頼久寺庭園 高梁市

 

 

 旅好きな人は世の中にいくらでもいるが、その目的となるとさまざまだろう。一番多いのは景色と温泉とおいしいものだろうか。私もその中の一人となるが、少し違うのはたいていもう一つはっきりした目的のある事が多かった。歴史や文学・美術の分野で私が関心を持つ人物や出来事に関係したところを訪ねる旅が多かったと言える。

 

 旅は何と言っても非日常の世界、列車の窓から眺める非日常の景色だけでも十分楽しい上に初めての土地にはおいしいものがいろいろある。今は居酒屋ライターの大御所のようになった太田和彦さんがまだ若かったころ書いた「居酒屋大全」「ニッポン居酒屋放浪記」はいつも私の旅の友だった。

 

 少し格好をつければ「私の旅は過去との対話」と言えるかもしれない。関心を持つ人物や出来事に関係した土地を訪ねては何かを知り、感じたりする。そして時には拙い文章になったりする。それにいくつもの写真を添えて公開することが容易になった時代の進展には大いに感謝、感謝。

 

 かくて出来上がったブログ上の私の本の第2号が『旅に出て』である(第1号は 「會津八一の歌碑」)。本と言ってもすでに掲載した文章から選び、目次を作り、リンクをつけただけだが、それなりに時間はかかった。続いて第3号 4号も作るつもりだが、「本を作る」に書いたように、時間をかけてまとめた文章が忘れ去られ、埋もれてしまうことが少なくなり、新しい読者を得ることになれば筆者としては大きな喜びである。

 

 

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奈良にて

秋の奈良にて…鹿鳴呦呦・薬師寺の月・滝坂道の柿 の3篇

柿くへば…法隆寺に建つ正岡子規の有名な句碑について考えた人たち

法隆寺西の里…法隆寺西の里の風景と藤ノ木古墳について

 

石の仏たち

滝坂道の春…奈良と柳生を結ぶ滝坂道で出会った石の仏たち

浄瑠璃寺の春…浄瑠璃寺と当尾の里の石仏たちを訪ねた時のこと

驚きの国東半島…独自の仏教文化の栄えた国東半島(大分県)を訪ねて

 

独り往く

独往の人…書・短歌・美術史研究に生涯独自の道を歩んだ會津八一

落合の秋艸堂…落合(東京)の2か所の秋艸堂と會津八一の姿を尋ねて

山鳩の声…戦災で故郷新潟に帰った會津八一、養女きい子を失った悲しみ

 

八尾から杉津へ

風の盆…おわら風の盆を訪ねた時の感動。髙橋治の小説に導かれて杉津駅の跡へ

杉津駅のこと…今はない北陸本線杉津駅の在りし日の風景を求めて

杉津駅再び…北陸道のパーキングになっている旧杉津駅のこと

 

旅する柳田國男

ナニャドヤラ…三陸海岸を南から辿った柳田國男が最後の集落で見たのは

椎葉村と柳田國男…今でも秘境の椎葉村(宮崎県)を訪ねて柳田國男が知ったこと

 

彫刻家と自然

彫刻家のバイブル…若い彫刻家によく読まれた高村光太郎訳の「ロダンの言葉」

ロダン・高村光太郎と自然…ロダン・光太郎が強調した彫刻における自然について

碌山美術館と私…日本近代彫刻の確かな一歩となった荻原碌山の美術館と私のこと

 

清貧を求めて

捨ててこそ…遊行寺の別時念仏会と兵庫観音堂での一遍上人の最期について

玉島の良寛…故郷新潟から遥かな玉島で師国仙和尚のもと修行する青年僧良寛

円通寺にて…新緑の円通寺(玉島)境内に建つ良寛の漢詩碑を読み解く

石の街 アッシジ…清貧に徹した聖フランチェスコゆかりのアッシジを訪ねる

 

津軽にて

太宰と津軽と酒…作品「津軽」にみる太宰治と酒をめぐって

津軽が輝いた時…津軽半島の北の方に位置する十三湊が世界への窓口だった頃のこと

青森の一夜…津軽三味線と酒の店で今は亡き友と過した青森の一夜を想う

 

おいしいものを

今津で鴨を…琵琶湖の北西今津の宿で評判の鴨すきを食べた時のこと

夢の居酒屋…何もかも不自由だった戦時中に理想の居酒屋を夢見た人の話

雪の只見線・会津…冬の只見線の雪景色と会津若松の小さな居酒屋での一夜