「題意」に答えるために何をすればいいのか?【技術士対策25】 | 新見一郎

新見一郎

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

技術士の試験で合格するためには、問題文の「題意」に答える必要があります。

 

それでは、「題意」に答えるために一体何をすればいいのでしょうか?

 

 

これを説明する前に、見てもらいたいものがあります。

下の表です。これは以前、僕が作った予想問題の問題文と解答例です。

 

問題文(広域化)

小規模水道の事業運営が難しくなってきている現状を踏まえ、

①複数の小規模水道を事業統合する際の課題を多面的に述べ、

②これら課題のうちあなたが最も重要と考える課題を1つあげ、解決のための技術的提案と、

③あなたの技術的提案がもたらす効果、実行時の留意点について述べよ。

解答例

小分けにした問題文

問題文毎の解答

小規模水道の事業運営が難しくなってきている現状

近年、全国的に少子高齢化が進んでおり、料金収入は減少傾向である。

特に小規模な自治体においては、山間部等に集落が点在して存在する場合が多く、これにより複数の小規模な水道を有しているケースがある。給水人口に対して管路延長が大きく、維持管理の効率性は低い。

また、施設の老朽化が進んでいるが、更新費用の確保が困難であることから、水道システムの機能が損なわれ問題となっている。

①複数の小規模水道を事業統合する際、

こうした小規模な水道が抱える問題を解消する手段として、広域化が有効である。広域化の種類としては、施設の共同化、管理の一体化、経営の一体化、事業統合の4種類があり、ここでは事業統合について述べる。

 

【参考】

①施設の共同化(例えば、県と市が共同で取水場や浄水場を建設する)

②管理の一体化(例えば、市が取水場の運転管理を行い、県が維持管理費の相当分を負担する。例えば、水道局が水道料金だけではなく下水道使用料も含めて徴収する。)

③経営の一体化(例えば、県が複数の用水供給事業を経営。例えば、市が水道事業と複数の簡易水道を経営する。)

④事業統合(例えば、水道事業と簡易水道を統合する。)

課題を多面的に述べ

事業統合する場合、以下のような課題がある。

①施設水準の統一(施設の老朽度が異なる場合、全体の施設について評価を行った上で、適切に更新・補修を行い、レベルの統一を図る必要がある。)

②水道品質の統一(統合前の事業体間で、供給している水道の水質や水圧が異なる場合、目標となる水準を明確にした上で、統一を図る必要がある)

③維持管理レベルの統一(統合前の事業体間で、点検、清掃等の頻度、セキュリティーレベル、水質監視レベル等が異なる場合、統一を図る必要がある。)

④施設の最適化(事業統合により施設数が増大する。統合前と同じ人数で維持管理をしたのでは統合したメリットが得られない。管理する施設数を縮減する必要がある)

⑤料金差の是正(事業体間で水道料金が異なるため、料金アップするエリアの住民説明が必要になる)

②これら課題のうちあなたが最も重要と考える課題を1つあげ、

これら課題のうち、施設数の最適化を進めることは、維持管理の省力化と更新費用の抑制が可能になるため、最も重要である。

 

解決のための技術的提案と

施設の最適化を図るための課題解決策として、複数の小規模浄水場を一か所で統括管理できるよう、中央監視制御装置を整備し、遠隔で施設を集中管理できる体制を整える。

さらに、水需要予測を行った上で、余剰水量が発生する場合、隣接した施設の統廃合を推進する。

③あなたの技術的提案がもたらす効果

その効果としては、中央での集中管理により、施設に常駐していた運転管理要員の人件費を削減できる。施設の統廃合により、維持管理費の抑制、更新費用の抑制が可能になる。

実行時の留意点について述べよ。

実行時の留意点として、中央での集中管理は、インターネット回線を使用することが一般化している。この場合、ウィルス感染や不正アクセスへの対策を万全にする必要がある。

また、施設を無人化した場合、事故発生時に、速やかに技術者が現場出動し、応急対応できる体制を整えておく必要がある。

施設の統廃合は、将来的な水需要予測を実施した上で行わなければならない。また、適切な時期に統廃合を行うため、アセットマネジメントを実施することが不可欠である。

無人化、統廃合によっても、縮減できる施設数は限られている。このため、施設を効率的に管理するため、事業統合にあわせて、官民連携を推進することも重要である。


上表は、左の欄に、問題文を小分けにしたものを記しています。

右の欄には、それぞれ小分けにした問題文について解答を併記しています。
 
これが題意に答えるということです。
もう少し解説します。
 
題意に答えるためには、
①まず、問題文で質問されたこと全てに答える必要があります。
これをやるためには、問題文を読んで、何を質問されているのか、そのポイントを全て列記できるようになる必要があります。
解答者自身が、何を質問されているのか説明できなければならいわけです。
そうでなければ、全ての質問に答えることができないからです。
このため、問題文を小分けにする必要があるわけです。
試験に合格するためには、試験本番でこの作業をやらなければならいです。
当日、ぶっつけ本番でできるなら苦労はしません。
だから、訓練が必要です。
つまり、上表を作成するような作業を、勉強段階でやっておくことが重要になるわけです。
過去問を使って、やってみてください。
これにより、自分が作った解答が合格レベルになっているかどうか客観的に把握することができるはずです。
 
②次に、「この質問へは、こう答えていますよ~」と読者に分かりやすく表現する必要があります。
我々は、質問されていないことについて、長々と説明することがあります。
もしかしたら、自覚がないだけで、多々あるのかもしれません。
日頃の生活であれば、誰かが軌道修正してくれるのでしょうが、試験の場合はそうはいきません。
採点官は減点という指摘をしてくるだけです。
あらゆる記述式試験に共通することですが、採点官というのは、たくさんの受験生の解答を読む必要があります。
大変です。
受験生としては、直接関係ないかもしれないけど、本人としては重要だと思っていることを、ついつい長々と書いてしまします。
ところが、採点官にしてみれば、これは全然うれしくないわけです。
心象が悪くなり、自ずと採点結果も悪くなります。
こうした事態、つまり質問されていないおとを述べるという事態を避けるためには、主語を意識する必要があります。
具体的には、冒頭で、質問されたことをそのまま「●●については、」と述べるのです。
例えば、あなたの技術的提案がもたらす効果について述べよ、という問題文があったとします。
この場合、「その効果については、」からスタートすればいいわけです。
このひと手間だけで、解答は相当わかりやすくなるはずです。
 
題意をつかむ、これができるようになるのは手間がかかります。
でも、題意に答えなていなければ、その解答は得点が低くなります。
このため、勉強する段階で、質問されたことをいくつかのパートに小分けにして、質問されたことをそのまま主語にして文章を書きだす訓練が重要になります。
技術士試験まで、残すところ1か月半。頑張ってください。
 

●技術士試験対策

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●下水道の基礎知識

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