ドイツのアルバート・アインシュタインを知らない人はまずいません。20世紀最高の物理学者ですが、一般世界での知名度も高い。特殊相対性理論と一般相対性理論は、物理学の革命です。
ユダヤ人迫害のため、アメリカに移住し、プリンストン大学で研究室をかまえました。アインシュタインの部屋の扉には、だれでもすきなときに部屋を訪れてよいことが書かれていたそうです。
逸話が山ほどあるので、とてもここでは紹介しきれません。別記事の「アインシュタイン度チェック」をやっていただくと、その一端が見えてくるかもしれません。
光の粒子説を発表し、プランクと共に量子力学の扉を開いたアインシュタインでしたが、量子力学の研究が進み、マックス・ボルンの確率解釈が登場すると、批判的な立場になります。これ以降の話もまた、おもしろい物語になっているのですが、こちらも別の機会に。
では、光電効果の測定装置とそのしくみについて見て行きましょう。
箔検電器の光電効果実験では、飛び出す電子のエネルギーが測れません。また、紫外線なら電子が飛び出すが、可視光では飛び出さないというような単純な比較はできますが、限界振動数をどう測定するかという問題も残ります。
これらの問題を解決したのが、1の図の測定装置です。
光を当てる金属(図のC)を真空管の中に入れ、飛びだした電子を受け止めるための金属部品(図のP)を入れます。CP間にはたくさんの電池と抵抗をおきます。
抵抗に触れる端子は、ぐるっと回路を回ると、直列電池の中央につないであります。これがこの装置の要の一つ。
抵抗の真ん中と直列電池の真ん中はちょうど電位が同じになります。直列電池の真ん中はアースしてありますから、電位は0。だから、抵抗の真ん中も電位は0です。
さて、端子を電位の高い側(図のアの方向)へ移動させると、端子の電位はプラスになります。端子を電位の低い側(図のイの方向)へ移動させると、端子の電位はマイナスになります。
端子に直結されている金属部品Pも、それに伴って、電位がプラスになったりマイナスになったりできます。光電効果を起こす金属板Cはアースされていますから、PとCの電位差をプラスマイナス自由に変化できることになりますね。
金属板を飛びだした電子はマイナスの電荷を持っていますから、Pの電位がマイナスだと、Pには近づきにくくなります。運動エネルギーが、Pに近づくにつれ、静電気力による位置エネルギー(静電エネルギー)に変わっていくためです。
電位をさらに大きくする(Pのマイナス電位をさらに下げていく)と、やがて、電子はPに到達できなくなります。この時の電位から電子の静電エネルギーがわかりますから、電子が金属板をとびだしたときの運動エネルギーもわかることになります。
当てる光の振動数は光源を何種類か変えることで行います。
光源のそばについている絞りは、光量を調節するためのものですね。
飛び出す電子のエネルギーは、電子がPに届かなくなるときのPの電位からわかりますが、飛び出す電子の数はどうやって数えるのでしょうか。
電子は非常に小さいので、見ることができません。
しかし、電子1個が電気素量と呼ばれる最小の電気量を持っていることはすでにわかっていますので、Pに届いた電子が回路を流れるとき、電流計によって電流値を測定すれば、その電流値から一秒間に通過する電子数、つまり、一秒間に金属から飛びだしてPに届く電子数を知ることができるのです。(この時の電流は光によって金属板から飛びだした電子がつくるので、光電流と呼ばれますが、これもただの名称で、光電流という特別な電流があるわけではありません)
さて、Pの電位をプラスにしたときはどうなるでしょうか。
金属板を飛びだす電子の向きはさまざまですので、どれもがPに届くわけではありません。しかし、Pの電位をプラスにしてだんだん大きくしていくと、マイナス電荷の電子はPC間の電場に力を受けて、Pに向かって引っぱられ、Pに飛び込む数が増えていきます。Pの電位をプラス側でさらに増やしていくと、金属板から飛びだした電子がすべてPに飛び込むようになります。これが電子数の最大値ですので、これ以上Pの電位を増やしても、回路に流れる電流値は変わりません(飽和してしまいます)。
数式を使わずに、だいたいのしくみを話すと、こんなところですね。
4は、この装置の測定結果をグラフにしたものです。
1つめは、光電効果の実験ではもっとも重要なグラフ。グラフの傾きからプランク定数が、グラフの切片から、金属の仕事関数と限界振動数がわかります。
2つめは、阻止電圧がわかるグラフ。
では、書き込みを見て行きましょう。
2(1)のグラフに書いたコメントを見てください。図2のPの電位のーVoは、阻止電圧。金属板Cを飛びだした電子がPに届かなくなるときのPの電位です。
その横の数式の通り、エネルギー保存則を用いて、阻止電圧Voから、飛び出す電子の運動エネルギーの最大値Koがわかります。
(2)グラフが飽和する理由はすでに説明しました。プリントの答は簡単に書いてあります。詳しくいえば、Pの電位をプラス側で上げていくことで、金属板から飛びだした電子すべてがPに飛び込むようになるのですが、それ以上Pの電位を上げても、金属板から飛びだした電子数は飛び込んできた光子の数以上にはなりませんから、飽和してしまうわけです。
3でエレクトロンボルトという単位を紹介しています。素粒子の世界でエネルギーを測るときの便宜的な単位です。たいした内容ではないのですが、のちのち重要になるので、このへんでオマケ的に紹介しています。
では、後半を。
4(1)のグラフと式は、光電効果を象徴するものです。
当てる光の振動数を変えても、グラフの傾き(プランク定数h)は変わりません。
K=hνーWの式を見れば、明らかでしょう。
ν=0の実験は不可能なので、幾つかの実験結果をグラフに点で書き込み、それを直線でつないで、その直線がKo軸とぶつかる場所が、仕事関数Wを教えてくれます。また、Ko=0になるνの値が、限界振動数になります。
4(1)の下のグラフは前半で見たグラフと同じものですが、振動数を大きくすると光子のエネルギーが増えるので、当然、阻止電圧も大きくなることを示しました。そのため、グラフが点線のように変わります。
(2)のグラフでは、光の振動数はそのままで、光の強さを明るくしたときの実験結果を示しています。光子の数が増えるので、飛び出す電子の数も増え、光電流の飽和値も増えます。
光電効果の実験結果のグラフを解釈するのは、入試問題の定番ですので、よく理解しておきましょう。
では、今日はこのへんで。
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