おふたりさま物語 ◇3 | 有限実践組-skipbeat-

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 現代パラレル蓮キョの続きをお届けします。

 ちなみに、感受性が鋭すぎる人などは共感を覚えて泣いちゃうかもしれません。思い当たる方、タオル必須!


 いつものように少し長めになってしまいましたが、どうぞお付き合いください。


 前のお話はこちら⇒おふたりさま物語<12>


■ おふたりさま物語 ◇3 ■





 自分でも信じられないぐらい激しく、堰を切ったように泣いてしまった。


 30にもなって人前で泣くなんて恥ずかしいとは思ったけれど、止めることは出来なかった。



 そっと差し出されたタオルに顔を埋め、それすらびっしょり濡らしてしまって、私はひきつる喉に鞭打つように何度も唾を飲み込んでいた。




 今はこんなだけど私

 それでも数時間前はひそかに胸をときめかせていたのだ。


 お見合い申請の相手は誰だろう。ドキドキしながらプロフィール票をもらった私だったけど、それを見た途端に落胆した。


 同年代の方希望…と書いてあるにも関わらず、申請をくれた人は50代の男性で、なぜこうなってしまうのだろうと思った。



 最も、申請自体は誰に申し込んでも構わないのだし、希望欄はあくまでも希望であって絶対ではないことは判っていた。


 だから今までもせっかく申請を頂いたから、とお見合いは全てお受けしていたけれど、やっぱり年が離れているとまず話が合わない。それを6回経験した。



 なのでそうお伝えして断ろうと思った。同時に私は担当者に改めて自分の意思をちゃんと伝えた。

 私は同年代からの申請が欲しいのだ。


 すると、年配の女性担当者さんは私をジロリと睨み付け、声高にこんな言葉を投げつけた。



「 あのねー、あなたみたいなハイスペックを引っ張りたい同年代なんて一人もいやしないわよ!リードして欲しいなら年上に行きなさい!それか、共働き希望の男を自分が引っ張るつもりで行くか、そのどちらかしかないわよ!!はい、どっちにする? 」


「 …っっ!?! 」



 唐突に突き付けられた選択肢に私は激しく動揺した。

 どちらにするかと問われてもすぐに出せる答えじゃない。


 なぜならそれは私が望む選択肢とは違うから。



 そもそも本当にその二択しか無いのだろうか。本当に?


 私が自分の殻にこもってあれこれ考え込んでいると、返事がないことにイラついたのか、担当者はさらに私にこう言った。


「 あのね!そんなだからあなた結婚できないのよ!! 」


「 っっっっ!!! 」



 息が止まるかと思った。

 思わず顔を跳ね上げた。


 このセリフには物凄い威力があって、自分の心がごっそり抉り取られた気がした。





 ――――――― 深く、深く傷ついた。




 こんな自分じゃ結婚できないと言われたのが悲しかった。

 そう思われているのに登録し続けることに一体どんな意味があるだろう。もう婚活なんて止めてしまおう。



 そう考えて、泣きたいのを堪えながらその場で退会手続きを踏んだ。帰りの電車に揺られていると涙がこぼれそうになって、耐え凌ぐために顔を上げた。


 そのときLME結婚相談所の広告が目に入ったのだ。




『 自分の婚活に疑問を感じたら、セカンドオピニオン感覚でまずは気軽にご相談ください。

 愛をもって対応させていただきます 』



 愛をもって…の言葉に涙が滲んだ。その言葉に縋りたくなった。


 だって私は結婚したいのだ。


 一人で生きることに寂しさを覚え、誰かと支え合って生きていく人生を選択したい。そう思って始めた婚活だった。



 もう手遅れかもしれないとも思った。でももう一度だけ踏み出したい。

 これでダメだったら諦めよう。


 そう決めて電話番号を頭に入れ、途中下車した駅ですぐ電話をかけた。本当に、藁にもすがる思いだった。



「 もしもし?あの、最上と申しますが…… 」



 それに、婚活を止めるにせよ、続けるにせよ、自分が抱いた疑問は解消しておかなくちゃ。

 自分の事だから良く判る。


 もしこの状態を放置したら、きっといつまでも私は引きずってしまうに違いない。




 LME結婚相談所はそんな遠くではなかった。頑張って行けばそこから20分程度で伺うことは出来たと思う。

 にもかかわらず到着が一時間後になったのは、この心を落ち着かせる時間を持っていたからだった。




「 ……それで、こちら…っ……に……いろいろ、伺いたく、て……っ… 」


 嗚咽を含めながらではあったけど、これまでの経緯を話した。


 タオルに顔を埋めていたので、私の前にいる社さんという仲人さんが、私の話をどんな表情で聞いていたのかは分からない。

 けれど、私の話を聞き終わった途端、社さんは大きな声で叫んだ。



「 なんじゃ、そりゃ――――――― っっっ!! 」



 突然だったのでびっくりして、泣き顔のままタオルから顔を上げた。

 社さんは見るからにとても憤慨していて、涙でぐしゃぐしゃだろう私を見て、そのまま私に頭を下げた。



「 そんなの、婚活を頑張っている人にかける言葉じゃない!!!……ごめんね、最上さん。そんな同業者が居るなんて恥ずかしい。気にするなって方が無理だと思うけど、でもどうか気にしないで…… 」



 そう言われてたまらず涙が溢れ出した。


 こんなにも出てくるものなのかってほど溢れて、溢れて止まらなくて。ただ、このやるせなさに寄り添ってもらえたことが嬉しかった。



「 ……教えて、ください 」


「 うん、いいよ。何でも聞いて? 」


「 ……私……私でも、結婚…出来ると思いますか? 」


「 うん、出来る…って断言してあげたいけど、こういうのは縁だから。でも、俺は信じてる。探せばきっとどこかにいる。君と結婚したいって思ってくれる人が、必ずどこかにいるよ 」


「 …っ…はい。ありがとうございます 」


「 でもね、ひとまず婚活の事は置いといて、今日はもう早く帰って休んだ方がいいと思う。いっぱい泣いて疲れちゃったと思うから 」


「 え?……勧誘…しないんですか? 」


「 勧誘…はもちろんしたいけど、でもね、こういう時は焦らない方がいいんだ。とはいえ、だからってのんびりしすぎてもダメだよ。どうしてかって言うと、今の君が生きているうちで一番若いから 」


「 …っ!? 」


「 たぶん、君も一度は思ったことがあるんじゃないかな。もっと若い時に入っていれば、活動していれば…って。その通り、若いに越したことはないんだ。なぜかって言うと、大抵の男性は下方婚が好きだから 」


「 ……下方婚…? 」


「 そう。格上の女性には気を使いそうだから、学歴や年収なんかが自分より少し低い、年が若い、自分を立ててくれそうな可愛い女性と結婚したいって男は思う生き物なの 」


「 学歴や年収…… 」




 ――――――― 君は頭がいいから、一人でも十分生きていけるよ




「 それとは別にね、LME結婚相談所は君が登録していた相談所と料金が段違いに違うから。…資料、見てみますか? 」


「 …………はい 」



 実はそれは知っていた。

 ここに来る前、自分の気持ちを落ち着かせている間に私はLME結婚相談所のホームページにアクセスし、料金形態を確認していたのだ。


 今までの相談所は登録料が15万、そして月会費は1万5千円だった。これまでに支払った総額は39万円になっていた。


 けれどLME結婚相談所はそれを遥かに上回る。

 入会金が3万6800円。登録手数料が5万6200円。さらに活動サポート料として37万8千円が必要で、それ以外に月会費が9800円とあった。


 ここに3か月も登録していたら軽く50万を超えてしまう。



 だから入会を強引に勧められたらどうしようかと考えた。

 考えたけど、でも私は……。



「 私、私は、相手の年収とか学歴とかはどうでもいいと思っています。ただ同年代の人と会いたいんです。

 自分が奥手だから、私を引っ張ってくれる人ならスペックにはこだわりません。そういうの、社さんはどう思われますか? 」


「 やり方次第でいくらでも可能だと思います。だから俺たちは必死になって探すよ。

 結婚だけが幸せではないけれど、でも結婚することでしか得られない幸せがあることも俺たちは知っているから 」



 即答されたその言葉で私の心は決まった。



「 登録します。お願いします 」


「 ええぇぇっ?!本当に良いの?! 」


「 はい、必要なお金は持ってきています。どうかよろしくお願いします 」



 自分でも驚くぐらい信頼心が芽生えていた。

 この相談所でダメだったらもう結婚は諦める。


 用意していた現金をバッグから取り出し、どうぞよろしくお願いしますと深く頭を下げた。







 ⇒おふたりさま物語4 へ続く♪


このお話、書いている間中ずーっと頑張れ、頑張れ言ってます。

早く蓮くん、登場させたい。


ちなみにLME結婚相談所の料金形態は、実在する某結婚相談所を参考に一葉が設定しましたが、ありえない金額ではないという事を付け加えておきます。事実、これより高い相談所もあるのですよ。



⇒おふたりさま物語◇3・拍手

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