技術士の試験で合格するためには、問題文の「題意」に答える必要があります。
それでは、「題意」に答えるために一体何をすればいいのでしょうか?
これを説明する前に、見てもらいたいものがあります。
下の表です。これは以前、僕が作った予想問題の問題文と解答例です。
問題文(広域化) |
|
小規模水道の事業運営が難しくなってきている現状を踏まえ、 ①複数の小規模水道を事業統合する際の課題を多面的に述べ、 ②これら課題のうちあなたが最も重要と考える課題を1つあげ、解決のための技術的提案と、 ③あなたの技術的提案がもたらす効果、実行時の留意点について述べよ。 |
|
解答例 |
|
小分けにした問題文 |
問題文毎の解答 |
小規模水道の事業運営が難しくなってきている現状 |
近年、全国的に少子高齢化が進んでおり、料金収入は減少傾向である。 特に小規模な自治体においては、山間部等に集落が点在して存在する場合が多く、これにより複数の小規模な水道を有しているケースがある。給水人口に対して管路延長が大きく、維持管理の効率性は低い。 また、施設の老朽化が進んでいるが、更新費用の確保が困難であることから、水道システムの機能が損なわれ問題となっている。 |
①複数の小規模水道を事業統合する際、 |
こうした小規模な水道が抱える問題を解消する手段として、広域化が有効である。広域化の種類としては、施設の共同化、管理の一体化、経営の一体化、事業統合の4種類があり、ここでは事業統合について述べる。
【参考】 ①施設の共同化(例えば、県と市が共同で取水場や浄水場を建設する) ②管理の一体化(例えば、市が取水場の運転管理を行い、県が維持管理費の相当分を負担する。例えば、水道局が水道料金だけではなく下水道使用料も含めて徴収する。) ③経営の一体化(例えば、県が複数の用水供給事業を経営。例えば、市が水道事業と複数の簡易水道を経営する。) ④事業統合(例えば、水道事業と簡易水道を統合する。) |
課題を多面的に述べ |
事業統合する場合、以下のような課題がある。 ①施設水準の統一(施設の老朽度が異なる場合、全体の施設について評価を行った上で、適切に更新・補修を行い、レベルの統一を図る必要がある。) ②水道品質の統一(統合前の事業体間で、供給している水道の水質や水圧が異なる場合、目標となる水準を明確にした上で、統一を図る必要がある) ③維持管理レベルの統一(統合前の事業体間で、点検、清掃等の頻度、セキュリティーレベル、水質監視レベル等が異なる場合、統一を図る必要がある。) ④施設の最適化(事業統合により施設数が増大する。統合前と同じ人数で維持管理をしたのでは統合したメリットが得られない。管理する施設数を縮減する必要がある) ⑤料金差の是正(事業体間で水道料金が異なるため、料金アップするエリアの住民説明が必要になる) |
②これら課題のうちあなたが最も重要と考える課題を1つあげ、 |
これら課題のうち、施設数の最適化を進めることは、維持管理の省力化と更新費用の抑制が可能になるため、最も重要である。
|
解決のための技術的提案と |
施設の最適化を図るための課題解決策として、複数の小規模浄水場を一か所で統括管理できるよう、中央監視制御装置を整備し、遠隔で施設を集中管理できる体制を整える。 さらに、水需要予測を行った上で、余剰水量が発生する場合、隣接した施設の統廃合を推進する。 |
③あなたの技術的提案がもたらす効果 |
その効果としては、中央での集中管理により、施設に常駐していた運転管理要員の人件費を削減できる。施設の統廃合により、維持管理費の抑制、更新費用の抑制が可能になる。 |
実行時の留意点について述べよ。 |
実行時の留意点として、中央での集中管理は、インターネット回線を使用することが一般化している。この場合、ウィルス感染や不正アクセスへの対策を万全にする必要がある。 また、施設を無人化した場合、事故発生時に、速やかに技術者が現場出動し、応急対応できる体制を整えておく必要がある。 施設の統廃合は、将来的な水需要予測を実施した上で行わなければならない。また、適切な時期に統廃合を行うため、アセットマネジメントを実施することが不可欠である。 無人化、統廃合によっても、縮減できる施設数は限られている。このため、施設を効率的に管理するため、事業統合にあわせて、官民連携を推進することも重要である。 |
上表は、左の欄に、問題文を小分けにしたものを記しています。
●技術士試験対策
※ 【技術士対策24】の[観点」を読みたい方は こちら をどうぞ。
※ 【技術士対策24】の「下水道未整備地区」を読みたい方は こちら をどうぞ。
※ 【技術士対策20】の「DXの推進」を読みたい方は こちら をどうぞ。
※ 【技術士対策15】の「PFOS」を読みたい方は こちら をどうぞ。
※ 【技術士対策14】の「海底管」を読みたい方は こちら をどうぞ。
※ 【技術士対策13】の「AIによる更新計画」を読みたい方は こちら をどうぞ。
※ 【技術士対策5】の「コンポスト化」を読みたい方は こちら をどうぞ。
●下水道の基礎知識
※アセットマネジメントとストックマネジメントの違いについては こちら をどうぞ。
※「資源の循環」については こちら をどうぞ。
※「水の循環」については こちら をどうぞ。
※「下水道による排除・処理」については こちら をどうぞ。
※「新下水道ビジョン加速戦略」については こちら をどうぞ。
●技術士の勉強法
※ テキストを見たい方は、 こちら をどうぞ。
●過去問と解答例
※ 令和2年度の試験問題(上水道及び工業用水道)と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。
※ 令和元年度の試験問題(上水道及び工業用水道)と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。
※ 平成30年度の試験問題(上水道及び工業用水道)と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。