おふたりさま物語 ◇おまけ3 | 有限実践組-skipbeat-

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 こちらは先日完結いたしました連載のおまけ3です。

 お楽しみいただけたら嬉しいです。


 本編はこちら⇒おふたりさま物語<110111213141516>

 おまけ⇒<12>


おふたりさま物語・おまけ3

■ 敦賀さんと私 ◇1 ■





 敦賀さんが私の両親に挨拶をしてくれた翌週の土曜日。


 敦賀さんのご両親と半日を過ごし、京都駅発20時8分、のぞみ254号の指定席になんとか辿り着いた私たちは、座席に腰を落ち着けたと同時に顔を見合わせ、揃って口元を緩めた。



「 良かった、乗れた。危うく帰れなくなる所だった… 」


「 あははは。こんなに必死になったの、久しぶりでした 」


「 全く!もういいって言ってるのに、あれもこれもって…。おかげでこんなに荷物が増えちゃったじゃないか 」


「 …引き止めたくて仕方が無かったんだと思いますよ。だって敦賀さん、3年間ずっと帰らなかったのでしょう?私びっくりしちゃいました。まさか結婚するよ報告を電話で済ませていただなんて… 」



 両手いっぱいの京都土産は敦賀さんのご両親が駅で買って持たせてくれたものばかり。

 荷物を網棚に乗せてくれた敦賀さんは、私の問いかけに否と答えた。



「 いや、正確には就職してからずっと京都に戻ってなかったよ。両親と会ったのが3年ぶりってこと。ほら、LME結婚相談所に無理やり連れて行かれたのが3年前だから 」


「 あ…… 」



 私たちは今朝、東京駅8時10分発のぞみ15号に乗車し、京都へ向かった。

 理由はもちろん、敦賀さんのご両親にご挨拶をするためだ。



 新幹線が京都駅に到着したのは10時22分で、私たちの到着を今か今かと待ってくださっていた敦賀さんのご両親と対面を果たした私は、改札口でかなり驚いてしまった。


 なぜかと言うと、おふたりとも外国人だったから。



「 久しぶり、父さん、母さん 」


「 3年ぶりに顔を見たわ 」


「 母さん、彼女が最上キョーコさん。最上さん、二人が俺の両親 」


「 は…初めまして!最上キョーコです。どうぞよろしくお願いします! 」


「 こちらこそ、これからどうぞよろしくお願いします。嬉しいわ。この子ったらずっと独り身だったから 」


「 ああ、本当に。わたしたちの息子をよろしくお願いします 」


「 こちらこそです。よろしくお願いします 」



 駅から移動し、お昼ご飯前に観光しようと誘われて京都市内に出向いた。



 その時に聞いた話しによると、敦賀さんのお父さんは日本人とアメリカ人のハーフで、お父さんは京都生まれだという。

 しかしその後、両親の都合でアメリカに渡り、それからはずっとアメリカで暮らしていたとか。


 敦賀さんのお母さんである奥さんとはアメリカで出会って結ばれた。


 その後、幼い頃に過ごした日本の京都が忘れられなかった敦賀さんのお父さんは、結婚してから日本に帰化し、その後に敦賀さんが生まれたらしいのだ。



 帰化する前のお父さんのお名前はクー・ヒズリ。

 でも今は敦賀を姓に、クーを名前に、そしてヒズリをミドルネームとして名乗っているという。…とはいえ、日本名にミドルネームはないことから、戸籍上は、敦賀クーヒズリ…と、一続きの名前になっているらしいけど。




 東京に向けて新幹線が動き出す。

 景色の流れを私は目の端で捉えた。


「 ……びっくりしただろう?俺の両親 」


「 そうですね。驚かなかったと言えば嘘になります。でも私、だからこそ分かっちゃいました。敦賀さんがどうしてこんなにも自然に私をリードしてくれるのか 」


「 あ?ああ、そうかも。母さん、とにかくうるさかったからね 」



 敦賀さんのお母さんは成人するまでイギリスにいたという。

 イギリスと言えばファーストレディの国だ。


 男性が荷物を持ったり、扉を開けたり、イスを引いてくれたり…と、そういう事をするのが当たり前の国にいらしたから、お母さんは息子である敦賀さんにそれを躾けたらしいのだ。



 それが子供の頃から身に付いていたとしたら、敦賀さんはきっとその頃から一目置かれる存在だったに違いない、と思った。



「 最上さん、疲れた? 」


「 ……そうですね。あちこち観光したのでちょっとは 」


「 そうだよな。ごめんね、うちの両親が振り回して…。でも、付き合ってくれて嬉しかった。ありがとう 」


「 こちらこそ、です。ご両親が連れて行ってくださった地元ならではのお昼ご飯も夕ご飯もとても美味しかったですし、観光地も楽しかったですよ 」


「 そっか。なら良かった 」


「 でもほんと、驚いちゃいましたよ? 」


「 ん?なにに? 」


「 まさか結婚報告を電話で済ませていたなんて… 」


「 あぁ、そのこと?だって、考えてもみてよ、最上さん。今、秋だよ?観光シーズンに京都に行くなんて、人を見に行くようなものだよ。今朝の京都駅だって回った観光地だって一つ一つがとにかく凄かっただろ? 」


「 はい、確かに 」


「 ……もしかしたら、泊りたかった?京都 」


「 え? 」



 私たちを大歓迎で出迎えて下さった敦賀さんのご両親はとても大きなお家にお住まいで、明日が休みなら泊っていきなさいと言って下さった。

 だけど、敦賀さんが断固として首を縦に振らなかった。


 新幹線のチケットをもう買ってあるから…と言って断ったのだ。



 その時のやり取りを思い出して私は胸を熱く焦がした。

 最後の最後に敦賀さんがご両親に告げてくれたそれが何より私は嬉しかった。




「 なんでだ?二人とも明日も休みなんだろう?だったらいいじゃないか。明日の昼にでものんびり帰ればいいだろう 」


「 そんな訳にはいかない。そもそも今日だってそんなつもりで来たわけじゃないんだ。あくまでも俺は彼女を二人に紹介したかっただけだから 」


「 冷たいな、お前は。本当に久しぶりに帰ってきたっていうのに… 」


「 そうだね。そうかもしれない。俺の本当の目的は、二人の顔を見ながら言っておきたいことがあったからなんだから 」


「 なんだ?言っておきたいこと、と言うのは…… 」


「 父さん、母さん。俺はね、二人の事をとても大切に思っている。でも、これから俺の一番は彼女、最上さんになるから 」


「 そりゃ… 」


「 例えば3人のうち、一人しか助けられない場面に俺が遭遇したとしたら、俺は迷わず彼女を選ぶ。

 たとえ父さん、母さんのどちらかが俺の目の前で死にそうになっていたとしても、そのとき彼女も同じ状況なら、俺が一番に助けるのは自分の妻となる彼女だし、一番に寄り添いたいと思うのも寄り添うのも彼女だけ。それを肝に銘じて。

 家族を持つということはそういう事だと俺は二人から教わっている。親だから、という、ただそれだけの理由で二人の気持ちを優先するようなことは絶対にない。ごめん、今日は帰るから… 」



 お二人は一瞬だけとても寂しそうに眼を伏せられ、それからすぐ顔を見合わせてほほ笑みあい、敦賀さんの肩を無言で叩いて了解の意を示されていたけれど、恥知らずにも私はそのとき胸いっぱいの幸福感に満たされていた。



 嬉しかった。


 本当に嬉しかったから。

 敦賀さんが私を一番にすると言ってくれた、その言葉の全てが。




「 …そうですね。泊まりたくなかった、と言えばそれも嘘になります。京都はとても魅力的な土地ですから 」


「 そっか。ごめんね?君の気持ちを聞く前に俺… 」


「 違いますよ、敦賀さん。結果として泊まりにならなかったことに私は安堵しています。だって、やっぱり緊張し過ぎてしまいます。初めてお会いした敦賀さんのご両親のお家に一泊なんて。

 だから敦賀さんが帰るって言って断ったとき、私、ホッとしていました 」


「 そう。なら良かった。

 本当はね、今日だって俺、行くつもりは無かったんだ。二人の顔を見て言ったあれだって、別に今日である必要なんてなかったし 」


「 ……行く気、無かったんですか?じゃあ、なぜ今日…。あ、もしかしたら、私が行くことを前提に話をしていたからですか? 」


「 いや、少し違う。俺たちが行かないって言ったら、両親がこっちに押しかけてきそうな気がしたから… 」



 そのとき、ポン…と軽い音が鳴った。新幹線の電光掲示板が各駅の到着時刻を文字で知らせる。

 流れてゆく情報を何となく見つめていると、敦賀さんがポツリと呟いた。



「 東京に着くのは22時だね 」


「 そうですね 」


「 俺ね、両親がもし東京に来たら、絶対泊っていくって言うに決まってるって思った。それが嫌だったから今日、自分から京都に行ったんだ 」


「 ……そうなんですか? 」


「 そう。だって…ね…… 」


「 ?……敦賀さん? 」


「 最上さん 」


「 はい? 」


「 今日……俺の家に泊まりませんか?荷物だってこんなにあるし、明日俺たち休みだし…。君が、嫌じゃなかったら… 」


「 え? 」



 真顔でそう言われて心臓が弾んだ。



 つまりそういうことよね?…と、考えただけで私の唇が小刻みに震えた。






  ⇒おまけ4 に続く


クーパパ幼少期の話から帰化うんぬんの話は軽く流してください。辻褄があう事項を急遽引っ張ってきただけで、最初から設定していた訳ではありませんので。



⇒おふたりさま物語◇おまけ3・敦賀さんと私1・おまけ話付き拍手

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