●マネジメントサイクルの確立
これまで『新下水道ビジョン加速戦略』について、いろいろ説明してきましたが、この中で、重点項目として
「マネジメントサイクルの確立」
が掲げられています。
さて、マネジメントサイクルとは何か?
マネジメントサイクルとは、一般的にはPDCAサイクルのことを意味しますが、『新下水道ビジョン加速戦略』では、マネジメントサイクルは、以下の3つをサイクル化にすることだと説明されています。
①計画・設計
②修繕・改築
③維持管理
まず、知っておくべきこととし、「②修繕・改築」の意味です。
「修繕」とは、クラック補修や補修金具や部品交換等です。
つまり、事後保全です。一定レベルまで機能回復は可能です。
一方、「改築」とは、構築物の更新や管渠の更生です。
つまり、予防保全です。
更生は、構造物や管渠の内面を補修した上で、樹脂等でコーティングすることで、新設時と同レベルまで機能回復が可能になります。
そして、「①計画・設計」の意味ですが、「計画」とは、ストックマネジメント計画を意味します。
このストックマネジメントですが、『新下水道ビジョン加速戦略』の中で、以下のように定義されています。
「施設の状況を客観的に把握、評価し、長期的な施設の状態を予測しながら、下水道施設を計画的かつ効率的に管理する」
このため、ストックマネジメント計画という場合は、上記の考え方に基づいて、全ての施設を対象に、いつ、どれくらいの費用で、どの施設を修繕・改築するか決定するか示した長期的な計画を意味します。
この計画を実現可能なものにする必要があります。このため、改築の予定年度を決定するにあたっては、単純に建設年度に耐用年数を加算して決定するのではなく、施設の長寿命化を図り、支出の平準化・抑制に配慮する必要があります。
また、「設計」とは、修繕・改築に関する設計を行うことで、コスト縮減やダウンサイジングを図ることが重要です。
最後に、「③維持管理」ですが、これは、点検や清掃により、施設の状況を確認することを意味します。
これらのことを踏まえて、マネジメントサイクルについて考えてみると、次のようになります。
「ストックマネジメント計画を策定する。修繕・改築を行う。施設の点検を実施して、経過観察をしながら、次回の修繕・改築の時期を見極める。これら情報をストックマネジメント計画に反映する。」
この一連の取組がマネジメントサイクルです。
ちなみに、『新下水道ビジョン加速戦略』では、マネジメントサイクルに関する対応策として、以下のようなことが列挙されています。
・維持管理情報のデータベース化
・マネジメントサイクルに関する基準策定・マニュアル作成
・民間における技術力の維持・向上や業種間連携の促進
・官(地方公共団体)における人材の育成・獲得
・公営企業会計の適用、中長期的な収支見通しや財政計画を活用した計画的な経営
・PPP/PFI の促進、事業の広域化・共同化、省エネ技術の採用等によるコスト縮減の徹底
・受益者負担の原則に基づく適切な使用料の設定、下水道への接続促進
これらを眺めると、修繕・改築を行った後、点検を行った結果が蓄積される体制が整っていないことが課題になっています。ただ、ストックマネジメント自体を確立していない事業体もあるので、まずは、技術的な観点で、施設の修繕・改築の時期を明確にすることが重要です。
なお、マネジメントサイクルの詳細は国土交通省のHPで確認できます。以下でチェックしてください。
www.mlit.go.jp/common/001187085.pdf
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