令和6年版 技術士合格法
技術士勉強法は、以下の1~9章で構成しています。
1章 技術士二次試験の内容
2章 申込書の書き方
3章 技術士のための勉強法
4章 合格者に求められる能力
5章 情報の整理
6勝 解答の作成
7章 本番力を磨く
8章 記憶
9章 道しるべ
このブログは、前年度のものを、少しずつ更新していきます。
このため、昨年度のもので良いのであれば、「こちら」 をクリックして、次から次へと読み進めてください。
更新は文章の修正が大半で、勉強法そのものの内容は、基本的に変わりません。
ただし、5章の一部(予想に係る部分)は、年度によって内容が大きく変わる場合があります。
その点については、ご了承ください。
1 技術士二次試験の内容
(1)技術士について
●技術士とは
技術士は、①豊富な実務経験、②技術の高等応用能力、③高い技術者倫理を有する者です。
経済成長と企業の利益追求を過度に優先すると、公害や企業の不祥事が発生するリスクが高まります。
こうしたことを防止するため、高い技術力だけではなく、高い倫理観を兼ね備えた技術者が求められるようになりました。
そこで、国が技術者に関する資格として創設したのが技術士制度です。
※ 日本技術士会HPより
資格には、業務独占と名称独占の二種類があります。
業務独占は、有資格者のみが行うことのできる業務が法律で指定された資格です。
例えば、医師です。医師免許が無ければ、医療行為を行うことができません。
他にも、弁護士、司法書士、電気工事士等、様々な業務独占の資格があります。
一方、名称独占は、その資格の呼称の利用が法律で制限されている資格です。
業務独占とは異なり、有資格者のみが行うことのできる業務が指定されていません。
技術士は、技術系のコンサルティングに関する名称独占の資格です。
資格を取得しなければ、技術士を名乗ってコンサルティング業務を請け負うことはできません。
ただし、技術士でなければ、コンサルティングを行うことができないわけではありません。
このため、あまり大した資格ではないように見えます。
しかしながら、国や地方自治体が、技術系の検討業務や設計業務等を発注する際、技術士が従事できることを条件に付しているケースが大半です。
つまり、技術士は、事実上、公共事業に係る技術系のコンサルティングを行う上で必要な資格で、業務独占に近い国家資格になのです。
(2)二次試験の構成
●合格までには3つの関門がある
技術士試験は、一次試験と二次試験があります。
このブログでは、技術士試験の二次試験に関する勉強法について述べていきます。
技術士の二次試験には、3つの関門があります。
第一関門は、申込書です。
申込書は、技術士としてふさわしい経歴と業務経験の概要等を記入して提出するものです。
第二関門は、筆記試験です。
筆記試験は、全て記述式です。技術部門全体に関する必須科目と専門分野に関する選択科目で構成されています。
第三関門は、口答試験です。
口頭試験は、試験官からの技術的な質問に答えるものです。
口頭試験をクリアーして、登録を行えば、晴れて技術士の称号を手に入れることができます。
関門の内容 |
実施時期 |
備考 |
|
①申込書 技術士としてふさわしい経歴と業務経験の概要等を記入して提出 |
配布 |
4月1日〜 |
配布場所は(社)日本技術士会 |
受付 |
4月1日 ~4月15日 |
職場の経歴証明が必要 |
|
②筆記試験 技術部門全体と専門分野に関する記述式試験 |
試験 |
7月15日(祝) ※総合技術監理は前日から |
会場は地方毎に指定あり
|
合格発表 |
10月28日頃
|
技術士会のHPで受験番号を公表。合否と評価が郵送。 |
|
③口頭試験 提出された申込書、専門技術、技術士倫理等に関する質疑応答 |
試験 |
11月~1月 |
会場は東京都 |
合格発表 |
3月7日頃 |
技術士会のHP等で受験番号を公表。合否、評価、証書が郵送 |
3つの関門のうち、最も重要なのは、筆記試験です。
二次試験の合格率は16%程度ですが、筆記試験の合格率が20%、口頭試験の合格率は80%程度なので、筆記試験に合格すれば高い確率で合格することができるからです。
筆記試験は全問が記述式の試験ですから、問題文で問われたことを正確に理解し、的確な文書で解答を述べる必要があります。このため、難易度が高いものになっています。
第三関門の口頭試験は、申込書に示した業務について、試験官からの口頭質問に答えるものです。
自らの業務に関する質問なので、筆記試験に比べれば想定質問とその回答を用意するのは容易です。
ところが、不合格になった場合、次の年は筆記試験から受験しなおさなければならないため、これが受験生にとって大きなプレッシャーになります。
予想外の質問をされ、うまく回答できずに焦ってしまった結果、不合格になるケースが見受けられます。
申込書を第一関門に位置付けています。
申込書に示した業務について口頭試験で質問されるからです。
申込書の内容が分かりにくい場合、試験官の心象が悪くなりますし、業務の技術レベルが低い場合、厳しい質問を受けることになります。
そうなると、自ずと合格することが難しくなります。
申込書を記入する時から試験は始まっているわけです。
(3)記述試験の構成
●必須科目と選択科目で構成されている
技術士の技術部門は、上下水道部門、建設部門等、合計21の「部門」があります。
「部門」はいくつかの「分野」に分かれています。
上下水道部門の場合は、上水道及び工業用水道(これ以降、水道と呼ぶ)と下水道、2つの「分野」に分かれています。
技術士の二次試験は、「部門」共通の必須科目と、「分野」毎の選択科目で構成されています。
例えば、水道で受験する場合、必須科目の問題は、上下水道共通のテーマを取り扱ったもので、選択科目の問題は水道の特化したテーマが出題されます。
試験の内容は、R1年度の試験方法の改正以降、下表の太枠のようになっています。
必須科目(下表上段)は、原稿用紙3枚で記述します。
選択科目は、選択Ⅱ(下表中段)と選択Ⅲ(下表下段)で構成されていて、選択Ⅱは原稿用紙3枚、選択Ⅲは原稿用紙3枚、合計の原稿用紙は6枚です。
ちなみに、試験制度の改正は、H19年度、H25年度、R1年度に実施されています。概ね6年おきに改正されていますので、次はR7年度あたりに改正なるかもしれません。
●技術士に求められる能力
技術士に求められる能力については、上表で示されている通りです。
これを見ると、専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力で構成されていることがわかります。
これら4つの能力の定義については、日本技術士会のHPで示されており、具体的には、以下のような内容になっています。
●必須科目について
必須科目は、原稿用紙3枚に解答する試験です。出題される問題は2問で、1問を選んで解答するものです。
必須科目は、2通りの出題スタイルが考えられます。
例えば、上下水道部門の場合、①2問とも上下水道共通のテーマ、②1問は水道のテーマでもう1問は下水道のテーマ、という2種類が想定されます。
R1年度以降の出題スタイルは、①2問とも上下水道共通のテーマでした。今後、どうなるかは分かりませんが、①2問とも上下水道共通のテーマを想定して、上下水道両方について勉強するのが得策です。
必須科目は、「課題解決能力」が「問題解決能力及び課題遂行能力」を問うものです。
「問題」は「解決能力」、「課題」は「遂行能力」という組み合わせになっています。
「問題」と「課題」という言葉が出てきますが、これら2つの言葉を辞書で調べてみると、以下のような意味になっています。
問題=解決すべき事柄、困った事柄
課題=解決しなければならない問題
これを読んでも、問題と課題というのは同じ言葉に思えてしまいます。
しかしながら、技術士試験では、課題と問題という言葉を併記しているわけですから、これらを違う意味でとらえています。
それでは、課題と問題、何が違うのか?
例えば、車のタイヤを考えてみます。タイヤの溝の深さが気になったとします。ディーラーに見てもらったら、「溝が減っていますが、支障ないです」と言われたらどうでしょうか。タイヤが摩耗しているけど、問題ないわけです。
しかし、「溝が減っています。支障があります」と言われたらどうでしょうか。これは問題ありです。
タイヤを交換する必要があります。タイヤを交換すれば正常になります。
つまり、問題解消は、正常な状態に戻すことを意味します。
次に、車の燃費を向上したいと考えている場合です。タイヤの溝が気になって、ディーラーに見てもらったら、「溝が減っています。支障があります」と言われたとします。
この場合、現在装着しているタイヤと同じタイプに交換しても、燃費は劇的に向上しません。
燃費を改善でき材質のタイヤに変更する必要があります。
燃費の向上という目標がある場合、対応が変わってくるわです。
課題に取り組むことは、高いレベルに到達することを意味します。
以上のことを踏まえると、「問題解決能力及び課題遂行能力」とは、「現状で解決するべき問題及び今後取り組むべき課題を示す能力」という意味になります。
●選択Ⅱについて
選択Ⅱは、原稿用紙3枚で解答する試験です。出題スタイルは、①2問解答(1枚+2枚)、②3問解答(1枚×3)の2種類が考えられます。
R1年度以降、①2問解答(1枚+2枚)が採用されています。Ⅱ-1で出題される問題数は4問で、このうち1問を選んで解答します。Ⅱ-2で出題される問題数は2問で、このうち1問を選んで解答します。
選択Ⅱは、「専門知識」と「応用能力」を問うことを目的としています。
現在の選択Ⅱ-1は、専門知識に関する基礎を確かめ、選択Ⅱ-2は、応用能力を確かめる内容になっています。
これは、選択Ⅱの目的に合致しているので、試験制度の大幅改正がない限り、このスタイルが続くと考えて良さそうです。
また、2枚物で解答を準備しておけば、試験本番で1枚物が出題された場合でも、文書をカットすることで対応できるため、試験本番を想定した対策として、①2問解答(1枚+2枚)のスタイルに沿って勉強した方が良いです。
●選択科目Ⅲについて
選択Ⅲは、原稿用紙3枚で解答する試験です。
出題される問題数は2問で、このうち1問を解答するものです。
選択Ⅲは、「問題解決能力及び課題遂行能力」を問うものになっています。
これは必須科目と概ね同じです。
受験生の問題解決能力と課題遂行能力を確認するためには、相応の文字数が必要になることから、選択Ⅲは、今後も引き続き、3枚物になりそうです
方法 |
①1問解答 |
コンセプト |
H25~H30の選択Ⅲの形式 |
解答数 と出題数 |
Ⅲ-1、Ⅲ-2から1問を解答 |
【Ⅰ-1】(3枚物) 【Ⅰ-2】(3枚物) |
●合格ライン
二次試験受験生には試験結果が送付されます。
試験結果に合否判定と一緒に、必須、選択Ⅱ、選択Ⅲの評価が示されています。
評価は3段階で、6割以上できていればA判定、6割未満4割以上がB判定、4割未満がC判定です。
必須科目と選択科目がA判定なら合格です。B判定、C判定がある場合、合格することはできません。
選択科目については、選択Ⅱと選択Ⅲを合わせた全体評価が示されてます。
この全体評価は、選択Ⅱと選択Ⅲの両方がAなら、A判定になりまし、下表の②のように選択Ⅱ又は選択ⅢのいずれかがBの場合、B判定になり不合格になります。
ところが、下表の①のように、どちらかにBが含まれていても、全体評価がA判定になった事例が相当数あります。
こうした事例が発生するのは、試験の難易度が高い場合です。
試験官サイドは、合格者数の調整を行う必要がありますが、採点基準を変更するのは難しいです。
このため、各科目の評価を変えず、下表の①のように全体評価を調整することで、調整を行うわけです。
①Bがあっても合格
必須科目 |
選択科目 |
|
選択Ⅱ |
選択Ⅲ |
|
A |
B |
A |
A |
②Bがあるため不合格
必須科目 |
選択科目 |
|
選択Ⅱ |
選択Ⅲ |
|
A |
B |
A |
B |
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●二次試験の過去問と解答例
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