おふたりさま物語 ◇6 | 有限実践組-skipbeat-

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 現代パラレル蓮キョの続きです。

 どうぞお付き合いください。


 前のお話はこちら⇒おふたりさま物語<15>


■ おふたりさま物語 ◇6 ■





 その翌日のこと。


「 はー、楽しかったぁ♡ 同じ会員様のお買い物でも、やっぱり女の子の方が断然楽しいわー。キョーコちゃんも楽しかった!? 」


「 え?…あぁ、えっと……はい 」



 テンさんが私の購入品であるお買い物袋を肩からぶら下げ、翌週にお見合いを控えた私より乙女の顔で満足げに微笑む。


 ショップを出て、こっち、こっちと導かれた喫茶店に入って、ようやく私たちは足を休めた。


 3時間ぶっ通しでのお買い物なんて正直初めてで、足は棒のようになっていた。



「 はい、キョーコちゃん、メニュー。何を頼む?あたしはマジョラムティーにしようかな~ 」


「 えー……っと、私は…… 」



 今日、私は婚活服を買うためにテンさんとお買い物に来ていた。

 どうしてそうなったか、というと、結局昨日、私は社さんの話を聞いて納得したのだ。



 あのとき、難色を示した私の顔を社さんはまっすぐに見つめた。





「 ……ねぇ、キョーコちゃん 」


「 はい 」


「 もしかしたら今こう思っているのかな。男受けをする服を着て、異性に気に入られようと本来の自分と違う格好をするのは、媚を売っているみたいで嫌だって 」


「 ……っ……簡単に言えばそうです 」


「 そう。だとしたらその考え方こそが間違っていると俺は思う 」


「 どうしてですか?だって、それは本当の私じゃないのに。本来の私はゆるふわお嬢様じゃないのにそんな服を着るなんて… 」


「 俺はね、相手を喜ばせてあげたい、どうやったら相手が喜ぶのか考えて工夫したい。そういう気持ちが服装だったり、笑顔だったりに現れると思うんだ。

 例えばだよ?お見合いの席なのに、相手がヨレヨレのTシャツにジーパンで現れたとしたら、キョーコちゃんはどう思う? 」


「 そんなの、お見合いの席なのにあり得ないです。考えられない 」


「 でしょ? 」


「 でも、それとこれとは違うと思います!私だって普段着で行くつもりなんてないですよ?今までのお見合いだってちゃんとワンピースを着ていました。それじゃダメなんですか? 」


「 ……じゃあ、別角度から聞くよ?例えば相手の人が、事前にキョーコちゃんの好みを聞いてきてくれて、お見合い当日にキョーコちゃんが好きなコーディネートで現れたとしたら、キョーコちゃんはそれをどう思うの? 」


「 …っ……それは、嬉しい、と思います。わざわざそんな、気を使ってくれて 」


「 そう。もしそれが、彼の好みの服装じゃないと知ったら?相手がキョーコちゃんの好みに合わせてわざわざ買って、それを着てくれたんだとしたら、キョーコちゃんはどう思う? 」


「 っっ……それは、優しい人だなって、思う……カモ 」


「 ねぇ、それを自分に置き換えることは出来ない?キョーコちゃんが本来の自分を抑える必要はないよ?でも、プロフィール票を見て君に申請をくれる人は、ゆるふわお嬢様が好きなんだと思う。

 俺だって何もそれを一生演じろなんて言うつもりはないよ。でもね?もし何かのタイミングで、あなたの好みだと思ってわざとこういう格好をしたんですって告白されたら、俺ならすごく感動する。自分のためにわざわざそうしてくれたのかって、それこそ一気に惚れこんじゃうかも。

 キョーコちゃんは?もし相手がそうして来たら、嘘をついたのかって怒る?媚を売っているって幻滅する? 」


「 ……っ…しない…し、思わない……と、思い……マス 」


「 ほら。いまキョーコちゃんが言ってくれた、嬉しいとか、優しい人だなとか、そういうことを相手の人も考えると俺は思うよ?そしてそういう目でキョーコちゃんを見てくれると思う。

 お見合いの席ではね、こんな事でだって自分の人となりをアピール出来るものなんだ。だったら使わない手は無いと俺は思う 」


「 ……っ… 」



 ごく自然に、そうか…と納得できた。


 相手の好みに合わせた服装をするのは、確かに気遣いの一環なのかもしれない。


 それで、少なくとも私は、初めてお会いする相手に対しては、ゆるふわお嬢様仕様で挑むことに決めたのだ。



「 キョーコちゃん。理解、してくれたんだよね? 」


「 はい。しました 」


「 うん、良かった。…で、どうする?お見合いの第一、第二希望日程は来週の土日になっているんだけど、その前に服を買いに行く? 」


「 明日、行こうと思います 」


「 分かった!じゃ、それにアドバイザーのテンを同行させるから一緒に行ってみて。キョーコちゃんに似合うデザインやカラーを考慮して、ゆるふわお嬢様仕様に合わせてセレクトしつつ、試着時にコーディネートの仕方なんかもアドバイスするから。

 それを参考に自分で服を選んだらいいよ。それなら少なくとも後悔や失敗のない買い物になると思うし 」


「 えっ?それって… 」


「 テンさーん!! 」


「 はい、はーい?失礼しまーす 」


「 明日、キョーコちゃんのショッピングに同行してあげて。プロフィール票のイメージに合う服を一着も持ってないってことだから。服、靴、小物と合わせて雰囲気込みのコーディネートを何パターンかで 」


「 きゃあぁぁあ♡ もちろん行くわ!いや~ん、楽しみ!!キョーコちゃん、何時に行く!? 」


「 あの……ちょっと待ってください。それ、一時間で一体いくらぐらいかかりますか? 」



 自分で頼んだことが無いから正確なところは判らないけど、頭に残っている雑誌やテレビの情報では、確かそういうのをプロに頼むと1~2時間で一万円とか、延長料金が30分でいくら…とか、そんな感じの記憶がある。


 それに実際の購入品を合わせたら総額いくら?…と、一気に不安になったけど、眉根を寄せた私を見てテンさんは朗らかに笑った。



「 やあだ、お金なんか掛からないわよ。一日中だって無料よ♪ 」


「 でも… 」


「 心配しないで、キョーコちゃん。最初に活動サポート料を払ってくれているでしょ。お買い物サポートはそれに含まれていることなのよ 」


「 そ。ちなみに回数は無制限だから何回連れまわしても構わないよ。もっとも、あくまでもテンさんのスケジュールと合えば、だけどね 」


「 そう、だったんですか?知らなかったです 」


「 だろうね 」


 そう。私はそんなことさえ知らずにお金を払っていたのだ。そして改めて思った。アドバイスは絶対に必要だと。





「 キョーコちゃん?注文、何にするか決まった? 」


「 あっ、すみません……えっと、じゃ、私も同じのにします 」


「 そうする?!じゃ、二つ頼みましょ。すみませーん!マジョラムティーをふたつー 」


「 はい、かしこまりました。少々お待ちください 」


「 はーい。お待ちしてまーす 」


「 …くすっ 」


「 ん?なに? 」


「 いえ。なんか、テンさん、すごく楽しそうなのでこっちまで楽しくなっちゃうなって。それと、すみません。私が買った物なのに持っていただいてしまって… 」


「 いいのよ!服なんてそう重たいものでもないし。

 あたしねぇ、アドバイザーだから男性会員様のお買い物にも付き合うことがあるの。でもやっぱり女の子の方が楽しいわって思っちゃう 」


「 ふふ、私も楽しかったです。いま友人はみんな家庭があって、しかも子育て真っ最中だから、こうして誰かと出かけるなんて久しぶりです 」


「 あ、そうなのね。それは不幸中の幸いかも 」


「 え? 」


「 キョーコちゃん、知ってる?女性の結婚を妨げる最大の敵は女友達なの。だから、しばらくの間はお友達と距離を置いた方がいいわ。これは仲人からのアドバイス 」


「 ……それ、は、邪魔されるとか、そういう…? 」


「 …と言うよりはね……。んーと、これ、社くんが良く使う表現なんだけど、婚活中のキョーコちゃんは、いま結婚受験生だと思って。ちなみに相談所は塾 」


「 ぷっ。結婚受験生で塾? 」


「 そうよ。でね、理想の男性と結婚したいなら、男性に好感度の高いメイクやファッションを覚えながら、塾の講師である仲人に質問して男心を学んで、色んな人とお見合いしてデートして、とにかく会話力を上げる必要があるの。結婚したかったらとにかく男心の勉強をしなきゃ。ね? 」


「 はい 」


「 でね、結婚受験生の女友達は何かって言うと、マンガなの 」


「 マンガですか? 」


「 そうよ。マンガは読めば楽しいし元気が出るけど、ずっとマンガばっかり読んでいたら勉強なんて出来ないでしょ。つまり、恋愛偏差値が上がらないってこと。判る? 」


「 何となく… 」


「 何となくか。……あのね、女子会って実際楽しいでしょ。しかも友人なら気が合って当たり前。気を使って会話をしなくて済むでしょ。そうするとね、婚活デートが面倒になってきちゃうの。

 相手の好みに合わせて気を使って、愛想笑いを浮かべて会話して…っていうのが段々と億劫に感じてきちゃう。実際ね、こんなに大変ならもういいや。女友達と遊ぶ方が楽しいって言って、ほんとに退会しちゃった会員様もいるぐらいなのよ 」


「 ええぇ~? 」


「 もともと男性ウケするものと女性ウケするものって少し違うでしょ。だから女子会をする子ほど同性ウケするファッションになっちゃって、男性ウケがイマイチってことが実は良くあるの 」


「 あ、それは、分かる気がします 」


「 そうでしょ?で、その女子会の中にね、特に結婚願望の無い独身のお友達とかいたら、あたしたち仲人は本当に困ったりすることがあるの。そういう人って男心が分かってないから、とにかく的外れなアドバイスをしてくれちゃうのよね~ 」


「 あー…。ふふふ… 」


「 笑い事じゃないわ。しかもここがミソ!婚活中の女の子って、仲人のあたしたちよりそういうお友達の方を信じちゃうのよ! 」


「 えぇ?そうなんですか、ちょっと意外です 」


「 本当なのよ!分かる気はするの!だって、昨日今日、会ったばかりの仲人よりお友達の方が断然付き合いが長いのだもの。どっちを信じたいかって言ったらお友達に決まっているわよ。でも!!信じて欲しい!!

 仲人は結婚塾の先生!あなたたち受験生は、塾の先生であるあたしたちの言葉こそ信じて欲しいの!ねっ?キョーコちゃん! 」


「 ……はい。分かりました 」


「 ふふ、ありがと。それにね、好きって感情は案外厄介なものなのよ。好きっていう感情にはしばしば錯覚が入るから 」


「 錯覚ですか?入りますか? 」


「 入るわよ。錯覚を別の言葉で言うと、ひいき目。

 ところで、キョーコちゃんには大好きな女友達っている? 」


「 はい、います。大親友が一人 」


「 そう。そうするとね、キョーコちゃんの中で、その親友さんに対する評価って相当高いと思うの 」


「 はい、もちろんです。モー子さんは百点満点です 」


「 ……っ…うん、それ。

 たとえばそのモー子さんという人が、あたしの目から見たら80点の女性だとする。そして同じ80点の男性と付き合っていると仮定すると、その二人は釣り合いが取れているってことになるわよね 」


「 はい、そうですね?80点同士なら 」


「 うん。でも、キョーコちゃんの中で彼女は100点なんでしょ? 」


「 そうです。なんだったら120点でもいいですよ? 」


「 そう、それ!!まさにそれ。たとえばその親友さんの口から、80点彼氏の愚痴が出たとしたら、キョーコちゃんはどう思う? 」


「 そうですね。正直、不満があるなら別れればいいのにって…実際に思ったことが一度や二度じゃないレベルであります。別れませんでしたけどね。夫婦になりました 」


「 ほら、そういうこと。二人が別れないのは彼女たちの中でお互いに釣り合いが取れているからなの。でも、キョーコちゃんの中ではその親友さんの価値が100点だから、80点の彼氏なんてってつい思っちゃう。

 それでもしその親友さんが釣り合いの取れている彼と別れちゃって、キョーコちゃんの言う100点の彼女にふさわしい100点の彼氏を探したって、そんな人はどこにもいないのよ 」


「 ……そうですか?私は探せばいると思いますけど 」


「 居ないわ。大好きな女友達にふさわしい最高の男なんて。

 そんな女友達のお眼鏡にかなう男なんて一人もいない。それこそ、全宇宙を探してもいないのよ!!いい?キョーコちゃん?! 」


「 え…そんな、急に力説されても… 」


「 だからね?あたしが言いたいのは、その逆も然りってことなの。

 お見合いをして、この人イイなって思う男性がキョーコちゃんの前に現れたとするでしょ?でもキョーコちゃんがそう思ったとしても、親友さんの目から見たらこんな男って絶対になっちゃうものなの。

 それで、あの人はダメよ、止めた方がいいわって言われて、そのたびにキョーコちゃんが親友さんの言う事を聞いていたら、いつまでたっても、永遠に結婚なんて出来ないから!! 」


「 う……それは嫌です 」


「 これ本当よ?だからね、暫くの間は同性のお友達とは距離を置いた方がいいわよって話。

 愚痴ったり毒を吐いたり、ちょっとぐらい自分の欠点を見せても許してくれる、長い付き合いのお友達のそばにいるのは確かに居心地が良いと思う。でも、今のキョーコちゃんに必要なのは、初対面の男性と楽しく話せる力。初対面の男性に好かれる力よ。

 ねっ?同じお出かけをするならLMEに来る!そして男心を勉強する!分かって!? 」


「 ……あ、はい。分かりました 」


「 うん。ありがと、ごめんね。無理やり言わせたみたいで。でも、少しの間の辛抱よ。そう思って頑張りましょう。結婚、したいんでしょ? 」


「 はい。したいです…… 」


「 うん。あたしも協力出来ることはどんどん協力しちゃうから。分からないことは何でも聞いてきて? 」


「 はい、ありがとうございます 」


「 とにかく、来週のお見合い、頑張って。同年代とのお見合いは初めてなのよね? 」


「 はい、初めてです。頑張ろうと思います。テンさんがコーディネートしてくださった、ショートヘアでもゆるふわイメージの服で頑張ってみます 」


「 うん。応援してる!! 」


「 ありがとうございます 」



 その言葉通り、翌週の土曜日。

 私は同年代との初めてのお見合いに張り切って挑んだ。






 ⇒おふたりさま物語7 へ続く♪


今週のヒット賞~♪…マジョラムティー。ぷっ(*´艸`*)

ところで、お話には登場しないけど、モー子さんの旦那って誰ヨぉぉぉ?!



⇒おふたりさま物語◇6・拍手

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