新聞や雑誌で取り上げられた水循環、水道、下水道に関する記事のうち、技術士試験で出題される可能性があるテーマ、継続研鑚の観点から勉強するべきテーマについて解説をしたいと思います。
今回は『水道公論』の5月号からです。テーマは「下水道未整備地区」です。
■下水道未整備地区の逆襲 …川上周司
2021年5月号 – 日本水道新聞社 (suido-gesuido.co.jp)
画像参照元:国土交通省HP
未普及地域の解消 - 下水道 - 国土交通省 (mlit.go.jp)
●下水とは
下水は、下水道法第2条において、以下のように定義されています。
生活若しくは事業(耕作の事業を除く。)に起因し、若しくは付随する廃水(以下「汚水」という。)又は雨水をいう。
これをざっくり説明すると、
下水とは、汚水と雨水。
となります。
汚水は、人が汚した水です。
雨が降って、山から泥水が流れこみます。
泥水のせいで、川の水は茶色に濁ります。
でも、この泥水は、人が汚したわけではありません。
だから、この泥水は、下水ではありません。
一方、誰かが、コンクリートで造った桝に水と泥を溜めたとします。
成分は、山から流れ出る泥水と同じです。
でも、これは、人が作った泥水です。
だから、下水です。
下水は、そのままで川に流したらダメです。
だから、処理が必要になります。
●下水道とは
下水道は、下水道法上、以下のように定義されています。
下水を排除するために設けられる排水管、排水渠きよその他の排水施設(かんがい排水施設を除く。)、これに接続して下水を処理するために設けられる処理施設(屎し尿浄化槽を除く。)又はこれらの施設を補完するために設けられるポンプ施設、貯留施設その他の施設の総体をいう。
先ほどの、下水の解釈も含めて、下水道をざっくり説明すると、
下水道とは、汚水と雨水を取り除いて集めてから処理する施設。
となります。
排除する施設が管渠で、処理する施設が終末処分場です。
ポンプ場や貯留槽は、排除と処理の補完施設です。
それから、これは余談ですが、下水は、汚水と雨水と構成されていますが、法律上、汚水だけではなく雨水も処理することを前提としています。
法律が整備された当初は、合流式が前提になっているわけです。
現在は分流式を基本にしているので、下水道ビジョンを成立するだけではなく、法律も改正する必要があるのかもしれませんね。
●法律上の下水道以外の下水道
下水道は、汚水と雨水を排除・処理する施設です。
下水道の種類としては、市町単位で運営する公共下水道と、都道府県が流域単位で運営する流域下水道があります。
これらが法律上の下水道です。
下水道は、市街化する地域に整備することになっています。
市街では、汚水が発生しやすいからです。
ただし、汚水は市街以外でも発生します。
環境を保全するためには、市街以外でも汚水を処理して、河川に放流する必要があります。
法律上の下水道以外にも下水道は必要ですし、実際存在します。
例えば、農業集落排水。これは、汚水や雨水を排除・処理する施設です。
それから、合併浄化槽。これは個人が、トイレのし尿と風呂や台所から出る生活雑排水を処理して、河川に放流する施設です。
コミュニティプランは、集落でまとめて、トイレのし尿と風呂や台所から出る生活雑排水を処理して、河川に放流する施設です。
画像参照元:国土交通省HP
下水道と他の汚水処理施設 - 下水道 - 国土交通省 (mlit.go.jp)
●下水道未整備地区
下水道未整備地区とは、下水道が整備されていない地区です。
下水道は、法律上の下水道です。
この法律上の下水道というのは、整備する地域が予め設定されています。
下水道の整備計画が存在するわけです。
このため、下水道未整備地区とは、整備計画が未だに完了していない地区という意味になります。
このフレーズは何となく印象が悪いです。
国土交通省では、下水道未普及地区と言っていますね。
現在、日本の下水道普及率は約80%です。
それから、下水道を整備する地区が存在するのであれば、整備するつもりがない地区というものも存在します。
先ほども説明しましたが、法律上の下水道以外の下水道も存在します。
下水道を整備しない地区でも、農業集落排水、合併浄化槽、コミュニティプラントにより汚水処理は行われています。
下水道に加え、農業集落排水、合併浄化槽、コミュニティプラントが整備された地域の割合を、汚水処理人口普及率と言います。
現在、約91%です。
かなり高い水準です。
でも、残り9%はどうなっているのか?って思いますよね。
残り9%は、単独浄化槽を設けていると思ってください。
単独浄化槽は、トイレのし尿を処理して河川に放流します。
風呂や台所から出る生活雑排水は、そのまま河川に放流されてしまいます。
油や洗剤が含まれています。
全体の量から見れば少ないかもしれませんが、やはり環境汚染につながります。
そう考えると、汚水処理の普及促進が望まれるわけです。
法律上の下水道、農業集落排水、合併浄化槽、コミュニティプラントのうち、最もコンパクトなのは合併浄化槽です。
合併浄化槽の普及促進が、汚水処理人口普及率の向上と、河川の水質保全に繋がります。
というわけで、水道公論5月号の「下水道未整備地区の逆襲」では、阿南工業高等専門学校の川上准教授が、合併浄化槽の普及促進方法について提案をしています。
●合併浄化槽の普及促進方法
その方法ですが、ざっくりと説明しまうす。
浄化槽内部には微生物が生息します。
浄化槽の水質と微生物の活動状態を調査すれば、住民の健康状態や生活様式を把握できる可能性があります。
この情報を、製薬会社、健康食品会社に情報を売却して、その売却益をインセンティブにして合併浄化槽の普及を図るというものです。
面白いですね。
汚水には、利活用できる可能性のある情報が含まれていますし、処理工程でメタンガスというエネルギー源を採取することができます。
今後も注目する必要がありますね。
●技術士試験対策
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●下水道の基礎知識
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