こちらは先日完結いたしました連載のおまけ5・最終話です。
お楽しみいただけたら嬉しいです。
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おふたりさま物語・おまけ5
■ 敦賀さんと私 ◇3 ■
土曜の夜は自宅に戻らず、敦賀さんのお家で一晩を過ごした。
翌日曜日はさすがに二人で朝寝坊。
裸のまま目覚めた時は本当に恥ずかしかったけれど、私と目が合った敦賀さんが照れくさそうに微笑んで、私を抱き寄せ額にキスをしてくれたときには気恥ずかしさより嬉しい気持ちが簡単に勝った。
軽く朝食を摂ってから二人で一緒に外出をして、指輪を見たり、ランチをしたり。
敦賀さんが所有しているマンションもいくつか見に行った。
もちろん、結婚してから二人で暮らす家を見つけるためだったのだけど、私は本当にこの人と結婚するのだな、という実感が強く湧き上がった。
「 ……最上さん 」
「 はい? 」
「 明日、君を迎えに行ってもいい? 」
「 明日ですか?私、仕事がありますけど… 」
「 分かってるよ。もちろん俺も仕事がある。だから、終わってから君を迎えに行ってもいい?一緒にご飯を食べよ? 」
「 ……はい! 」
以前と同じ、キャンパス内にある客員駐車場で待ち合わせた。当日、私は朝っぱらから待ち遠しくて仕方が無くて。
たぶん、どこかソワソワしていたのは事実に違いなかったと思う。
敦賀さんと約束をしていた時間が来て、客員駐車場へ向かっている途中で私は大勢の女生徒に囲まれてしまった。
どうやら昨日の日曜、敦賀さんと一緒だった所を数人の女生徒に目撃されていたようだった。
「 最上先生、お急ぎですか~? 」
「 うん、そうなの。ちょっと人と約束をしていて… 」
「 ふっふ。それってもしかしなくても彼氏でしょ~~~~~!!あったりぃぃ 」
「 間違いないよね~。だって先生、朝からずっとウキウキしている感じだし、それに今日は妙に可愛いもん! 」
「「「「 ねー!! 」」」」
「 え? 」
「 隠してもダメよん、先生。あたし知ってるのよぉ。昨日すっごいカッコいい男の人と一緒に歩いていたでしょー。ねっ、あれ絶対に先生だったよね 」
「 そうなの、目撃しちゃったのよね~(笑)仲良さそうに手を繋いで歩いちゃって、こっちの方が赤面しちゃったじゃん! 」
「 え?やだ、恥ずかし……。見られていたの? 」
「 あははは。気づかなかったの?先生ってば天然~。すごく目立っていたのに 」
「 ね!美男美女の登場に周りの人たち釘付けだったよね 」
「 先生ってば結婚するの?仕事はどうするの?私たちの授業はどうするのー? 」
「 どうもしないわよ。今まで通り授業もするし… 」
「 あっ、彼氏ネタ及び結婚に関しては否定しないんだ 」
「 そりゃ…… 」
「 ねぇ、先生の彼氏ってどんな人なの?私も見たかったー! 」
「 すごいよ!カッコいいよ!マジ卍!!背が高くて肩幅広くて、先生のこと見つめて微笑んじゃってさー!先生、あの彼氏はどこで発掘してきたんですかぁ?! 」
「 発掘って…鉱石じゃないんだから… 」
困ったな、って思った。
敦賀さんが待っている駐車場に向かっている途中だっただけに歩みを止めざるを得なくって。
そう思っている間になんと本人が現れてしまって、約束の時間を過ぎていたから、心配して来てくれたに違いないと思った。
「 最上さん 」
「 え?あぁぁぁっ、敦賀さん!ごめんなさい、いまちょっと… 」
「「「「 ぎゃー!!出たぁ、先生の彼氏――――――― っ!! 」」」」
「 ……びっくり。まさか女生徒に囲まれていたとは、予想外だった 」
「 すみません、お待たせしてしまって… 」
生徒たちの中心で私が肩をすくめて謝罪をすると、敦賀さんは別にそれはいいけど…と言ってから生徒たちを見回した。
「 それは別にいいんだけど、運転席で待っていたらワイワイ声が聞こえて来たから、もしかして…と思って来てみたんだけど 」
「 ほんとにすみません 」
「 正直、もし男子学生に囲まれているなら蹴散らしてやろうと思って来たんだけど…。どうしようかな。女生徒に人気があるのを見てもジェラシーを感じるって、もしかしたら相当独占欲強いのかもしれない、俺… 」
そう言って真顔で悩み始めた敦賀さんを見て、女の子たちが全員、黄色い声を上げた。
そのボリュームがとにかく物凄くって、鼓膜が破けるかと思った。
「「「「「 い―――― や――――― っ!!ジェラシーだってぇぇぇ!感じちゃったんですかー?私たちにぃ?? 」」」」」
「 うん、感じてしまった。今も感じてる 」
「 ぎゃふーん!! 」
「 なにそれ、身悶えるぅぅ… 」
「 ところで、あなたは本当に最上先生の彼氏さんなんですかー? 」
「 彼氏っていうか、婚約者 」
「「「 婚約者ー!!でたぁ、婚約者ー!!ドラマみたい、素敵な響きぃぃ 」」」
「 ねぇ、どうでもいいけど、あなたたち少し声が大きすぎ。もう少しボリュームを下げて喋って 」
「 先生、それ無理!こんなハイトールなイケメンを前にして静かにしろって方が無理ですよー 」
「 はい、はい!先生の彼氏さんにしつもーん!最上先生はこの大学の准教授なんですよ。ご存知ですか? 」
「 もちろん、知ってるよ 」
「 じゃあ、ひょっとしたら先生の彼氏さんは、それを知って逆玉の輿を狙ったんですか?その顔と体で先生を落としたとか? 」
「 こらー!!なに失礼な事を言っているの!! 」
言われた敦賀さんは特に気にしていない様子で小さく笑いを浮かべたけれど、私はたとえ冗談だとしても聞き流すことが出来なくて眉間に深い皺を刻んだ。
「 冗談だとしても言っていい事と悪いことがあるでしょ!! 」
「 まぁ、まぁ、怒らないであげて、最上さん 」
「 …っ…だって、敦賀さん。いくらなんでもそんな… 」
「 いいよ、いいよ。俺が彼女たちにジェラシーを感じたように、この子たちも俺にジェラシーを感じているだけなんだよ。ほら、君が凄くいい先生だから 」
「 だからって…っ…!! 」
「 俺は全く気にしていないから君も気にしちゃダメだよ。むしろ俺は誇りに思うよ。こんなに生徒に人気がある君を奥さんに出来るなんて鼻が高い 」
「 そんな…。それは私のセリフです。私の方こそ、嬉しいんです。敦賀さんとそうなれるなんて…… 」
「 本当に?そう言ってもらえると俺はもっと自信をもって胸を張って歩ける 」
「 敦賀さん…… 」
「 さ、行こう、最上さん。生徒さんたちとはここでお別れして? 」
「 はっ!やだ、私ったら…。あ、あなたたち、気を付けて帰ってね。で・で・出来ればいま聞いたことは忘れてしまって!! 」
「 ごめんね、彼女を連れて行くね 」
敦賀さんに肩を抱かれて足早に遠ざかりながら、教員としてあるまじき姿を見せてしまった…と、私は顔を真っ赤にしながら反省をした。
生徒たちがいることをほんの一瞬でも忘れ、敦賀さんとした会話内容を生徒たちがどう受け止めたのか。
それが分からないだけに不安になってしまった。
不潔って思われていたらどうしよう。
私たちを忘れるなんて信じられないって思われていたらどうしよう。
授業に出るのが嫌になっていたらどうしよう。
そればっかりを繰り返し考えていた。
「 ……忘れろだって 」
「 どうせなら試験前に聞きたいわ、そのセリフ 」
「 ね、最上先生、30歳で准教授なのにあのキュートさって、ある意味犯罪だよね? 」
「 ぷっ!鉱石のことを語る時も我を忘れちゃっていることがあるけど、今日はそれ以上だったね 」
「 なぁんか、最上先生… 」
「 うん。結婚したらすぐ産休取りそう 」
「 あたし、単位取れるうちに取っておこう~っと 」
「 私も 」
「 あたしもそうしよ…… 」
「 友達にも回しておくか 」
「 あーあ、いいなぁ…。私も10年後には最上先生みたいなオンナになっていたいな~ 」
私の心配をよそに
なぜかこの出来事を境に、生徒たちの出席率が異様なほど高まった。
E N D
このお話はこれをもって完結とさせていただきます。
お付き合いくださってありがとうございました。
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※ラストのラストのおまけお届け⇒おふたりさま物語・その後のおまけ
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