物理ネコ教室000物理で使う三角比 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 物理ネコ教室、今回はオマケ的な内容。2年から物理を学ぶ高校なら、やる必要のない内容です。

 物理に必要な最低限度の三角比を、かんたんに紹介します。

 

 ところで、三角比は誰が発明したのでしょうか?

 

 古くは、紀元前2世紀のヒッパルコスが起源ともいわれます。ヒッパルコスの著作は現在残っていないのですが、紀元後2世紀にプトレマイオスが『天文学の偉大な体系』(または『数学的体系』)という本で、ヒッパルコスの三角法について記述しているのです。この頃はまだ三角形ではなく、円や弧を用いた概念だったようです。

 

 この本『天文学の偉大な体系』は、いわゆる中世の【暗黒時代】に、アラブ世界へ輸出された物が逆輸入の形で、ルネサンス期のヨーロッパに紹介されました。このときはアラブでの書名『アルマゲスト』(*1)で紹介され、それが有名なタイトルとして残ったという話です。(*2)

 

 サインはそのとき、アラブ語で表されていた名称をラテン語に翻訳しなおすときにサインによくにた言葉になり、それが最終的に(どのタイミングかは知りませんが)現在のsineという言葉になったということです。

 cosineは【直角三角形のもう一つの角(数学の用語では余角)のサイン】という意味の言葉を縮めて作られたものです。

 

 三角比は天文学にとっては遠くの距離を測るために必須の知識なので、プトレマイオスやその弟子たちが三角比を研究したのは、当然のなりゆきですね。

 

 最終的にはニュートンやオイラーに引き継がれ、現代的な三角比の記号や扱いは、この頃完成したそうです。

 

 前置きが長くなりましたが、では、物理学で使う三角比のおさらいをしてみましょう。

 

 

 

 今回はオマケ的な内容なので、書きこむところはありません。

 

 数学の教科書のように、いきなりsinθ=b/cとか、cosθ=a/cとか書かれると、はじめて三角比を学ぶ人は、混乱します。物理では、とにかく三角形の辺の比とsinなどの記号がつながればいいので、余分な数式はじゃまです。

 

 ぼくは、このプリントにあるように、【角30°の直角三角形のタテ/ナナメ】などの書き方で、具体的な計算をしてみせてから、「ながったらしい名前なので、数学の人がこれを【角30°のsine】と名づけ、記号【sin30°】と書くようになった」と解説しています。

 

 sinθが1つのまとまった記号であることが、初心者にはそもそもわかりにくいですよね。

 

 なお、昔、数学で三角比を習うときには、たいていの先生が筆記体で記号を書いていましたので、それから派生する不思議な覚え方がありました。それが、プリント中段の※印の説明。筆記体のs、c、tの形を三角形にむりやり当てはめて覚えるやり方です。ぼくもこのやり方で教わりました。

 今の数学で、この筆記体で覚える方法が使われているかどうかは知りません。

 というのは、かなり前から、中学でも高校でも、英語の講座でアルファベットの筆記体を教えなくなったからです。

 

 2.の三角比の公式も、物理の問題を解くときに必要なものに限定しています。当面はこの2つの公式があれば、なんとかなります。

 

 

3.は、三角比の値の範囲です。数学的な内容とはいえ、具体的な自然現象を扱うとき、この性質を知っていると間違いが少なくなります。

 

4.は、これまで見てきた物理現象のケースで、一般の角θを用いた時、三角比を使ってどう表せるか、ということを解説しています。

 角度θを説明するのにtanθの値を用いるのはよく用いられる方法なので、覚えておきましょう。

 

 

【追記】(2022.5.27)

 物理を1年から教える高校の場合、三角比を最初に教えると、物理をやっているのか数学をやっているのかわからなくなり、混乱します。少なくとも、最初の2〜3ヶ月は、三角比なしで、物理現象の理解に集中したいものです。

 理想的なのは、重力中の運動で水平投射や斜方投射に入る前に三角比を入れるパターンですが、講座進行のペーストの兼ね合いで、後にずらすことも多々あります。

 講座ナンバーが013と、少し遅めになっているのは、そうした事情です。しかし、時間に余湯があれば、水平投射の前に説明したいですね。

 今回、その理想的なタイミングで使えるように、従来のプリントを修正しました。それに伴い、記事の説明も大幅に辺超しました。

 

(*1)アルマゲストの詳細については、関連記事の記事「地動説の系譜2 プトレマイオス』をご覧ください。

(*2)参考:『図説科学・技術の歴史 上』平田寛著(朝倉書店)

 

 

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