現代パラレル蓮キョの続きです。
どうぞお付き合いください。
前のお話はこちら⇒おふたりさま物語<1 ・2 ・3 ・4 ・5 ・6 ・7 ・8>
■ おふたりさま物語 ◇9 ■
疲弊しきっていたはずだったのに、敦賀さんとのお見合いは信じられないほど楽しかった。
勿論それは社さんがそうしてくれたから、というのもあるのかもしれない。けれど、単純にそれだけじゃないと思った。
会うまでは判らなかったけれど、接して感じた敦賀さんの全ては、今まで出会ったどのお相手とも違っていて、それが私の目にとても新鮮に映っていた。
「 第一問。今日はここまで何で来ましたか? 」
平然とした顔で社さんが質問を繰り出す。
それに敦賀さんが応じたので、倣って私も答えた。
「 徒歩で 」
「 私は、社さんの車で連れて来ていただいて… 」
「 OK、そんな感じ。第二問。最近、何かで泣いちゃった? 」
「 あー……。俺、仕事中にデスクの角に小指をぶつけて、思わず泣きそうになった… 」
え?やだ、なにそれ?
聞いただけで小指が痛い。
「 …っ…敦賀さん。それ、爪が割れたり、血豆が出来たりしませんでした?大丈夫だったんですか? 」
「 うん。一応、痛いだけで済んだんだ。でもぶつけた瞬間は小指が亀の首みたいに引っ込んだんじゃないかってぐらい痛くて…。後でちゃんと付いているのを見て本気で胸をなでおろした。実は 」
「 わぁ、良かった!!良かったですね。不幸中の幸いでしたね。あれ本当に痛いですよね 」
「 ほんと、泣きそうなほど痛かった。だから良かったよ。危うく再起不能になるところだった 」
「 え?…ふっ……ふふふ… 」
「 はいはい、次行くよ。第三問。今日はいい天気ですね? 」
「「 そうですね? 」」
「 うむ。良きに計らえ。第四問… 」
「「 ちょっ?なんですか、社さん、今の問題?? 」」
「 ん?一気に場を和まそうと思って。いや、だけど案外二人とも気が合っているみたいで何より。まさか連続でハモるとはね。はい、続いて第四問。今日のお昼は何を食べましたか? 」
「 俺はまだ 」
「 え?そうなんですか?実は私もまだです 」
「 えー、ちなみに俺もまだだけどね~。じゃ、そんな二人に第五問。いまご飯を食べに行くならどこに行きたい? 」
「 うーん…。そんなの、いきなり聞かれても… 」
「 ……っ……わ、私は……牛丼屋さんに行ってみたいです! 」
「 え? 」
「 えっ? 」
「 はい、終了~~ 」
敦賀さんと顔を見合わせたところで社さんが終了を告げた。その時の敦賀さんの顔を私は一生忘れられないと思う。
だって、敦賀さんの顔には、いま何を言った…とはっきりそう書いてあって、いくらなんでも初めてのお見合いで場違い過ぎた…と気づいた私は、火を噴きそうなほど恥ずかしくなった。
何とか平静を取り繕おうと姿勢を正して俯いて、テーブルの下に隠した両手を膝の上で固く握った。言うまでもないことだけど、自分の全身は真っ赤になっていた。
「 …えっと…最上さん……は、牛丼屋に行きたいの?好き? 」
「 ……っ……は…い、えと……あの、そのですね…… 」
ああ、どうしよう。なんて言おう!!
悩んだところで後の祭り。言った言葉は取り消せない。
そもそもどうして私がいきなりこんな事を言ったか、というと、実は2か月前に社さんと立てていた作戦だったのだ。
社さんのアドバイスに従い、12名の男性に申請を出す直前に、私はそのとき自分が抱いていた疑問を飲み込むことなく、社さんにぶつけていた。
「 社さん。本当にこうすることで良い人に巡り合えますか? 」
「 それは、やってみない事には判らないでしょ?とにかく選んだ人全員に出してみよ? 」
「 ……はい。でも、いま私はこう思っています。この申請を自分からしたら、自然とお見合いの席では私がイニシアチブを取ることになるんだろうなって。
お相手だってそう考えると思うんです。そうすると……ますます私をリードしてくれる男性には出会えなくなる気がします。違いますか? 」
男性にリードしてもらいたい。それが私の理想だった。
自分より背が高くてブレない世界観を持ち、力強く私をリードしてくれる、そんな男性を私は求めているのだ。
「 キョーコちゃん。何事も経験だよ。取り敢えずこの一回はやってみよう?その後でまた考え……あ、ごめん 」
「 いえ 」
そのとき、社さんの携帯に着信が入って会話が一時中断になった。
登録会員様からの電話らしいことは社さんのセリフから想像がついた。そしてその口調から、かけてきたのは男性なのかな、と思った。
「 もしもし?なに、どうした?今日は二度目のデートのはずだよな? 」
お見合いが成立して、もし次に二人が会おうとなった時は仮交際ということに。
けれど一度もそこに至っていなかった私は、単純に羨ましいと思った。しかも二度目のデートなんて未知の領域。
私にもいつかそんな日が来るのだろうか。
また会いたい…と思えるような男性に出会える日が本当に?
「 はぁ?バカなのかお前は!?なんで店選びの相談を俺にしてこないんだよ!なに?この前、麺類が好きだって言っていた?…っっ…だからってどうやったら大亀製麺に連れて行こうと思えるんだ!だいたいその選択肢で相手が本気で喜んでくれると思ったのか!?
言っておくけどな!!今まで聞いた中でも一番の破壊力だぞ!!百年の恋も一気に冷めるわ!
それで???彼女はどうした?帰っちゃったのか?! 」
「 …よし!それならこの電話を切ったら即、スマホを使って検索しろ!女子会、パスタランチ、で出てきた店に連れていけ!いいか?店が少しでも遠い場所にある場合はタクシーを使えよ、分かったな!? 」
通話はすぐに終わってしまって、電話を切った社さんは深いため息を吐き出した。
「 ……はぁ…まったく……。あ、キョーコちゃん、ごめんね。それで… 」
「 社さん 」
「 うん? 」
「 いま仰っていた大亀製麺さんって、製麺所さんですか?麺類が好きだと聞いて製麺所でデートなんて新しい発想ですよね。大胆って言うか… 」
「 ぶっ!!……え、キョーコちゃん、知らない?釜揚げうどんがメインのとってもカジュアルなお店なんだけど… 」
「 え、お店なんですか?あっ、聞いたことありました!行ったことはないですけど。…なんだ、そっか。いいな、一度行ってみたい 」
「 ……本気? 」
「 どうしてですか?本気です。私、片親の時はずっと自炊で、外食するようになったのは父が出来てからなんです。でもさすがに父も母もそういう所に行こうなんて、そもそも考える人たちじゃないですから 」
「 ああ…。企業弁護士のご両親… 」
「 はい。CMの牛丼屋さんとか、すごく美味しそうに食べているじゃないですか。あれ見て一度だけでもって思ったこともあるんですけど、いざとなるとなかなか勇気が出ないんです。何しろ勝手が分からないので、間違えたら恥ずかしいってそればっかり考えちゃって… 」
私がそう言うと社さんはいきなり笑顔になって、大きな声でそうしよう!と、手を叩いた。
「 キョーコちゃん、それいい!そうしよう! 」
「 え? 」
「 お見合い相手で良いな、と思える男性に出会ったら、迷わずお嬢様作戦を発動してみよう! 」
「 お…お嬢様作戦ですか? 」
「 そうだよ!プロフィール票通りに、世間知らずで何も知らない私、色々教えて欲しいな…を相手に投げてみるんだ!! 」
「 えええっ??! 」
五か月も私のお見合いを見ていた社さんは、とっくに気付いていたのだと思う。
私がホテルのラウンジや高級店の雰囲気に慣れてしまっていたことに。
それゆえ、お見合い相手をさりげなくリードしてしまっていることに。
「 キョーコちゃんが行ったことのないお店なら、自分からリードしたくても出来ないでしょ?! 」
「 あ…… 」
それを聞いて、確かにその通りかもしれないと思った。その時は私もいいアイディアだと思ったのだ。
でも、今の敦賀さんの顔を見てしまったら、大失敗としか思えなかった。
だけど、今それに気づいた所で言った言葉は取り消せない!!!!
だからこのまま突き進むしかないと思った。
「 …最上さん? 」
「 あ…あの……私、世間知らずで……。実は一度もそういうお店に入ったことが無いんです。それで……CMで、とても美味しそうに食べているのを見て、一度行ってみたいなって……思っていて…… 」
「 …そうなんだ 」
「 はい。でも、一人だとなかなか勇気が出ないので…… 」
「 まぁ、確かにね。女性には敷居が高いよね 」
「 そ…そうなんです。あの、だから……今度、もしよろしければっ!!! 」
「 だったら、今から俺と行ってみる?俺も昼まだだし。このホテルの裏にあるよ?牛丼屋 」
「 え? 」
「 君さえよければ、だけど 」
――――――― キョーコちゃん。お嬢様作戦、発動してみよ。
良いな、と思える男性に出会ったら…
……社さんが、私のためにわざわざ作ってくれたチャンスだもの…!
「 い…行きたいです。ぜひ連れて行ってください! 」
「 いいよ。じゃあ行こうか 」
そう言って、敦賀さんはとても神々しく微笑んだ。
⇒おふたりさま物語10 へ続く♪
麺類が好きといったお見合い相手のリクエストに応えて、〇亀製麺に連れて行ったという男性のエピソードは本当にあった話(らしい)です(笑)
その彼は結局どうなったのか、ちょっと気になっています。
あ、ちなみに、ヤッシーが繰り出したスピード・クエスチョンは一葉の創作です。
⇒おふたりさま物語◇9・拍手
Please do not redistribute without my permission.無断転載禁止
◇有限実践組・主要リンク◇