題して、
「日本の農業を外資に売り渡す自民政治」
山田正彦さんは、種子法廃止違憲訴訟の弁護団の一人として、「種子法廃止は違憲である」と訴えていると、私は以前にもこのブログで書いたことがある。
↑この記事の中で、私は国は種子法を廃止し、「どんな状況でも国民を飢えさせないようにする責任」を放棄、その役目を民間企業に丸投げした、と書いた。
しかし、その実例を書くと長くなると思って書かなかったのだけれど、改めてここにその実例を紹介したいと思う。
種子法廃止に伴い、農水省の役人は三井化学アグロが育成・販売している「みつひかり」という米の品種を、「今後はこのような民間の種子を使うように」と言って全国の都道府県で推奨してまわった。
だがこの「みつひかり」は、日本モンサントの「とねのめぐみ」や豊田通商の「しきゆたか」と同じくF1品種で一代限りなので、これを使うとなると、毎年買わなければならない。
さらにこれら民間企業の種子は品質が不安定な上に、価格がかなり高く、例えば「みつひかり」は「コシヒカリ」の10倍もの価格なのに、味もかなり落ちるのだとか。
結局、「みつひかり」は、交配不良による欠陥品であることが分かり、販売元の三井化学アグロが令和5年度産用の種子の供給を中止したため、アテにしていた多くの農家が路頭に迷うこととなった。
特に岐阜の農家の被害が大きかったとか。何とも、酷い話だ。
このことについて、山田正彦さんも自身のブログの7月12日付の記事で取り上げている。
三井化学アグロには、当然、被害を与えた農家に対して損害賠償をする義務があるが、いち早く消費者庁がコメの種苗は製造物責任法の適用はないと表明したのだとか。
こういったことは、ほとんど報道されていない。
山田さんら種子法廃止違憲確認訴訟弁護団は、この「みつひかり」問題を控訴審で取り上げることにしたという。
ここで、種子法が廃止された経緯を少し述べる。
山田さんが裁判で聞いた話では、環太平洋パートナーシップ(TPP)による規制改革推進会議に従って種子法を廃止したということだった。
ところでそのTPP協定書を作ったのは、実は多国籍企業の代理人弁護士たちである。
山田さんは、ある消費者団体の人から「多国籍企業のロビイストが日本に100人ぐらいは来ていて、日夜その工作に専念しているはずですよ」と聞かされた。
このTPPには、自民党も最初は反対していた。あの安倍晋三もそうだったのだが、途中から「交渉する」と言い出した。
このことについては、ものすごいお金が動いたんじゃないかと言われている。
それこそ金持ちの大企業のモンサントとかファイザーとかダヴ・デュポンとかのロビイストが、日本で政界や財界・官僚に働きかけて、最後はほとんど自民党を引っくり返してしまったのである。
ちなみに、モンサントはベトナム戦争の際に使われた枯れ葉剤をつくっていた会社であり、ファイザーはこの度のウイルス禍で大儲けした会社である。
『ZAITEN』8月号の記事から、山田さんの発言を次に引く。
(引用)
安倍晋太郎とか岸信介の代から、安倍さんはアメリカと “つうつう” ですよね。だから、アメリカの言いなりになってきた安倍さんの下でTPP協定は最初からそういうシナリオでした。それこそ、種子法廃止は規制改革会議の決定だけで。普通なら農政審議会にかけなきゃいけないのに、それもかけずに通した。
(引用、終わり)
JA(農協)は、前述の多国籍企業の動きにはまったく無関心で、モンサントの作った種や農薬を日本の日産化学などの商社が委託販売している。
モンサントという企業は今は存在しないと思われているが、実際はバイエルと合併して潜航しただけで、今も目に見えない形で蠢いていると思った方がいい。
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さて、ここで少し希望が見える明るい話題を。
モンサントが開発した農薬(ラウンドアップ)や、化学肥料などを平気で販売してきたJAではあるが、最近は変わりつつあるという。
これも山田さんが自身のブログで紹介してくれたことなのだけれども、7月1日付の『日本農業新聞』によれば、学校給食に地元産の有機栽培米を導入する動きが全国の自治体に広がっており、JAが全面的に協力しているケースもあるのだとか。
さらに同紙は4日付の紙面で、農薬や化学肥料に頼らず生産された有機食品をスーパーが扱い始めたことを1面トップで伝えている。
『日本農業新聞』
有機米普及は給食から 転換掲げる自治体相次ぐ 面積拡大へJAと連携(2023年7月1日)
https://www.agrinews.co.jp/news/index/166912
スーパーで有機食品が拡大 健康志向に応えPBや専門業態(2023年7月4日)
https://www.agrinews.co.jp/news/index/167359
【参考画像・学校給食】
(撮影者:エルボンズさん https://www.photo-ac.com/profile/23271543)
私は、JAの機関紙である『農業協同組合新聞』にも、これに関連する記事が出ていないか、検索してみた。
すると、次の記事が見つかった。
『農業協同組合新聞』
オーガニック給食を全国展開へ 超党派の議員連盟が発足(2023年6月15日)
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2023/06/230615-67361.php
↑上の記事の議員連盟には、それこそ自民党や立憲民主党、公明、維新、国民民主、共産、れいわ新選組などの議員が参加している。
実はこのことについても、山田さんは6月19日付の自身のブログで、とっくに紹介してくれていた。