現代パラレル蓮キョの続きです。
どうぞお付き合いください。
前のお話はこちら⇒おふたりさま物語<1 ・2 ・3 ・4 ・5 ・6 ・7 ・8 ・9 ・10 ・11 ・12>
■ おふたりさま物語 ◇13 ■
初めて仮交際に進んだお相手、敦賀さんとのラーメンデートが終わったあと、私は早々に自宅へ戻った。
水曜日の夕食デートに備えて、敦賀さんのプロフィール票を見直そうと思ったのだ。
理由はもちろん、保留になっていた敦賀さんの趣味を調べるため。
今日もとても楽しかった。
嬉しいことが幾つもあった。
「 そしたら次の角を右に曲がるよ 」
「 はい 」
敦賀さんの誘導に従い、角を曲がって割とすぐにラーメン屋さんが現れた。暖簾を持ち上げてくれた敦賀さんに促されて店内に踏み入る。
「 いらっしゃいませー! 」
「 ようこそいらっしゃいましたぁっ!お好きなお席へどうぞ~ 」
高らかに声が響いて、圧倒されながら店員さんに軽い会釈をした私は、どこに座りましょうか…の意味を込めて敦賀さんへと振り向いた。
すると、私と視線があった敦賀さんの手がそっと私の背に触れた。
「 最上さん、まずはあっち。ラーメン屋さんの多くは席に着く前に自販機でチケットを買うんだ 」
「 あ…そんなシステムなんですね 」
それを聞かなかったらきっと私は、当然顔で空きテーブルに向かっていたに違いない。
だから、お礼の気持ちを込めて、教えてくださってありがとうございます、と敦賀さんに頭を下げた。
そのとき…
「 …っっ?!敦賀さんっ??大丈夫ですか!? 」
頭を上げて目が合った瞬間、券売機に敦賀さんのおでこがぶつかった。
突然だったのでつい大声を出してしまって、周囲の人を驚かせたのは申し訳なかったと思うけど、私はそれ以上に驚いていた。
下から慌てて敦賀さんの顔を覗き込むと、敦賀さんはぶつけたおでこに手を当てながら、もう片方の手を横に振った。
「 あ、いや、大丈夫。お金を入れようとしてちょっとぶつかっちゃっただけだから。えっと、最上さんは何を食べる?俺の分と一緒に買うから好きなのを押していいよ 」
「 はっ?あれ……あ、はい、ありがとうございます 」
ぶつかった時の衝撃音は、ちょっと…って大きさでは無かったのだけど、敦賀さんが何事も無かったように振る舞おうとしたので私もそれに倣った。
だって、失敗しちゃったそれを指摘され続けるのは誰だって恥ずかしいと思うから。
ただ、敦賀さんって見かけによらず案外そそっかしい所があるのかな…って考えたら微笑ましい気持ちになった。
そう言えば初めて会った日も、机の角に小指をぶつけた話をしてくれたっけ。
親近感に心を和ませながら二人でそれぞれのラーメンを平らげた。
「 ごちそうさまでした。美味かったです、また来ます 」
「 ありがとやしたー! 」
「 ご馳走さまでした。私も美味しかったです 」
「 ありがとやしたー!またのご来店をお待ちしてますー 」
「 ……最上さん、どうだった?魚介系のラーメン 」
「 はい、すごく美味しかったです!スープに深みがあって、麺も細くて食べやすくて、あっさりなのに味わい深くて本当に美味しかったです 」
「 うん、良かった。喜んでもらえて嬉しい。それにしても、君って本当に何も知らないんだね 」
「 ……はい、そうなんです。私、本当に世間知らずでして… 」
「 うん。でも、それを恥じることはないよ 」
「 え? 」
「 知らないなら知ればいいだけの事。分からないなら俺が教えるから平気だよ。ただね、正直に言うと、俺がいないとダメって感じが割と好きかもって思う。かわいい 」
「 …っっ!!? 」
このとき純粋に嬉しかった。
君は頭がいいから一人で生きていけるだろ…って、そう言われて振られるのが定番だった私なのに、敦賀さんの前では私は可愛い女の子になっていたのだ。
仮交際じゃなくて、ちゃんとこの人と付き合いたい。
心からそう思った瞬間だった。
「 ……あは、ありがとうございます。そ、それであの、前回に引き続いて今日もご馳走様でした! 」
「 いえいえ。美味しかったって言っていただけただけで俺はだいぶ嬉しいから。さて、この後だけど… 」
「 それなんですけどっ、もう少しお話をしませんか?お昼をご馳走になったので今度は食後のコーヒーを私にご馳走させてください! 」
実は前回のお見合いのとき
ラウンジでのドリンク代も、そのあと連れて行ってくれた牛丼屋さんの支払いも、敦賀さんが済ませてくれていた。
だから今日のラーメン屋さんは私が…と思っていた。
けれど敦賀さんがおでこをぶつけてしまったことで、私はお財布を出す機会を完全に逃してしまっていたのだ。
通常、そういう席では男が出すものだから…と、社さんからは言われていたけど、実は私、テンさんからは別のアドバイスを貰っていた。
『 キョーコちゃん。大抵の男性はキョーコちゃんのプロフィール票を見て、こんなお嬢様と交際成立したとして一体どこに連れて行こう…って悩んじゃうと思うの。だから社くんが発案したっていう、カジュアルなお店に連れて行ってください作戦はすっごく良いとあたしも思う 』
「 はい、私もそう思っています 」
『 でもね、社くんは男がおごって当たり前って考え方なんだけど、あたしはちょっと違うの。いまは大企業ですらリストラの嵐が吹き荒れているじゃない?それでなくてもお給料ってなかなか上がりにくい時代でしょ。
だからあたしは割り勘推奨派なの。だって割り勘にしたら男性の負担が軽くなるでしょ。その分、2倍デートできると思わない? 』
「 ……っ?! 」
テンさんに言われて、なるほど…と思った。確かにその通りかも。
だったらなるべく敦賀さんの負担を減らしたいと思った。なぜなら自分は次の約束もしたいのだ。
そんな経緯もあって今日は自分が…と決めていたのに、結局、私はまた敦賀さんにご馳走されてしまった。
テンさん曰く、こういう場合は後からお金を出しても男性は受け取りにくいものらしい。だからそうなった時の対処法として、私はテンさんから更なるアドバイスを貰っていた。
それが、自分からご馳走します宣言をすることだった。
「 あ、ほんと?嬉しいな。じゃあね、この近くに公園があるんだけどそこはどう?そこに美味しいコーヒーがあるんだ。自動販売機なんだけど、豆からちゃんと挽いてくれるやつ 」
「 ……自販機のコーヒー? 」
正直、安すぎる…と思った。
せめてラーメンの半分の値段はないと…と。
でも、笑顔の敦賀さんから滑り落ちた言葉を聞いたら、それでもいいのかな、とも思えた。
「 そうそう。今日はいい天気だから屋内に入るのはもったいないと思わない?だから、公園はどうかな? 」
公園に行こうか、ではなく
公園はどう?…と聞いてくれたのが嬉しかった。
一方的ではなく。
自分で勝手に決めてしまうのでもなく。
敦賀さんは私の気持ちを確認してからイニシアチブを発揮してくれる。
そんな敦賀さんを本当に素敵な人だと思った。
「 はい、確かにもったいないですよね。私も公園に行きたいです 」
「 良かった。こっちだよ、行こ 」
「 はい 」
自販機で挽き立てコーヒーを二つ買い、二人でベンチに並んで座って視線を合わせて照れ笑い。
それからすぐ土曜日の約束を取り付け、その流れで私はテンさんのアドバイスを実行した。
――――――― 敦賀さん、約束ですよ?この日は私とデートです。忘れちゃヤですよ?
いつもの私だったら、例え準備をしていたとしても寸前で怖気づいたかもしれない。でもこの時はもう、誰にも敦賀さんを取られたくない…という気持ちが勝っていた。
「 …あ?そう言えば思い出した! 」
実はこのときベンチに衝撃が走っていた。
ゴンッ!!と凄い振動が襲ってきたのだ。
震源地は判ってる。
ベンチに座って私と目線が合った敦賀さんが、いきなりそっぽを向いたと思ったらベンチの脇を殴ったのだ。
その衝撃音の大きさに私は息を飲んでしまって、しばらくの間は目をぱちくりさせていたのだけど、そのあと敦賀さんはまた何事も無かったように笑顔を浮かべ、普通に会話を続けていた。
「 あれって、もし私がやったことが不快だったなら、そのあと敦賀さんから水曜日に一時間…とか誘ってきたりしないわよね?…だとすると、あれって何だったんだろ? 」
その時あった出来事を思い返し、首を傾げた私はようやく敦賀さんのプロフィール票に目線を落とした。
敦賀さんをもっと知りたい。純粋に沸いた欲。
今度は隅から隅まで、くまなくチェックしてしまおう。
「 ふふ… 」
敦賀さんが自分より背が高いことはもう知っている。
大学を卒業してから一度も転職をしていないことも、企業名こそ分からないけれど、単身赴任のない会社に勤めていることも判っている。
なぜか…というと、それに該当する人はNGとして自分が弾いたからだった。
「 それにしても……マニアックな趣味よね、敦賀さんって。藤道父といい勝負な気がするわ 」
実はウチの父、精神力・忍耐力・推理力を試されるカードゲームが大好きで、若かりし頃は世界各国から最強のプレイヤーが集うゲーム大会にも出場し、優勝した経験さえあるらしい。
特に序盤はギリギリのスリルを味わいたいという理由から相手を優位に立たせておき、終盤に向かうほど徐々に追い詰め締め上げていく、という心理戦が大好きで、さらに言うと最後の最後のどんでん返しで周囲をあっと言わせるゲーム展開が得意らしい。
弁護士になってからは思うように時間が取れず、その世界からはだいぶ遠ざかっているようだけど、今でも一部の人には心理戦の鬼…いえ、神だったかしら…として名が知られているとか、いないとか。
「 こうして改めて比較してみると、人の精神にダメージを与えない…という点で、敦賀さんの方が断然いい趣味のような気がするわ。
でも、猫の足拓収集とか、昆虫のもげた足の観察とか、野生植物の栽培とか、一体なにを楽しみとした趣味なのかしら。不思議 」
実際、これを趣味と掲げるきっかけが何だったのかの想像すらつかない。
しかし、収集したり観察したり栽培したり…という趣味は、案外お金がかかりそうな気がした。
そうすると敦賀さんはこれらの趣味にどのぐらいを費やしているのだろう。
単純にそんな疑問が浮いて、今までノーチェックだった年収の欄を確認した。
目に飛び込んできた数字を見て、正直、私は戸惑った。
「 え?年収270万円って、嘘でしょ?だって、敦賀さんが今日着ていた服って……。あれ?でも、だからお見合いの日に私にああ言ったのかしら?年収が平均より低いから? 」
――――――― 俺のプロフィール票、ちゃんと見た?
趣味の欄とか、年収の欄とか、写真とか、ちゃんと見た?
「 いえ、でも待って?あの言い方って、どちらかと言うと…… 」
何故このプロフィール票の内容で申請してきたのか…っていう風に聞こえる……。
「 どうして?どういうこと?敦賀さんって、本当は結婚する気が無いってこと?でも、じゃあどうしてLMEに登録しているの? 」
疑問は不審に、困惑は不安へと簡単にすげ代わる。
それからすぐ、私は社さんに電話を掛けた。
⇒おふたりさま物語14 へ続く♪
リクエストを頂いていたので、蓮くんの趣味、出してみた♡
ら……(。´・ω・)……予想より長くなっちゃった。
⇒おふたりさま物語◇13・拍手
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