おふたりさま物語 ◇おまけ4 | 有限実践組-skipbeat-

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 こちらは先日完結いたしました連載のおまけ4です。

 お楽しみいただけたら嬉しいです。


 本編はこちら⇒おふたりさま物語<110111213141516>

 おまけ⇒<13>


おふたりさま物語・おまけ4

■ 敦賀さんと私 ◇2 ■





 悩まなかった訳じゃない。躊躇わなかったはずもない。


 でも、私たちは夫婦になるのだ。

 だからこれは当然のこと。


 言い聞かせたとか、覚悟を決めたとか、そういうのとは少し違う緊張感をもって、私は敦賀さんのお家にお邪魔した。



「 最上さん。お土産が入った紙袋は玄関先に置いちゃっていいから 」


「 はい 」


「 うちね、1DKだからスリッパとかないんだ。だからそのままあがって? 」


「 はい、お邪魔します 」


「 アレクサ、電気を点けて 」


「 え? 」


 敦賀さんの号令で室内がパッと明るくなる。続いておかえりなさいませ、と聞こえて私の緊張感が一気に解けた。



「 すごい。AIスピーカーがあるんですか? 」


「 そう。自然科学研究者なんてしているくせに…って思うかもだけど、ね 」


「 そんなこと…。第一、仕事と私生活は別物じゃないですか。わー、すごい。テレビでしか見たことが無かったから新鮮な気分です。敦賀さん、これがそうですか? 」


「 うん、そう。話し掛けてもいいよ 」


「 ふふ、アレクサ、初めまして、こんばんは。最上キョーコです 」


「 最上キョーコサン、ハジメマシテ、コンバンハ。オ噂ハカネガネ… 」


「 え? 」


「 あっ!ところで、最上さん!! 」


「 はい? 」


「 良いカツオがあるんだけどタタキ食べる?ソラマメもあるけど、食べる?あと、とっておきの焼酎もあったりするんだけど、飲む? 」


「 え?え?え?…いえ、いいですよ。お腹空いていないですし… 」


「 そっか、そうだよな。えっと、じゃあ…… 」



 どうしようかな…と呟いてから敦賀さんは自分の口元を右手で隠した。所在なさげなその仕草を見て、もしかしたら敦賀さんも緊張しているのかなと思った。



「 敦賀さんは、焼酎がお好きなんですか? 」


「 ん、ビールよりは美味しいかなって 」


「 私も、ビールよりは焼酎とかワインとかの方が飲みやすいです。私、炭酸系が苦手なんですよね。でもいま市場に出回っている缶のお酒ってだいたい炭酸が入っているじゃないですか。だからあんまり楽しめなくて… 」


「 …っ…そうなんだ?炭酸、苦手なんだ? 」


「 はい、そうなんです。それで、せっかくですし、軽くシャワーとか浴びたあとに頂けたら…と思うんですけど。その、とっておきの焼酎 」


「 うん!!いいよ、そうだよな!さっぱりした方がいいよな。あ、じゃあタオルと着替えが必要か。着替え、着替え……は………俺のパジャマでもいい?う…上だけ、とか…… 」


「 上だけ? 」


「 あ、やっぱり嫌だよな。えっと、どうしよう…… 」


「 それって、私が上を、敦賀さんが下を…ってことですか? 」


「 ………そう。実はそういうの、ずっとやってみたいと思ってて…ごめん 」



 ごめん、と気恥ずかし気に顔を反らした敦賀さんが妙に可愛く見えてしまった。同時に敦賀さんが持つ緊張感が見えた気がした。


 不思議なことにたったそれだけで自分の中に余裕が生まれて、それが敦賀さんのしたいことなら叶えてあげてもいいかも…と思った。



「 敦賀さん。じゃあ、貸してください、パジャマの上。敦賀さん、体が大きいから、たぶん太ももぐらいまでは隠れますよね? 」


「 え、どうだろう…。なんだか急に短めのやつを渡したい気分になっちゃったけど 」


「 …っ!! 」


「 あ、冗談だよ、ごめん!!あの、遠慮せずに入って来て。何なら俺が背中を流してもいいよ? 」


「 とんでもない!そんなのは私が無理です! 」


「 ふっ……そう?じゃ、お一人でどうぞ 」


「 ありがとうございます 」



 お風呂を借りて、シャワーを浴びて、髪を乾かして…の時間は、恐らく15分ほどだったと思う。


 そのあとすぐ敦賀さんもシャワーを浴びて、ラブラブカップルみたいにひとつのパジャマを上下で分け合い、絨毯の上で乾杯をした。



「 う……。やっぱりこの格好はちょっと恥ずかしいです。トラックに轢かれて異世界に転生したいぐらい恥ずかしい 」


「 ダメだよ!転生しないで。俺は嬉しいよ。思わず笑い出したくなるぐらい嬉しい。……抱きしめたくなるぐらい、嬉しい 」



 そう言って私を見つめた敦賀さんは本当に嬉しそうに眼を細めて、焼酎が入ったグラスを少し遠い場所に置いた。

 近づいてきた敦賀さんの両手がふわりと私に伸びてきて、そのままぎゅっと抱きしめられた。



 幸せな緊張感が高まる。


 鼻血を噴いて卒倒しそうなほど激しいビートを鼓動が懸命に刻んでいる。



 敦賀さんの右手が私の頬に優しく触れ、更に近づいてきた彼と初めてキスを交わした。




「 ………いま、俺の心臓の音、聞こえる? 」


「 え?」


「 いま凄く早くなっているよ。もしかしたらこのまま倒れるかもってぐらい…… 」


「 …っ…ぷっ!私も、実はそう思っていた所です 」


「 最上さんも?ほんとに? 」


「 はい 」


「 心臓の音、聞いていい? 」


「 え?うきゃっ…!! 」


「 ……ほんとだ、早い 」



 ふと苦笑が浮かんだ。

 自分のことに精一杯で全然気づいていなかった。


 左耳を私の胸の中央に押し付けている敦賀さんの右耳が真っ赤に染まっているのが見えた。



「 よし。じゃあここらへんでお互いに緊張をほぐそう。最上さん、これ、見て? 」


「 あ、これ、指輪のパンフレットですか? 」


「 そう、結婚指輪の。どんなのが好きか分からないから、とにかく集めてみたんだ 」


「 嬉しいです。ありがとうございます 」


「 そう言えば最上さんって、鉱石鉱物が専攻だって言ってたっけ。何か特別思い入れのある石とかあるの? 」


「 ありますよ。菫青石っていう石をご存知ですか? 」


「 いや、知らないなぁ。それってどんな石? 」


「 菫青石というのは鉱物名で、一般的にはアイオライト、またはウォーターサファイアと呼ばれている石です。

 菫+青の和名通りにブルーの結晶が特徴の石なんですけど、透かして見ながら90度ほど角度を変えると黄緑色に見える石なんですよ 」


「 ……へぇ 」


「 子供の頃はそれが凄く不思議で、魔法の石だってずっと思っていました。見る角度によって色が変わる石の事を多色性と言うんですけど、菫青石がその代表的存在だと知ったのはもっと大きくなってからです。

 ちなみに、その石を含む変成岩のホルンフェルスは効率よく赤外線を放出するという特徴があって、日本では石焼き芋の石として重宝されています 」


「 石焼き芋?それは意外な使い方 」


「 それとね、もう一つ、その石には特徴があるんですよ 」


「 なに? 」


「 実は京都で採れるんです。知っていました? 」


「 うそっ!?知らなかった。へー、そうなんだ? 」


「 ……くすっ。嘘です 」


「 え? 」


「 本当なら地元の敦賀さんがそれを知らないハズがないじゃないですか。一度でも京都土産としてお土産物屋さんに石が並んでいるのを見たことがありますか? 」


「 ……無いけど。…っていうか、いま俺を騙した? 」


「 騙したなんて人聞き悪い。違いますよ。ちょっとからかってみただけです♡ 」


「 つまり騙したってことだろ。嘘をつく子はお仕置き!! 」


「 きゃあぁぁぁあはは。違います、嘘じゃなくて、からかっただけですぅぅぅ 」


「 誤魔化そうとしたって無駄だ。さっき君、自分で言っただろ。嘘ですって 」


「 あー、やだ。確かに言っていたかもぉぉぉ 」



 敦賀さんから逃げようと腰を捻り、仰向け姿勢で両手を床に突っ張った。


 もちろん敦賀さんが圧し掛かってくればその体勢が維持できるはずもなく、あっけなく手を滑らせてしまった私は床に背中を打ち付けた。



「 …っ…最上さん、大丈夫!!?? 」


「 あはは。はい、平気です。ちょっと痛かったですけど 」


「 だよね、凄い音がしたから。ごめんね、俺……。だめだ、床は危ない。移動しよう 」


「 え、あ…… 」


 それからはあっという間だった。


 敦賀さんは軽々と私を持ち上げてしまって、そのまま私をベッドに運んだ。



 敦賀さんのお家はかなり広めの1DKで、ベッドの手前にパーテーションが置いてある。

 それで光が遮られてしまうせいなのか、それとも逆光のせいなのか。


 キングサイズのベッドに横たわった私からは敦賀さんの表情が見えなくなってしまった。



「 ……つる…… 」


「 アレクサ、光度を絞って 」


「 承知イタシマシタ 」


「 …っっ!! 」



 敦賀さんの顔が一段と見えにくくなってしまった。だけどそれは束の間のことだった。

 なぜかというと、私を見下ろした敦賀さんがすぐ私の目の前に降りて来てくれたから。



「 ……最上さん 」


「 はい 」


「 まだ籍を入れてないのにこんなこと言うのってちょっと変かもしれないけど、俺、君と離婚とかするつもりないから。一生寄り添って生きていきたいって、そう思えた女性が君だったんだ。だから…… 」



 途端に目頭が熱くなった。心臓がキュンと疼く。


 不意に社さんの言葉がリフレインして、あのとき諦めなくて本当に良かった、と思った。





 ――――――― 結婚だけが幸せではないけれど、結婚することでしか得られない幸せもあるから





 手も足も肩も唇も全てが震えた。


 本当に

 あのとき諦めなくて本当に良かった、私……。



「 私も…です。私、敦賀キョーコって名前になったら、死ぬまでその名前を使い続けますから 」



 ぎゅう…と抱きしめられて、本当に幸せだと思った。



 耳元で小さく聞こえた、ありがと…の言葉を抱いて

 なされるがまま、私は敦賀さんに身体を委ねた。






  ⇒おまけ5 に続く


カツオのタタキの下りは季節がずれておりますけどお気になさいませんように(笑)

それから菫青石(きんせいせき)というのは、コーンの石のことでございますよ。


ちなみにアレクサを登場させたのは、このお話が書きたかったから↓



■ アレクサと俺 ■




 自分の両親に紹介するため、最上さんと一緒に京都へ行くことになった日の前夜。


「 実家には泊まらない。何が何でも絶対こっちに戻ってくる。それで、最上さんを誘うんだ。俺の家に泊まりませんかって…… 」


 呪文のように繰り返していたのがいけなかったのだろうか。

 妙に緊張が高まって眠れる気配が全くない。


 ベッドの上であっちにゴロゴロ、こっちにゴロゴロするも功を成すことは無かった。



「 ……アレクサ。明日の朝、ちゃんと起こしてくれ 」


『 タイマー、セットされてイマス 』


「 だよな。明日の京都の天気、教えて? 」


『 明日ハ朝カラ快晴。日差シガアルトコロデハ少シ暑イカモシレマセン 』


「 そっか。指輪のパンフレット、たくさん用意しちゃったけど、最上さん、喜んでくれると思う? 」


『 努力ガ実ヲ結ブトイイデスネ 』


「 ……アレクサ。緊張して眠れそうにないんだ。どうしたらいいと思う? 」


『 眠レナイノハ辛イデスネ。デハ、眠レル曲ヲ掛ケテト仰ッテクダサイ 』


「 アレクサ。眠れる曲を掛けて 」


『 スミマセン。眠レル曲ハ、アリマセン 』 ※実話(笑)


「 無いのかよ!! 」


 だいぶ時間が経ってから、この時アレクサが言っていたのは、俺が眠れる曲のタイトルを名指せという意味だったのかも…と気づいた。



 おまけのおまけEND



⇒おふたりさま物語おまけ4◇敦賀さんと私2・拍手

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