【技術士対策14】海底菅 | 技術士を目指す人の会

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勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

 新聞や雑誌で取り上げられた水循環、水道、下水道に関する記事のうち、技術士試験で出題される可能性があるテーマ、継続研鑚の観点から勉強するべきテーマについて解説をしたいと思います。

今回は6月11日付けの『水道産業新聞』からです。テーマは「海底菅」です。

概要は以下のとおりです。 

 

『A―MARINE」が始動/海底送・配水管の事例集作成へ/JWRC

 水道技術研究センター(JWRC)は5月26日、「海底送・配水管の維持管理・更新に関する研究(A―MARINE)プロジェクト」の第1回会議を開催した。来年3月までに、海底送・配水管の維持管理や更新工事、漏水事故・修繕などの手法を整理した事例集をとりまとめる。技術継承や危機管理体制の構築に関する取り組みも盛り込んでいく考えだ。

http://www.suidou.co.jp/200611.htm

 

 

●海底管の種類

海底管は、文字通り、海底に布設した管路です。

島しょ部に給水するため、本土から管路を延伸したものです。

管路の種類としては、鋼管が最も多いです。

ダクタイル鋳鉄管がダメというわけではないのですが、基本的に鋼管を使います。

その理由ですが、鋼管は、溶接接合により一体構造になります。

管路全体で剛性、耐震性を確保できます。

ダクタイル鋳鉄管よりも軽量化を図ることができる点で有利です。

軽量化が重宝される理由ですが、陸地で、管路を布設する場合、数mの管路を吊り下げて、掘削断面内で接合できます。

しかし、海底管の場合、水中こうした作業をすることができません。

このため、船上で接合して、管路を海底に沈めることになります。

この場合、当然、管路が軽い方が良いです。施工しやすいです。

こうしたことから、海底管の場合、ダクタイル鋳鉄管ではなく、鋼管が基本になります。

ちなみに、ポリエチレン管も耐震性を確保でき、軽量です。

海底管として採用することも可能です。

 

●工法の種類

海底管の布設は、少しずつ配管を接合しながら海底に沈めていく方法と、1本に接合した配管を海底に沈める方法に大別できます。

まずは、少しずつ配管する方法です。それが①布設船法です。

この方法は、船上で配管を接合して、海底に沈め、船を移動させる、この繰り返しにより布設を進めていくものです。

工期を短くすることができるのが特徴です。

次に、1本に接合した配管を海底に沈める方法は2つあります。②海底曳航法と③浮遊曳航法です。

まず、②海底曳航法ですが、この方法は、陸地で接合した1本物の配管に、ワイヤー設置して、対岸からウインチによって引っ張ることで布設するものです。この方法は、シンプルですが、対岸から引っ張り終わるまでの期間、1本物の配管を保管する場所が必要になります。

次に、③浮遊曳航法ですが、この方法は、陸上と海上で接合した1本物の配管に浮きを設置して、複数の船で海上を運搬して、沈めるものです。この方法は、費用面も工期の面でも、②海底曳航法より有利です。

 

海底管の布設工法は、①布設船法、②海底曳航法、③浮遊曳航法の3種類あるので、布設する海域等について事前調査を行い、適切な工法を選択する必要があります。

海底菅の布設工法について、詳しくはこちらをどうぞ。

http://www.jwrc-net.or.jp/kenshuu-koushuu/handout/kaitei_sohaisui.html

 

●事前調査

海底菅を布設する場合、以下のようなことを調査する必要があります。

①海面(潮流の方向、流速、波長)

②気象(天候、水温)

③海底の状況(水深、海底の起伏、表層、地質、埋設物の有無)

④両岸の状況(地形、道路状況)

⑤漁業関係

⑥海上交通関係

さらに、設計上、波力、水圧、土圧、浮力等の外力を考慮するべきです。

 

海中にはさまざまな動植物が生息しています。

管路表面への付着物は、管路の腐食につながります。

また、船も渡航します。船がいかりを下ろしたまま運航した場合、海底管にひっかかってしまうことがあります。

このため、外面に、モルタルライニングを施すこともあります。

さらに、こうした影響を回避するため、海底の砂を数メートル掘削して、管路を埋設します。

ただし、海流により埋設した砂が巻き上げられることがあります。

また、大型の船がいかりを下ろしたまま運航した場合、折損事故が発生した事例があります。

水中での溶接も可能性ですが、陸地のように簡単にはいきません。

専門技術を有するダイバーへの依頼が必要ですから、相当苦労することになります。

このため、定期的に海底菅の埋設状況を点検する必要があります。

また、金属管を使う場合、電食にも注意が必要です。電食防止装置を設置する必要があります。

 

●島しょ部への給水

島しょ部において、水道水を確保する方法は、以下の5つです。

 ①島で水源と浄水場を確保して給水

 ②給水船で運搬して配水池に充水して給水

 ③橋梁に添架管

 ④シールド工法

 ⑤海底管 

小さな島の場合、浄水場を建設しても、それは小規模になります。これを有人で管理するのは非効率です。

また、海水の遡上や枯渇により、河川や井戸の安全性、安定性を確保することが困難です。

船は、海上の状況によっては、運航しない場合があります。給水の確実性が低いです。

そこで、本土の浄水場から送水する方法が必要になってきます。

最も一般的なのは、橋梁への添架管です。

管路の点検もできますし、補修・塗装もできます。

比較的安価です。

ただし、その島に橋がかかっていることが前提になります。

島まで距離があり、橋がかけられていない場合は無理です。

それから、シールド工法ですが、海底のレベルより、さらに深い場所でトンネルを整備する必要があります。

このため、本土の地盤高から相当な深さの立坑を確保する必要があります。

施設整備費が高くなります。

それから、管路が大量に布設された1970~80年代、シールド工法は主流ではありませんでした。

このため、比較的安価な海底管の布設が主流だったわけです。

 

●技術士試験対策

技術士試験、上水道及び工業用水道科目で、管路についてこれまでに出題されたことのない論点があります。

以下の4つです。

 ・可とう管

 ・既設管内布設工法

 ・不断水工法

 ・海底菅

海底菅について研究が始まったということは、出題される可能性が高くなってきています。

今年はどうかわかりませんが、来年、再来年は、要チェックですね。

 

●前回の【技術士対策】

※前回を読みたい方は こちら をどうぞ。

 

●必須科目対策に必要な下水道の基礎

※マネジメントサイクルについては こちら をどうぞ。

※アセットマネジメントとストックマネジメントの違いについては こちら をどうぞ。

※「持続と進化」については こちら をどうぞ。

※「資源の循環」については こちら をどうぞ。

※「水の循環」については こちら をどうぞ。

※「下水道による排除・処理」については こちら をどうぞ。

※「新下水道ビジョン加速戦略」については こちら をどうぞ。

 

●試験と解答例

※令和元年の試験問題と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。

 

●試験対策

※ 令和2年の予想問題を見たい方は、 こちら をどうぞ。

※ 技術士合格法のテキストを最初から見たい方は、 こちら をどうぞ。