【技術士対策47】ピットに潜むリスク | 新見一郎

新見一郎

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

12月6日、東京都でマンホール内の爆発事故が発生しました。

工事中の作業をしている際に爆発したもので、作業員お二人が亡くなっています。

ご冥福をお祈りいたします。

 

 

この工事は、水道局が発注したもので、マンホール内のハシゴの取り替えを行うものでした。

爆発の原因は、マンホール内に可燃性のガスが充満し、これに着火したとのことです。

これを踏まえると、事故の原因は、以下の3つが想定されます。

 

①    ガス溶接により金属製のハシゴを切断する際、ボンベが爆発した

②    近くに布設されたガス配管が漏洩し、マンホール内に充満して、サンダーにより金属製のハシゴを切断する際に爆発した

③    泥土から自然由来のガスが噴出し、マンホール内に充満して、サンダーにより金属製のハシゴを切断する際に爆発した

 

後日、別のニュースによると、可燃性のガスはメタンガスだったそうです。

都市ガスの主成分はメタンガスです。

メタンガスは、植物が発酵することで生じます。

このため、地中部から発生する場合があります。

ガス溶接で使うガスの主成分は、アセチレンガスやプロパンガスです。

 

以上のことから、まずは、①の可能性が消えます。後日のニュースによると、工事中の作業では火器を使っていなかったそうですから、完全に①の可能性が消えます。

次に、②についてですが、周辺には都市ガスの配管は無かったそうです。

これで②の可能性が消えます。

そうなると、事故の原因は③、地中部からのガスが噴出しに限定されます。

 

東京都のHPによると、マンホールとハシゴが設置されていたのは、水道施設内の管路用の排水ピットでした。

 

https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/press/r04/presss221206-02.html.html

 

水道の管路用の排水ピットに蓄積した泥土からメタンガスが発生したということは、泥土は有機物を含んでいるはずですがから、管路は配水管や場内の配管ではなく、導水管だったと推測されます。

排水ピットの構造を見るに、導水管のドレンから排出された原水を一端ピット内で集水し、一定量になった際、河川に放流されるようなものになっています。雨水浸透を施している場合、泥土がピット内に蓄積することになります。

ピット内に蓄積した泥土が発酵し、メタンガスが発生した場合、メタンガスは、空気よりも軽いため、ガスが上昇し、マンホール蓋周辺に溜っていきます。

メタンガスは無臭なので、認識することができません。

こうした状況下で、ピット内に人が侵入して、ハシゴをサンダーで切断すると、火花が散るため、爆発することになります。

 

『水道維持管理指針』によれば、メタンガスの着火濃度は5%~15%になっています。

薄すぎても濃すぎても、爆発しません。

そして、爆発には酸素が必要です。

つまり、ピット内で作業する際、酸欠防止のため、酸素濃度を測定しているはずですが、これについてはまったく異常がなかったと思われます。

一方、メタンガスについては、異常を確認できなかったということになります。

 

ピット内を含む、地下部での作業に際しては、酸欠だけではなく、硫化水素やメタンガス等の有害ガスの存在にも気を配る必要があります。

こうしたことを背景に、最近の酸素濃度計には、硫化水素やメタンガスの測定機能も付加されています。

この度の事故原因の詳細は不明ですが、この事故を教訓に、民間業者、水道事業者は、安全衛生管理の強化を図る必要がありますね。

 

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