物理ネコ教室011重力中の運動・斜方投射 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 ルネ・デカルトは小さいころ体が弱く、理解ある校長から、朝はいくら寝ていてもいいといわれ、それが生涯の習慣になったそうです。(うちの娘が聞いたら大喜びしそう)

 彼の科学史(また、数学史)での功績は、なんといっても、【解析幾何学】を作ったこと。といっても、理系でない人にはなんのことやらわからないでしょう。

 それまで、別々の数学分野であった【幾何】(図形の数学:例えば、三角形とか四角形を調べる数学)と【代数】(数字の数学:y=f(x)のような数式を扱う数学)を、ある発明によって合体させたのが【解析幾何学】です。

 その発明とは、空間をx軸とy軸によって表現するというもの。これにより、【幾何】の図形を【代数】の数式で表せるようになり、2つの数学が合体したというわけ。(興味をお持ちになられた方は、関連記事「われ思う、ゆえにわれ在り」もご覧ください。関連記事にリンクがあります)

 

 いまの物理学では、当然のように空間をx軸y軸で表して、物体の運動を数式で表していますが、これはすべてデカルトの発明のたまものであります。ニュートンも、自身の物理法則をデカルトの方法で研究しています。ただ、以前書いたことがあるように、当時の学問世界では「ラテン語と幾何学が王道」という伝統があったので、ニュートンの『プリンキピア』はラテン語と幾何学で作られています。

 自分は解析幾何学の数式や、必要に応じてもっと進んだ微分を用いて研究しているのに、出版した本は昔ながらの幾何学と、普通の人には読めない古い言葉であるラテン語で書いたのです。

 このへんは、自分の考えをより多くの人に知ってもらおうと考えて、ラテン語でなく母国語(イタリア語)で本を書いたガリレオとは、大きく異なるところです。ニュートンは権威というものにわりと執着するタイプの人だったんでしょうね。

 

 さて、物理ネコ教室、前回の続きで斜方投射。ななめに投げ出された物体の重力中の運動を【解析幾何学】で見て行きます。

 


 

 1は今まで通り、初速による慣性運動と重力による落下運動の組み合わせで理解できるというお話しですが、そのままで立体的な関係を式にするのはベクトル解析という大学で習う方法が必要になりますので、デカルトのx軸、y軸を利用し、運動を2方向に分解して理解する方法を併用します。

 

 例によって、三角比はこの段階ではオマケです。

 

 2では、初速と加速度を2方向に分解して考え、方向ごとに運動を表す式をつくります。

 初心者が間違うのは、やはり初速と加速度の分解です。その具体的な例については、書きこみのプリントを見ながら説明します。

 

 3は典型的な問題。

 4はまさにデカルトの【解析幾何学】ですね。放物線(数学的には円錐曲線と呼ばれる曲線の1つです)の図形と、yのxについて二次の式が、同等であることを利用しています。

 

 では、書きこみを見て行きましょう。

 

 

 2で、初心者がよくやるミスは、水平方向も鉛直方向も、初速をVoとして式を立てることです。

 物体は斜め方向にVoで飛びだしていますが、x方向にもy方向にも、Voより小さな速度(V1とV2)で飛びだしています。

 でも、式を作るときV1、V2でなくVoを使ってしまう人がいるのは、ケアレスミスではなく、運動を分解して考えるというイメージができていないためでしょうね。

 

 水平投射と同じく、運動の式は、初速による等速度運動の式と自由落下の式の組み合わせになっているのがわかります。

 運動の物理的なイメージがわかってくると、初速による運動の式と自由落下の式をどう足し引きするのかがたやすく判断できるようになり、いわゆる【公式】を暗記する必要がなくなります。

 

 

 3の例題ですが、さきほど書いたとおり、この問題の(2)の式を

 

 Vx=19.6

  x=19.6 t

   Vy=19.6-9.8t

   y=19.6t-1/2・gt^2(t^2はtの2乗を表します)

 

 と書いてしまう人が、初心者には多く見られます。

 

 正解は書きこみの通りです。

 

 自由落下から始まった重力中の運動の基本はここまでです。

 

 物理を学んで最初に見るのがこの運動の問題であることは、科学史の順でもありますが、とくに算数の好きな日本人には、学びやすい順になっています。

 

 物理的なイメージがなくても、とりあえず運動の式を立て(立てられない人は丸暗記でもなんとかなります)、算数の問題として考えれば、さほど苦労なく答が導けるからです。ひらたくいえば、「頭をさほど使わなくても問題が解ける」範囲なんですね。

 

 日本の教育は論理を組みあげるやり方が苦手なので、そういう思考法になれていない学生でも、なんとか結果が残せるのが、ガリレオの等加速度運動の式や重力中の運動の式なんですね。

 

 でも、算数でなんとかなるのは、ここまで。

 

 次の力に入ると、算数の力ではどうしようもなくなります。

 

 数学は自然科学ではないということが、もうすぐ実感できるでしょうね。

 

 もちろん、今までの範囲でも、扱う問題を工夫することで、算数だけではだめということがわかります。次回は、そんな問題を紹介したいと思います。

 

 

<重力中の運動>

 

 

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