ユージ(*1)「コロナで勤務日の振り分けがあって、なかなか会えなかったからね」
ひろじ「水ロケットのイベントはどうなったの」
ユージ「まだしばらくはできない。騒ぎが落ち着くのを待つしかないかな。そのときは、よろしく」
(*1)数学の人。以前、このブログでユージさん製の数学おもちゃをいくつか紹介しています。そのときは「リャン」さんという愛称で紹介しました。関連記事のリンクを参照してください。
ひろじ「いま、数学の用語の歴史とかを調べているんだけど、スカラーって、誰が使い始めたか、知りませんか?」
ユージ「うーん、聞いたことがないなあ」
ひろじ「ベクトルはケプラーの楕円軌道の動径(太陽と惑星を結ぶ線分)を意味する言葉がもとだというのは、バークレー物理学コースに書いてあったんですよ。まあ、もともと物理で使い出した言葉だってのはわかっていたんだけど」
ユージ「そうだね。ベクトルは物理だね」
ひろじ「ケプラーと同時代だと、物理ならガリレオ、数学ならデカルトとか、ネイピアなんですよ。デカルトって、一般には哲学者として有名だけど、数学や自然科学も手を出していますよね。ぼくが知っているのは、空間をx軸、y軸でマス目に仕切って、物体の位置をわかるようにしたのが、デカルトっていう話ですけど」
ユージ「いやいや、デカルトはすごく数学に貢献しているよ。幾何学と代数をくっつけた人だから。今のx軸、y軸で曲線を代数で表せるようになったから、それまで幾何学で扱っていた問題を、代数で解けるようになったんだ」
ひろじ「すると、代数の地位を上げた人ってことですね」
ユージ「そう。昔は幾何学の方が高級な数学という扱いだったけど、デカルトのおかげで代数は幾何学と同等になった」
ひろじ「それがなかったら、いまでも数学ではいっぱい三角形とか描いて問題を解いているわけか。そんなの、気が遠くなる。ニュートンの『プリンキピア』も、代数を使わず幾何学で説明されているので、もう面倒くさいったらない。デカルト様々だなあ」
ユージ「ネイピアは、対数だ。あれもたいした発明だよ」
ひろじ「ケプラーの第3法則も、対数がなかったら見つからなかったでしょうね」
ユージ「ケプラーはネイピアの対数のことは知らなかった、それを知っていたらもっと簡単に見つけられたのに、なんていっているみたいだけど・・・あれは、1.5乗だっけ(*2)」
ひろじ「ケプラーの描いた本には1.5乗と書いてありましたよ」
ユージ「じゃあ、やっぱり、ネイピアの対数を使っているな。両対数グラフを使わないと、1.5乗なんて、出てこない」
ひろじ「そうですね。対数の発見の方が、第3法則より早いから、ケプラーはそれを使っているはずです」
(*2)ケプラーの第3法則は、教科書には【惑星の公転周期の2乗が太陽からの平均距離の3乗に比例する】と書かれていますが、ケプラー本人が書いた本には【惑星の公転周期は太陽からの平均距離の1.5乗に比例する】とあります。両対数グラフで各惑星の公転周期と平均距離の関係をグラフにすると、ほとんど一直線になり、その傾きが1.5になることから、このことがわかります。
ユージ「ネイピアの対数は、計算尺も生んだしね」
ひろじ「ぼく、科学史については、このブログや科探隊シリーズのマンガを描くことで、以前よりかなり強くなったんですけど、数学の歴史はあまり知らないなあ。数学史って分野もあるんですかね」
ユージ「自然科学はそれぞれの研究がつながっているから、科学史も意味があると思うんだけど、数学はどうかなあ。個人個人がぽつんぽつんと研究したのが、あちこちに点在する感じだから・・・」
ひろじ「じゃあ、ぼくは帰りがけに図書室で、数学史の本があるかどうか、調べていきますよ」
・・・てな会話が、先週の週末。
というわけで、冒頭のイラストは、フランスの哲学者にして数学者、ルネ・デカルトであります。
特徴的な人相なので、イラストにするのは、思ったより、カンタンでした。
個性俳優っぽいお顔立ちでありますね。
この頃の肖像画は技術も上がり、ある程度の美化はあるものの、わりと実物に近い写実的なものになっています。
もっとカリカチュアして、特徴を際立たせると、そのままマンガのキャラになりそうです。(いずれ、余裕があるときに、試してみます)
デカルトと言えば、1637年に書いた『方法序説』。
『数学の歴史』ボイヤー著(朝倉書店)によれば、『方法序説』には最初、3つの付録がついていたとか。
『幾何学』『屈折光学』『気象学』の3大付録は、デカルトの後継者(哲学者)たちには難解だったため、その後『方法序説』を出版するときには省かれるようになったということです。
これは、ひどい!
『幾何学』は解析幾何学のコトハジメを書いた本で、幾何学を代数に、代数を幾何学に応用する内容をしっかり書いた本です。数学の人にとっては『方法序説』なんかとは比べものにならないほど、貴重な本でしょうね。
『屈折光学』はスネルが発見したスネルの屈折法則を初めて紹介した本だし、『気象学』は虹がどのようにできるかを定量的に解説しています。こちらは、物理の人にとって貴重な本。
あの有名な言葉【われ思う、ゆえにわれ在り】も、じつは数学的に解釈した方がよさそうです。
【数学の証明が確実であるのと同じように、神の存在も確実である】・・・とは、デカルトの言葉。(もう少し長ったらしいのですが、簡潔にまとめました)
時代背景もありますが、デカルトも、次の世代のニュートンも、神の存在をどう証明するかを考えながら、研究に没頭しています。
なお、ちょっとだけ、おまけを。
デカルトと同時代の数学者には、あのフェルマーもいます。フェルマーはもともと弁護士・政治家が本業で、暇つぶしに数学や科学の問題を考えたということ。
でも、デカルトとは別に、1629年頃には解析幾何学を研究していたそうな。ただ、フェルマーは本をほとんど出版していないので、フェルマーよりデカルトの方が、当時の数学界への影響力は大きかったんでしょうね。
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