物理ネコ教室281核エネルギー | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 湯川秀樹が中間子理論により、日本人初のノーベル賞を受賞したのは1949年のこと。1935年に発表した核力と中間子の論文で。敗戦で打ちのめされていた日本人にとっても、大いに元気づけられるできごとでした。

 いよいよ、素粒子の世界へ入っていきます。

 

 

 素粒子と核反応に関しては、高校ではそれほど難しい話題は登場しません。

 

 1の「ユカワメソン(ユカワの中間子)」は、素粒子時代の幕開けを告げる発見でした。第二次世界大戦で世界標準の物理学研究から孤立していた日本で、湯川の中間子理論のようなすぐれた業績が生まれたことは、世界の関係者の驚嘆を呼びました。戦後、最初に開かれた物理学の国際会議が日本で行われたのは、世界中の科学者から日本の研究者に対するエールの意味が込められていたといわれます。

 

 2の保存量は、宇宙で揺るぎのない4つの保存量をあげてもらいます。じつは、どれも今までの高校物理で習った保存量ばかりなので、本当は答えられないといけないのですが・・・

 

 今までの経験では、そのうち3つまでは、高校生でもちょっと考えれば思いつきます。

 

 3は高校レベルの核エネルギー計算です。

 

 それほど難しくありませんが、慣れていないので、高校生にとっては、すこし練習しないと、問題を解くのは難しいでしょう。

 

 4は核エネルギーを結合エネルギーから求める計算方法ですが、前回指摘したように、高校の教科書には、プリントのグラフではなく、結合エネルギーのグラフが使われています。上下を逆にしただけなので、計算自体はやりかたを覚えればできるようになりますが、その意味はわかりませんね。プリントのグラフなら、エネルギーが下がる分が核エネルギーとして解放されるのがよくわかります。

 イメージ的には、重力の位置エネルギーに相当するグラフがプリントのグラフで、位置エネルギーが下がった分は運動エネルギーとして「解放」される、といったところです。

 

 ところで、核反応で解放される核エネルギーですが、具体的には、生成した新粒子の運動エネルギーとなります。スゴイ勢いで新粒子が飛び散ることになりますね。

 

 では、書き込みを見て行きましょう。

 

 

1【中間子理論と核力の正体】

 書き込みの通りなのですが、湯川論文のすごさは、核力の形を数式化しただけでなく、その核力のエネルギーに相当する質量の第3の粒子が、陽子と中性子の間でキャッチボールされて核力を伝達していると発想したことです。のち、湯川自身が「欧米はイエスかノーの2択だが、日本には3すくみのジャンケンがある」と述懐しています。

 第3の粒子は陽子や中性子ほど重くないが、電子よりはずっと重い粒子で、湯川は「中間子(メソン)」と名づけました。

 力の伝達が粒子によって行われるというイメージは、これ以降、素粒子の世界では基本的な考え方になっていきます。

 そして、十年ほど経って、湯川の予言したのと同じ質量の粒子が発見され、「湯川の中間子」は一躍有名になりました。現在でも「ユカワメソン」という通称が使われるほどです。

 

2【核反応の保存量】

 核反応のようなエネルギーレベルの高い反応でも、守られている保存法則が4つあります。

 プリントの表の順だと・・・

 まず、核子数の保存。これは、α崩壊・β崩壊のさいにさらりと教えた内容なので、さすがに「保存則」というイメージは固まっていないようです。高校生が答えられないのは、これ。

 それから、電荷数の保存。これはもっと端的に、電荷の保存といったほうがわかりやすいでしょう。電荷の保存については、思いつく生徒がけっこういます。

 3つめがエネルギーの保存。これに続いて「質量の保存」と答える生徒が必ずいますが、残念ながら、エネルギー保存と質量保存は、アインシュタインのE=mc^2により、同じ法則ですので、一つにまとめておきます。

 4つめは運動量。これは、よく勉強している生徒なら答えられますね。

 

3【核エネルギー】

 質量欠損とE=mc^2を用いて、さらに粒子の運動エネルギーも含めて、エネルギー保存を用いる例題です。もちろん、粒子の衝突に関して、運動量も保存されますから、入試問題ではそれも含めた問題が出題されます。

 といっても、難しいのは、エネルギーをジュール(J)で計算せず、(MeV)で計算することくらいです。何問か練習して計算になれれば、それほど難しい問題ではありません。

 

 

 

4【核エネルギーと結合エネルギー】

 結合エネルギーを利用して、核反応のエネルギーを計算する方法です。化学の「ヘスの法則」に似た計算方法ですね。ここでも(MeV)が登場しますが、(J)では数値の桁が小さすぎるので、素粒子の世界では(MeV)を用いるのが普通です。

 問題の解法は、書き込みを見ていただければ、それほど難しくないのがわかるでしょう。

 

 

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