前回の記事
‐シリーズ・朝鮮近代史を振り返る その10(ついに日清戦争が勃発する)‐
・朝野に広がる憎悪 「無知」は自身を侵食させる弱さである
現在、日韓関係や日朝関係を語る上において、多くの人々が「無知や思い込み」を正当化するために、またそれを「生業」として利用する人たちによって、『嫌韓』『憎朝』世論なるものが構成されている。
上述の「負の循環」が、この国をより息苦しく腐った方向へと導きつづけている。
ハッキリ言って、世の中の物事をバカにしきっていると思います。
上述における、ポール・クレイグ・ロバーツ氏がご指摘する通りのことが、今日本で「右左中」問わず起きていて、私はすべてに掣肘を加えたい。
単なる自我を満足させるために、「惰性」でニュースを見るんじゃないよと。
昨今の世論や、近隣諸国に関する露骨な憎悪の剥き出しは、内面的であれ表出的であれ、私たちが暮らす日本社会で確実に根をはっている。
無論、煽動をおこなう官はもとより、社会一般層における「ひろがり」の方が、事態をより深刻化させ、もともとアジア諸国に関する、植え付けによる不信や憎悪が「ベース」にあって、社会におけるマイナス方向の「作用因」となっています。
そもそも、世界は私たちが想像する以上に複雑だし、これらに対する「畏れ」と「敬意」が欠如していると考える。だからMichikoさんは、独学で英語を習得し、それを手段としてアメリカ政治(その他海外ニュース含め)へ能動的にコミットし、私自身を含め、一般人が「大マスコミ」の情報だけで満足する傍ら、より込み入った議論や、深掘りする情報収集を厭わない。
こう言っては、「ちゃぶ台返し」のように聞こえるかもしれませんが、人の話を聞かない大衆にはあまり期待していない。
要は彼らは、市井の物事を、自分たちの「理解したい世界観」に、何とか落とし込みたいわけだ。メディアや有名人がこう言ってるから、そういうフィルターだけで「情報の価値」を決め、私としては「その人が如何に行動してきたのか」、より確からしい情報を集めるために、どれだけ真剣に向き合ってきたのか。是々非々で、思惟の連続を貫徹しなければならないと思うのです。
現実は、容易に自らの認識を「超えてくる」が、主に拙ブログでは、友人から伝わる在日社会のことや、ご親戚が暮らす北朝鮮の話、さらには英語ブロガーMichikoさんの海外情報、そして自身が勉強してきた東洋史に関する知識を頼りに記事を書かせていただいておりますが、とりわけブログタイトルにもあるように、私のブログは「歴史的側面」から、現代の北東アジア情勢や国内の社会問題へのアプローチを試みている。
・根底にある アジア諸国に対する「優越思考」
2014年ごろの記事で、当時のMichikoさんのコメントによると、明治維新後に「日本人は、近代にいち早く西洋人の仲間入りをして、名誉白人にしてもらったら、あとはハシゴを外して、ほかのアジア人が登って来れないように、自分たちだけが名誉白人でいられるように、小狡く立ち回ってきました」と、鋭く指摘されております。
つまり、それが現代にいたる「日本人の精神構造」にも深い影響を与えていて、そうやって「ほかのアジア人との差別化」に精を出し、いそしんできた彼らにとって、Michikoさんは「川の流れが一定のものを完全に洗い流すには、ある程度の時間がかかるのと同じように、今でもそれを完全になくすというところまではいっておりません」と、「自分がアジア人だという自覚はゼロである。けれどもなぜか見た目は堂々のアジア人であるし、国全体で漢字を使っている。そういう非常にあいまいな、どちらともいえない、そういうわけのわからない鵺のような存在が、今の日本人でしょう」と結論づけられました。
‐韓国が天皇を「日王」と呼ぶ理由(中国と日本における文明比較の話)その1-
‐韓国が天皇を「日王」と呼ぶ理由(中国と日本における文明比較の話)その2‐
また、こちらにおいて「日本がアジアのリーダー」と、恥ずかしげもなく叫んでしまう痛い支持者含め、根底に、東アジアに関する歴史教育の不十分性とそれに関する思考時間の短さも相まって、上述を含めた近代の優越思想と複合的に折り重なった「日本人の精神」なるものは、いかに固陋で厄介なものかは、実にさまざまな場面で出くわしてきた。
自分自身の役目としては、そうした「諸々の膿」を出していく作業をしなければならないと思います。これをキッチリやらない限り、日本はどんどん内向きな国家となり、頽落した社会に突っ走ることになります。
・日本における侵略思想の淵源
薩長下級士族出身の明治政府の専制支配者たちが、『征韓論』にみられるように、自らの主導権のもとに民衆を抑え込みながら、上からの「近代化」を遂行し、そこから生じる矛盾の解消手段を「近隣諸国の侵略主義」に求める基本方針を、はやくからとっていたことは周知の事実です。
民間にあって、そのような「上からの近代化コース」を推し進めていくイデオローグの役割を果たし、そのために国内にある封建的要素を思い切って切り捨てることを主張してきた福沢諭吉なども、同様の国益本位の観点で朝鮮問題に接近し、殊に『脱亜論』以後は露骨な侵略主義を煽り立てていた。
‐シリーズ・朝鮮近代史を振り返る その7(開化派と甲申政変)‐
『탈아론이 게재된 지지(時事)신보. 당시의 신문이 게이오의숙(慶応義塾) 도서관에 보존되어 있다.<脱亜論が掲載された時事新報。当時の新聞が慶應義塾図書館に保存されている。>』 (dongA.com『[역사는 살아있다/청일전쟁]기억을 만드는것<「歴史は生きている/清日戦争]記憶をつくるもの>』記事より)
http://www.donga.com/news/View?gid=8483332&date=20070828
『朝鮮の歴史 朝鮮史研究会編 編集代表 旗田巍』 三省堂 171頁より
一方、明治10年代の日本には「専制権力と激しく対立」する自由民権運動にしろ、国内でのブルジョア民主主義の本格的確立をめざして「第二革命」を呼号するほど、厳しいたたかいの中にありましたが、その論理を専制権力の対外侵略政策の領域に適用・批判するゆとりも持たぬまま、やがて専制権力側に切り崩されてしまった歴史があります。
専制権力の切り崩しの手段は、猛烈な物理的弾圧と「民権をめぐって内輪揉もめするより外に国権を伸ばすことが先だ」という論理でした。
貧農民権派は、1884年を境に前者によって沈黙を強いられた。
一方、士族民権派・豪農民権派は、1890年代までには、天皇制イデオロギーと憲法ないし議会を枠組みとする専制体制内に組み込まれ、民権論者から国権論者に転向して、むしろ極端な侵略主義者に染まった場合が多い。
そうした「転向の軌跡」の例は、防穀令事件の「解決」のために進んで脅迫外交の戦闘にたった自由党の大石正巳(おおいしまさみ)や、後の『閔妃惨殺事件』参加者のうちの何人かと少なくないが、福岡の士族民権派の流れをくむ、玄洋社の内田良平を中心に編成された『天佑侠』の行動に、最も鮮明にあらわれています。
※防穀令に関する記事
‐シリーズ・朝鮮近代史を振り返る その8(日本資本主義は「朝鮮の犠牲」の上に成立した)‐
『同』 174頁より
‐シリーズ・朝鮮近代史を振り返る その9(日本で巷にいわれる『東学党の乱』について)‐
『天佑侠』とは、甲午農民反乱の際に、朝鮮に渡っていった十数名の「壮士くずれ」集団で、俗説では農民軍に参加して奮戦したと称されていたが、それは彼ら自身らがのちに創作した伝説に過ぎず、実は「日本と清国の衝突のきっかけ」をつくり、農民軍をそのために利用する目的で出かけていった自発的謀略部隊というべきものでした。
つまり、後のいわゆる『大陸浪人』のはしりのような存在だった。
かつては、国内の民権のためにたたかったこともある人々が、いまや「痛快なる冒険」を求めて、侵略の国策の最先端にたつようになったのです。
こうした官民一体の「侵略思想」は、やがて教育その他ルートを通じて、体制内に取り込まれてしまった民衆の底辺にまで浸透していくに至るが、日清戦争に「民衆が兵士として動員された体験」は、そのような浸透がいっそう深まる大きな契機となります。
『1895年(明治28年)に戦勝祝賀を行う慶應義塾大学の炬火行列大運動会(カンテラ行列)』 (Wikiより)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%B8%85%E6%88%A6%E4%BA%89
かつて一〇年前には、貧農民権運動の舞台となった秩父の山村の一農民までが、一八九五年八月には、その日記に「日本大勝利」の記事を克明に書き写し、「日本国中にて、日の丸の旗を立て、勝ち軍を祝するという」と喜びを記すようになっていた。
『朝鮮の歴史 朝鮮史研究会編 編集代表 旗田巍』 三省堂 182頁より
・「そのような思考の先」に何があるのか
Will you accept a presence of foreign military?②
‐日朝・日韓歴史問題 自国史を再認識して「引きこもり思考」から脱する‐
‐シリーズ・朝鮮近代史を振り返る その1(諸悪の根源を正し、北東アジア平和に向けて)‐
自国の「過去の行い」を一切直視せず、ひたすら惰性と感情のままに、日本人自身が逃げ続けるのなら、終局的に「地獄を見る」のは自分たちであることを理解しなければならない。
己のウィークポイントを、アメリカ人に付け込まれ、在日米軍という「特権付き植民地軍」に支配されたこの国では、政治や経済、社会ふくめ、何もかもがオワコンの方向に向かっている。
<参考資料>
・『朝鮮の歴史 朝鮮史研究会編 編集代表 旗田巍』 三省堂
<ツイッター>
【歴史学を学ぶ大切さを伝えるブログ(ふーくん)】
https://twitter.com/XMfD0NhYN3uf6As
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