半減期の正体を探るオマケのプリントです。
この補助プリントを丁寧に読んでいただければ、話の流れが見えてくると思います。
ホモ・サピエンスが新人類ホモ・グリーンピース(冗談)になる現象を、放射性崩壊現象に例えたプリントです。
ホモ・グリーンピースの謎めいたお話は、ぼくのオリジナルですが、放射性崩壊の数学ルールを理解する上で、「相互作用か、内的原因か」という部分を理解する一助として考えたものです。
まず、プリントをご覧ください。
ホモ・サピエンスがある時期から新人類へ進化し、1日で9人に1人が新人類ホモ・グリーンピースに変わる現象が起きるものとして、計算しています。プリントをご覧ください。
ここで前提にしているホモ・グリーンピースへの進化現象は、次の基本原理によって生じているものとしています。
(1)感染性(つまり相互作用)によるものではなく、内因性(原子自体がもつ性質)のものであること。
(2)それが確率によって支配されていること。
プリントの例でいえば、1日に9人に1人が新人類に移行する割合なので、それで少し試算してみましょう。
最初の集団の人数が9人なら、
Δt=1日、ーΔN=新人類になることで人類が減る数=ー1人
一日当たり人類が減る割合ーΔN/Δt=ー1/1=ー1(人/日)
最初の集団の人数が90人なら、当然新人類に移行する数は10倍になりますから、
Δt=1日、ーΔN=ー10人
ーΔN/Δt=ー10/1=ー10(人/日)
最初の集団の人数が900人なら、移行する数は100倍の100人ですから、
Δt=1日、ーΔN=ー100人
ーΔN/Δt=ー100/1=ー100(人/日)
これらから、単純に、人類の減る割合ーΔN/Δtは最初の集団の数Nに比例することがわかりますから、その比例定数をλとおけば、
ーΔN/Δt=λN
と書けます。(ホモ・グリーンピースになる現象では、λ=1/9です)
自然放射性崩壊現象も、伝染性がなく、原子自身に崩壊の原因があり、それが確率的な法則にしたがっているとすると、新人類に移行する人類の場合と同様な式が成立することになります。
ーΔN/Δt=λN
この場合は、Nは放射性原子の数で、ーΔN/Δtが単位時間に放射性崩壊を起こして他の原子に変わるためにもとの原子の減る割合にあたります。
微分形式で書けば、
ーdN/dt=λN
ここまでくれば、プリントにあるように、変数分離法で積分して、Nの関数を求めることができます。
N/No=e^(ーλt)(eのーλt乗:eは自然対数の底【ネイピア数】2.718・・・)
この段階では、まだ半減期Tは登場しません。
2の式に出てくるλは、放射性崩壊現象の「崩壊定数」と呼ばれる値になります。
これを数字「2」を使って書き直すと、半減期Tが登場します。
それは、後半のプリントでご覧ください。
3のように、式を変形すると、崩壊定数λの逆数1/λが、放射性原子の量がもとの量の1/eになる時間、つまり「e分の1減期」にあたることがわかります。
4のように、数学的にlogをうまく用いて、この「1/e」を「1/2」に置き換える操作をすると、高校の教科書に登場する「半減期」を使った式に変形できます。
半減期T=log2/λであることもわかりますね。
同様な変形は「1/3」や「1/4」を使っても可能なので、半減期のかわりに3分の1減期、4分の1減期を用いた式を使うことも可能です。
ここで、重要なことは、N/Noを表す式は1/eを用いようが、1/2を用いようが、1/3を用いようが、すべて同じグラフを表すものである、ということです。
3(a)のグラフと4(b)のグラフは、全く同じものなんですね。
半減期を用いた放射性崩壊の式は、原子の減り方が指数関数的であるということを、人間の感覚で半分になる期間(半減期)を用いて数学的に表現したものです。自然のルールの中に、半減期という特別な物理量が存在するわけではありません。誤解しやすいところですので、気をつけておきましょう。
高校の教科書には、この辺の話は書いてありませんが、数学的にも物理的にも、おさえておきたいことではないでしょうか。
では、今回はこのへんで。
次回からいよいよ、量子論に突入します。
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