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子肌育Blog アトピーに負けない生活。

子どものアトピー性皮膚炎治療、スキンケアなどについての正しい知識を、わかりやすくまとめています。

塗り薬チューブの中身をムダなく使い切る、ちょっとしたアイディア


こんにちは。橋本です。


アトピーの標準的な治療では、よくステロイドプロトピックを使います。


適切に薬を使うために、こういった塗り薬は、5gごとの小さなサイズのチューブで処方されるのが普通ですよね。


このチューブを何気なく使っていると、最後までしぼり切ったつもりでも、中身がわずかに残ってしまいます。


まあ、「残る」といっても、ごくわずかなので、「そこまで気にする必要はないだろ!」と言われれば、確かにそうなんですが……。


でも、この「あと残りちょっと」が出しにくかったりするんですよね。


微妙に中身が残った状態だと「このまま捨てるのはもったいないなあ」なんて思います。


そこで、ちょっと工夫をしてみる。


そうすると、塗り薬を最後までムダなく使い切ることができます。


塗り薬:使い切る


 


まずは比較


まずは比較をしてみましょう。


次の写真は、左側が、ごく普通に使い切ったチューブ。で、右がひと工夫して中身をしぼり出したチューブ。


薬チューブ:角で絞る


その差はわずかですが、「チリも積もれば何とか」っていうような例えもありますよね。


ちょっとした工夫をしてあげれば、これだけの差が出るのです。


道具は何も使いません。


特別面倒で手間が掛かるようなこともしません。


 


「角」を使って絞り出す


塗り薬のチューブを残らずしぼり出す方法は、カンタンです。


「角」を使ってしぼり出すだけです。


机やテーブル、洗面台、または壁など、身近にある角の部分に、チューブをすり当てて、中身を口のほうに押し出すような感じで、しぼり出します。


塗り薬:ムダなく使う01


塗り薬:ムダなく使う02


もちろん、フタが開いたままだと、中身がニョロっと勢い良く飛び出してしまうので、キャップを閉めた状態でしぼってくださいね。


なるべく傷がついても大丈夫なように、目立たない場所の角、頑丈な角を選んで利用してあげないと、あとでちょっと涙目になってしまいます(苦笑)。


 


残らず使うことだけに一生懸命になると……


キレイにしたり、節約したりという行為は、こだわりはじめると、ついついそれだけに没頭してしまいます。


もともとは、薬をムダに残さないために、最後まできれいに残さず使い切るのですが、節約行為にこだわると、どんどんしぼり出してしまう……。


薬をムダ使いしないように気を使ったつもりが、なぜか余計に薬を使ってしまう結果に……。


こうなると、逆に薬を使い過ぎてしまうことにもなりかねないんですね。


やはり、アトピーの適切なケアには、適切な量の薬を使うことが大切です。


ムダ使いをなくすことを優先したがために、適切な治療を見失ってしまう……。


冷静にみるとありえないことですが、一生懸命になっていると、いつの間にかこんな状態になってることもありえます。


きれいに残さず使うことも大事ですが、それにこだわるあまり必要以上に薬を使わないようにも気をつけたいわけです。


そして、長い目で見れば、将来的には、薬に頼らない状態をゆっくりと目指したいですね。


いってみれば、それが究極の「ムダをなくす」ことかもしれません。


 


プラスチック製のチューブには向かない


ただ、この「角」を使ってしぼり出す方法は、プラスチック製のチューブでは、あまりうまくできません。


理由は、プラスチック製のチューブだと、側面を押しても、離した瞬間に形が元の形状に戻ってしまうからです。


グニグニしたような柔らかいチューブでは、この方法がやりにくわけですね。


「角」を使った方法は、金属製のチューブ……塗り薬に多く採用されているタイプのチューブに向いた方法です。


ビニール製チューブ:金属製チューブ


いくらムダ使いしたくないからといって、金属製のチューブをハサミで切って中身を出すのはオススメしません。


手間も掛かる上に、金属のするどい切り口で指を切るおそれがあるからです。


「『角』を使ってしぼり出す」なんて、聞いてみれば「なーんだ、それだけのこと?」とガッカリしてしまうかもしれません。


でも、この方法。人に言われないと、日常生活の中では意外と思いつかなかったりします。


ちょっとした工夫で、うまく塗り薬をしぼり出してあげてくださいね。


 


 


 


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子どもにゴマを食べさせるのはいつから?


こんにちは。橋本です。


ごまアレルギーというと、一般的にはあまりなじみのない食物アレルギーかもしれません。


世間では、「ごま=健康食品」というイメージが強く、意外と幅広い加工食品に使われています。


ですが、子どもによっては、この「ごま」によってアレルギーやアトピーの症状をおこすこともあるんですね。


では、アレルギーに気をつけたいなら、いつ頃ぐらいからゴマを食べさせたらいいんでしょうか?


離乳食では、どの段階で食べさせたらいいんでしょうか?


ゴマ


 


ごまアレルギーの症状


ごまアレルギーは、ごまを食べることによって、体にアレルギー症状があらわれる病気です。


おもには、湿疹・蕁麻疹(じんましん)などの皮膚症状が多いといわれています。


ほかにも、下痢・嘔吐・腹痛などの消火器症状、鼻や目などの粘膜症状、せき・ゼーゼー・息苦しくなるなどの呼吸器症状など……。


症状のあらわれ方は、人それぞれです。


 


ごまアレルギーに注意したい理由


ごまアレルギーの患者数は、食物アレルギーの患者全体からみると、1.9%以下と比較的少ないようにみえます。


参考記事:

どんな食べ物で、食物アレルギーが出ることが多いのか?


ただ、一部のごまアレルギーの患者では、ごく微量のゴマでもアナフィラキシーといわれるような症状をおこすこともあります。


アナフィラキシーは、全身が赤くはれあがったり、呼吸困難、血圧低下、場合によっては意識を失うなど、対応が遅れると命にもかかわるような、重症のショック症状です。


ほんの少量でも、アナフィラキシーをおこす例が報告されている。


そういう点でも、ごまアレルギーは少し注意が必要なんですね。


ほうれん草:おひたし


 


ごまの利用が広がる一方……


ごまは、健康を気づかう風潮から、様々な食品に利用される機会が増えています。


「ごまの成分、セサミンは体にいい」という宣伝もよく目にしますよね。


しかし、そうしたゴマの食品への利用が広まっているにもかかわらず、アレルギー表示が進んでいません。


「特定のアレルギー体質を持つ人が、不用意なアレルギーをおこさないように」


そのような考えのもと、アレルギーが多く報告されている原材料を使用している食品は、「この食品には、アレルギーをおこす可能性のあるものが含まれていますよー」と表示することになっています。


それがアレルギー表示制度です。


必ず表示される7品目(表示義務)、表示がすすめられている18品目(表示を推奨)のあわせて25品目が、これにあたります。


こうしたアレルギー表示制度の25品目は、「特定原材料」とよばれたりします。


加工食品のラベルを見ると、たとえば……


( 原材料の一部に豚肉大豆牛肉さけさばゼラチンを含む )


なんていうのが、実際の表示例ですね。


ところが、現在のところ、日本では、表示がすすめられる「特定原材料」に、ごまは指定されていません。


それに対し、ヨーロッパやアメリカでは、ごまアレルギーが増加する傾向にあり 1) 、イギリスやカナダ、オーストラリアではアレルギー表示リストに含まれています。


すりごま:ごまペースト


 


ペーストやすりごまは、比較的アレルギーをおこしやすい


同じ「ごまアレルギー」でも、人によって症状の違いは大きいものの、ごまアレルギーには次のような特徴があります。


まず、ごまペーストやすりごまは、粒ごまよりも反応をおこしやすいことが知られています。


そのため、患者によっては、すりごまはダメなのに、粒ごまは少しなら食べても大丈夫というケースもあるようです。


なぜ、ごまの加工状態で反応が変わるかは、はっきり分かってはいないのですが、おそらくゴマを細かくするほど吸収量が大きくなるため、アレルギー反応も大きくなると考えられています。


粒ごまのような堅い殻につつまれた状態では消化しにくいため、症状が出にくいのではないか、というわけです。


 


ごまのアレルゲンは熱に強い


ごまのおもなアレルゲンは「ビシリン」という、たんぱくです。


このビシリンは、熱に強いことが知られていて、ごまに熱を加えた「いりゴマ」のようなものでも、「アレルギーのおこしやすさ」は変わりません。


もちろん、普通のごまでも、煮たり焼いたりしても変わることがないわけですね。


 


血液検査で「ごまアレルギー」と判定されても……


ごまアレルギーかどうかをチェックする1つの方法として、血液検査(RAST)があります。


病院の血液検査で、アレルゲンごと……もちろんゴマに関してもIgE抗体価(アイ・ジー・イーこうたいか)を測ることができます。


ラストクラスとも、非特異的IgEともいわれるものです。


このラストクラスが高ければ、ごまアレルギーである可能性も高くなりますが、「絶対」ではありません。


血液検査で「ごまアレルギーだ!」という結果が出たのに、実際に食べても「アレルギーが出ませんよ」というケースも多いのです。


やはり確実なチェックは血液検査ではなく、「食べてアレルギーが出るか」と「食べなければアレルギーが出ないか」のダブルチェックです。


そしてもうひとつ注意なのが、血液検査で、ほかのナッツ類や大豆にアレルギーが出ている場合です。


すべてのナッツ類や大豆に、ラストクラスが同じような値を示す場合は、実際にゴマを食べても、アレルギー症状が出る可能性は低いといわれています。


これは、血液検査では、ナッツ類、大豆、ゴマなどに共通する「糖鎖」(とうさ:CCDともよばれる)という、たんぱくの抗体を検出してしまうためです 2)


 


急いでゴマを食べさせる必要はない


さて、「子どもにいつぐらいから食べさせればいいか?」という話ですが……。


卵や牛乳、小麦などと違い、ゴマを食べないようにしたからといって、栄養不足になることはありません。


そのため、アレルギーに注意が必要な場合は、あえて急いでゴマを食べさせる必要はないんですね。


ですから、「ほかに食物アレルギーがある」とか「アトピーがひどい」とかいう場合には、無理に離乳食でゴマを食べさせなくてもいいというわけです。


食物アレルギーやアトピーがある程度落ち着いてきたり、日常生活でコントロールできるようになってきてから、ようやくゴマをトライしてみる。


そんな感じのほうが、余裕もあり対応がしやすいのかな、と思います。


ごまにトライするのは離乳食の後期であっても大きな問題はないわけです。


もちろん心配な場合は、血液検査の結果なども参考にしながら、お医者さんにトライしてもいいか確認してもいいですね。


「いつまでにゴマを食べさせろ」という期限はありません。


しかし、お菓子やパンにもゴマが使われていることが多いので、外で食べる機会の多くなる前に、目の届くうちにゴマにトライしておくと安心です。


黒ごま


 


離乳食は、「粒ごま」から開始する


ペーストやすりごまは、比較的アレルギーをおこしやすいので、初トライする時は、少量の「粒ごま」から開始します。


また、黒ごまは白ごまより、たんぱくが少ないので、「粒の黒ごま」から利用するというのが、より無難です。


ごま油については、どうなのか?


スーパーで一般的に売られているごま油は、精製の技術が進んでいて、たんぱくの混入が少ないといわれています。


そのため基本的に、ごま油には気をつける必要はありません。


ただし、ごく微量でもアナフィラキシーをおこす場合は、ごま油にも注意が必要です。


 


アトピーの場合は?


日本でのアトピーとごまアレルギーの関係を調べると、次のような報告があります。


アトピーの子ども126人を調査したところ、生後6ヶ月~1歳未満児で21%、1歳~1歳6ヶ月未満児で44%、2歳児および3歳以上では約50%であり、ごまアレルギーの陽性率は、卵についで高かった 3)


アトピーの子どもに、ごまを食べさせるのは、意外と注意が必要だ、というわけです。


とはいうものの、一般的には現在のところ、ごまが特別にアトピーの悪化に関係するとはいわれていません。


そのため、血液検査で「ごまアレルギー」と判定されたとしても、「ごまでアトピーが悪化する」と決めつけることはできません。


「ごまでアトピーが悪化するかどうか」も、「食べて悪化する」「食べなければ悪化しない」のダブルチェックで判定するのが確実です。


ダブルチェックなしで、「ごまを食べるとアトピーが悪化する」と思い込んでしまうと、不必要な負担になってしまいます。


子どもにとっても、家族にとっても、そうした負担は良くないですよね。


 


 


 


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参考文献:

1) Venu Gangur, Caleb Kelly, Lalitha Navuluri: Sesame allergy: a growing food allergy of global proportions? Annals of Allergy, Asthma & Immunology 95(1): 4-11, 2005.

2) Komei Ito, Masashi Morishita, et al: Cross-reactive Carbohydrate Determinant Contributes to the False Positive IgE Antibody to Peanut. Allergology International 54, 387-392, 2005.

3) 三宅 健, 三宅 千代美: ゴマアレルギーの臨床的研究-アトピー性皮膚炎児におけるゴマアレルギーの重要性について-. 小児科臨床 54(5): 909-912, 2001.


「重層法」ってどんな塗り方?…ステロイドの塗り方(その2)


こんにちは。橋本です。


ステロイドを塗る最も一般的な方法は、単純に指で塗り広げる方法です。


これを、ちょと専門的にいうと、単純塗布(たんじゅんとふ)とよんでいます。


ステロイドを塗るのは、この単純塗布が基本です。


しかし、湿疹の状態によっては、重層法(じゅうそうほう)という方法で、ステロイドを塗って治療することがあります。


ステロイド:リント布


 


ステロイドの重層法とは?


重層法とは、カンタンにいうと「ステロイド」と「ほかの外用剤」、2種類を塗り重ねる方法です。


たとえば、


ステロイド外用薬とプロペト


ステロイド外用薬とヒルドイドソフト軟膏


など、アトピーの治療では、ステロイドと保湿剤を塗り重ねるような方法が、よくおこなわれます。


ステロイドと保湿剤……「どの順番で塗り重ねていくか?」は、ケースバイケース。


実際の症状によっても変わってくるので、お医者さんとよく相談して決めることが大事です。


参考記事:

ステロイドと保湿剤は塗り重ねていいの?


ステロイドと保湿剤の塗り重ね。


これもいってみれば、重層法に違いありません。


が、しかし。


一般的に、「重層法」「重層療法」といった場合、ステロイドと保湿剤の塗り重ねを指すことは少ないです。


「重層法」「重層療法」といえば、実際には、ステロイドと亜鉛華軟膏(あえんかなんこう)の塗り重ねを指すことが多いんですね。


 


ステロイドと亜鉛華軟膏の重層療法


重層療法といえば多くは、ステロイドなどの外用薬を塗った上に、亜鉛華軟膏などを厚く伸ばしたシートを貼る方法のことを指します。


細かい手順は以下のようになります。


 


1) ステロイドなどの外用薬を塗る


まず、湿疹の部分にステロイドを塗ります。


適切なランクのステロイド(湿疹の重症度に合った効き目の強さを持つステロイド)を使うこと。


それから、十分な量、適切な量(フィンガー・チップ・ユニット)を塗ることが重要になってきます。


ステロイド:塗る


 


2) 亜鉛華軟膏のシートを作る


リント布といわれるガーゼ状のものに、ヘラバターナイフなどを使って、亜鉛華軟膏をたっぷり塗り広げます。


5cm2あたり5gの割合で、十分な量の亜鉛華軟膏を塗ってあげることが大切です。


リント布には、表面と裏面の区別があって、表面が毛羽立って(けばだって)いるほうが裏面。


この裏面のほうに、亜鉛華軟膏をたっぷり塗り広げます。


亜鉛華軟膏:塗り広げる


場合によっては、亜鉛華軟膏ではなく、亜鉛華単軟膏(あえんかたんなんこう)やサトウザルベなどを使うこともあります。


また、あらかじめ、亜鉛華軟膏がシート状になっている製品……ボチシートを使うと、亜鉛華軟膏を塗り広げる手間が省けます。


ボチシート


 


3) シートを加工する


亜鉛華軟膏を塗り広げたシートを5cm四方ぐらいの大きさに切り分けます。


患部にシートを貼った時にフィットしやすいように、四隅に切込みを入れておきます。


リント布:分割する


 


4) シートを貼る


湿疹の部分に合わせて、亜鉛華軟膏を塗ったシートを貼ります。


湿疹から出る体液(滲出液:しんしゅつえき)が中にたまらず、うまく排出されるように、シートとシートのすき間を1~2mmほどあけて貼るのが、ポイントです。


リント布:患部に貼る


 


5) ガーゼや包帯で固定する


貼ったシートが動かないように、ガーゼや包帯を巻いて固定します。


リント布:包帯を巻く


 


6) 1日1回貼り替える


1日1回を目安に貼り替えます。


1日に1回はがして患部の状態をチェックする。


そして、患部をお風呂できれいに洗ってあげるのも大事です。


ステロイドを塗ってシートで密閉したままだと、細菌が繁殖しやすく、毛包炎(もうほうえん)などのブツブツの原因にもなります。


 


どんなところに重層法を使うの?


亜鉛華軟膏の重層療法は、比較的症状がひどいアトピーに使う塗り方です。


たとえば、次のような部分に使います。


 


ジュクジュクが強い湿疹:


皮膚の浅い部分がはがれて、ジクジクとただれた状態(びらん)のところ


湿疹から体液(浸出液:しんしゅつえき)が、しみ出ているところ


 


苔癬化した湿疹:


かき壊しを繰り返して、ゴワゴワと皮膚が厚く硬くなってしまった状態(苔癬化:たいせんか)のところ


 


ボロボロやかさぶたがついた湿疹:


ボロボロ(鱗屑:りんせつ、落屑:らくせつ)や、かさぶた(痂皮:かひ)が、ぽろぽろと落ちやすい湿疹


 


重層法をする目的とは?


亜鉛華軟膏による重層法のいちばんのメリットは、ジクジクとただれた湿疹(びらん)を保護できることです。


かき傷でひどくなった部分を保護することもできます。


また、患部をガーゼで保護することになるため、ひっかいたり、刺激したりといったことを防止できます。


同時に、そうした湿疹から出てくる汁(浸出液:しんしゅつえき)を、亜鉛華軟膏がうまく吸収してくれます。


亜鉛華軟膏には粘着性もあるので、湿疹からポロポロはがれる角質やかさぶたも、うまく回収してくれます。


そして、リント布でおおうことによって、患部が半密閉されるので、ステロイドの吸収が高まり、治療効果も高くなります。


 


ステロイドの副作用に注意


ステロイドの吸収が高まり、治療効果も高くなる。


そんな便利な重層療法ですが、その分だけ注意をしないと、皮膚萎縮などの副作用が出てしまうことにもなりかねません。


 


プロトピックの重層療法はダメ


患部が半密閉状態になることで、薬の吸収が高まる重層療法。


そのため、プロトピック軟膏を重層療法に使うのは危険です。


プロトピック軟膏を重層療法に使うと、薬剤が血液中に高濃度で吸収される可能性があり、リンパ腫(リンパしゅ:血液のがん)になる危険性があると考えられます。


「プロトピック軟膏を重層法に利用することで、がんになる」というと少し大げさですが、重層法には利用しないほうが安全です。


参考記事:

プロトピック軟膏の「発がんリスク」について


重層療法に使う薬は、基本的にはステロイド外用薬。


プロトピックは使わないようにします。


 


重層療法は短期間にとどめる


亜鉛華軟膏の重層療法は、原則的に短期間にとどめます。


湿疹の重症度に合ったステロイドを使えば、通常は1~2週間ですべすべの肌に戻すことができます。


ですので、重層療法をはじめたら、1~2週間後の再診で、効果や副作用をお医者さんにチェックしてもらうことが重要です。


亜鉛華軟膏は一般的に、保湿剤に分類されるものの、保湿剤というより、「保護剤」としての性格が強い塗り薬です。


患部のジュクジュクを吸収したり、保護したりというのが得意なんですね。


「ジクジクした湿疹をうまく乾かしてくれる」ということは、裏を返せば、亜鉛華軟膏を長期間使うと肌を乾燥させてしまうことになりかねません。


そういう意味でも、亜鉛華軟膏の重層療法は、再診でのチェックを受けた上で、短期間にとどめます。


重層療法は、便利な治療法ですが、アトピーをケアする上で常用する治療法には、しにくわけなんですね。


重層療法は、「ひどいアトピーの初期治療」に向いているステロイドの塗り方です。


 


 


 


関連記事:

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おいしい銀杏も「ほどほど」がいい


こんにちは。橋本です。


秋になると食べたくなるもののひとつが銀杏(ぎんなん)。


これが茶碗蒸しに入っていただかないと、なんだか物足りなく感じる、という方も多いのではないかと。


かくいう私も、地元の近く、愛知県祖父江町(そぶえちょう:今の稲沢市)が銀杏の名産地なので、秋になると毎年よく食べさせてもらっています。


もちもちした食感がおいしく、ついつい手が伸びてしまうんですよね。


しかし、この銀杏。


とくに子どもでは、「食べ過ぎ」に注意したほうがいい食べ物のひとつ。


なぜなら、場合によっては中毒をおこすことが知られているからです。


銀杏:中身


 


秋の食卓をいろどる宝石


「銀杏?……ああ、枝豆に似たようなやつね」


なんて、せっかくの風情そっちのけの人もいますが、たしかに混ぜご飯なんかに、まぎれていたら、枝豆と銀杏、どっちがどっちか、見分けがつかなくなります。


とはいえ、銀杏の色合いや食感、味わいは、ほかにはない独特なもの。


白くおおわれた硬い殻をカチ破ると、中からは、ツヤツヤとしたエメラルドグリーンが、美しく冴え渡ります。


透き通ったような美しい緑色……かと思えば。


火の通し方によって、深緑、ウグイス色、黄色と変化し、不思議な美しさを見せます。


茶碗蒸し、炊き込みご飯、炊き合わせ。


その中で顔をのぞかせる、深い黄色をした銀杏も、秋を感じさせる料理のいいアクセントになりますよね。


噛んだ時の弾力、身の砕け具合、何ともいえないネットリ感のある舌触り……。


ほかの食材では代わりができない、料理の名脇役です。


銀杏:殻むき


 


銀杏(ぎんなん)は、イチョウの種


銀杏は、よく街路樹としても植えられているイチョウの種です。


イチョウの種には、果肉のようなものがあるのですが、秋になって種が熟してくると、この部分が悪臭を放ちます。


銀杏:ギンナン


イチョウの木にサクランボのように実っている銀杏が、熟して地面に落ちる。


その下を歩いて、靴で踏みつぶしてしまうと、この匂いが臭くてたまらないんですよね。


ただ、この果肉のような部分は食用にできません。


果肉状の部分は、人によってはかぶれることがあるためです。


スーパーに並んでいるのは、この果肉状の部分を取り除いて乾燥させたもの。


白く硬い殻におおわれた、まさにイチョウの種ですね。


銀杏拾い


銀杏は、古くから食用、薬用にされてきているのですが、食べ過ぎると中毒をおこすことが知られています。


銀杏を食べて数時間後、けいれん症状が起きたら銀杏中毒の可能性がありです。


終戦後の食糧難の時代には、そうした事故がよくおこり、死亡例も報告されています。


 


子どもにおこりやすい銀杏中毒


銀杏による中毒は、終戦後だけの出来事ではなく、今でも毎年10件前後はおきているとみられています 1)


報告されたものをみていくと、とくに5歳未満の子どもに多いことがわかります。


子どもでは、6個ほどを食べて中毒をおこした例(1953年)もあったようです 2)


それに対して、大人の場合には、かなり多量に摂取した場合に限られています。


中毒がおこるのは銀杏を「食べてすぐ」ではなく、食べてから数時間後におこるというのがいちばん多いケ-スです。


実際におこる症状は、けいれん嘔吐(おうと)、めまい下痢などです。


 


最近になってわかった有毒成分


はるか昔から食べられてきた銀杏。


その長い歴史に比べて、中毒のメカニズムがわかったのは、意外にもごく最近になってからのこと。


昔からの言い伝えでは、銀杏の有毒成分は、青梅に含まれる毒素と同じであるといわれてきました。


しかし、そのことに日本の研究者が疑問を持ったのです。


そこから始まった研究の結果、1985年になってやっと、銀杏に含まれる4'-O-メチルピロドキシン(よん・オー・メチルピリドキシン)という成分が、中毒の原因になっていることが特定されました 3)


この有毒成分、4'-O-メチルピロドキシンは、ギンコトキシンともよばれています。


 


銀杏で中毒がおこるメカニズム


このギンコトキシンは、構造がビタミンB6に良く似ています。


ここが実は、銀杏で中毒がおこる原因なんですね。


ビタミンB6は、体内でエネルギーを作り出すのを助けたり、皮膚や粘膜、神経伝達の健康維持に深く関わっている栄養素として知られています。


このように様々あるビタミンB6の役割の中でも、銀杏中毒に関係があるのは「神経伝達」の部分です。


普段、食事からビタミンB6が十分に摂れていれば……いや、摂れているからこそ、神経伝達がスムーズにおこなわれています。


しかし。


銀杏を大量に食べることで、ギンコトキシンを多く摂り入れると、ビタミンB6の代わりにギンコトキシンが、体内で利用されることになります。


そうすると、ビタミンB6が足りない「ビタミンB6欠乏症」と同じような状態になるのです。


実際には、ビタミンB6が足りているのに、です。


普通は、ビタミンB6がサポートしている神経伝達物質の生成を、ビタミンB6と似た形をしたギンコトキシンが邪魔をしてしまう。


ニセの「ビタミンB6欠乏症」ともいえるわけです。


銀杏中毒でおこる、ニセの「ビタミンB6欠乏症」で、いちばん典型的なのが、「けいれん」などです。


 


銀杏中毒の治療


もし、銀杏中毒が起こった場合は、このニセの「ビタミンB6欠乏症」を解消する必要があります。


実際に、報告されている事故の例では、ビタミンB6製剤を投与する治療がおこなわれ、症状が改善されているようです。


また、吐かせると、けいれんを誘発するので、無理に吐かせないほうがいいようです。


 


子どもが少量で中毒をおこしやすい理由


ニセの「ビタミンB6欠乏症」が、銀杏中毒のメカニズム。


そのために、普段からビタミンB6が欠乏した状態にあると、銀杏を大量に食べることで中毒をおこす可能性が高くなります。


しかし、現在の日本でごく普通の食事生活する分には、ビタミンB6が欠乏することは、まずありません。


終戦後の食糧難の時代に銀杏中毒の事故が多かったのも、日頃の食生活で栄養が不足していたことが関係していたのかもしれません。


そして、子どもが少量の銀杏で中毒をおこしやすいのは、体内でのビタミンB6の蓄積が、大人よりも少ないためとも考えられます。


 


実際の症状の報告


銀杏による中毒は、今でも毎年、数件はおきているようです。


たとえば、次のような事例が報告されています。


2歳の女の子(日本) が炒った銀杏を50~60個食べた約7時間後に嘔吐と下痢9時間後にけいれんをともなう銀杏中毒をおこした(2002年) 4)


2歳の男の子(日本) が焼いた銀杏を大量に食べた4時間後、嘔吐、けいれんをおこした(2006年) 5)


28歳男性 (日本) が銀杏を約50個食べた後、けいれんと嘔吐をともなう銀杏中毒をおこした(2008年) 6)


2歳1か月の男の子(日本)が、オーブンで加熱調理した銀杏を20~30個食べ、約10時間後より、嘔吐、全身にけいれんなどがあらわれた(2009年) 7)


1歳3か月の男の子 (日本) が、いった銀杏を約50個食べ、7時間後、けいれん、意識障害をともなう銀杏中毒をおこした(2009年) 8)


41歳女性 (日本) が、いった銀杏を60個食べ、4時間後から嘔吐、下痢、めまい、両腕の震え、寒気をともなう銀杏中毒をおこした(2010年) 9)


 


アレルギーや接触皮膚炎(かぶれ)がおきたケースも


また、栄養的な中毒だけでなく、アレルギー接触皮膚炎(かぶれ)が関係している事例も、少なからず報告されています。


25歳女性(フランス)がローストした銀杏を食べたところ、前腕のほてりやはれ、赤み、顔や首、太ももに湿疹があらわれた(1988年) 10)


過去に高血圧症、肺腺がんなどの病歴があり、40年間1日5~10個ほどの銀杏を食べていた62歳女性(日本)が、銀杏の外種皮(がいしゅひ:果肉)を素手で触ったところ、約1週間後脚のかゆみをともなう赤み顔面にも赤みをともなうはれやむくみがあられ、接触皮膚炎(かぶれ)と診断された。


その4日後、銀杏を50個以上食べたところ、数時間後より顔面に赤み、はれ、意味不明の言動などがおこった。


ビタミンB6の投与により回復し、パッチテストにより銀杏が陽性であったため、銀杏によるアレルギー性接触皮膚炎後におこった銀杏中毒と診断された(2006年) 11)


 


大量に食べれば危ないのか?


銀杏を大量に食べると中毒をおこす可能性はあるものの、「この量を食べると中毒をおこしますよ」とはなかなか言えません。


人によっては少量で中毒をおこす場合もあるし、大量に食べておこさない場合もあるんですね。


実際に中毒をおこす量には、幅があるわけです。


過去の報告された事例から、中毒をおこした量をみる 2) と……


子どもでは、約6~150個

大人では、約40~300個


と、かなりの幅があることがわかります。


スーパーなどで生の銀杏をまとめて買うと、なかなか使い切れず、つい大量に料理にしまいがち。


ですが、一回の食事に使うのは、小さな子どもでは、5個程度大人では10~20個程度というぐらいにおさえておいたほうが良さそうです。


また、有毒成分であるギンコトキシンは、熱に強く、煮たり焼いたり、加熱してもほとんど変化しないといわれています 2)


銀杏:炊き込みご飯


 


「天然のものだから安全」とは限らない


食べる量によっては、体に害を及ぼすものは、何も銀杏だけではありません。


銀杏以外にも、身近な食材にも、けっこうあるものです。


たとえば、生の大豆、青い梅、生のワラビ、ジャガイモの芽とか。


そのほかにもピーナッツ、お米、トウモロコシなど、食材につくカビ。


食用ではないものでも、ヤマゴボウ、キョウチクトウ、スイセン、モロヘイヤの種、アジサイの葉、トマトの葉、生のウナギなどなど。


身近な食材でも、毒を含んでいるものは少なくありません。


「天然のものなら、どれだけ食べても安全」とは限らないんですね。


あまりにも過剰に心配する必要はないんですが、食べ方を間違えると中毒をおこすことは知っておいても損はありません。


 


危険を「なくす」よりも「教える」ことの大切さ


もちろん、中毒が怖いからといっても、銀杏を世の中からなくすことは不可能です。


そして何より、銀杏はただの毒ではなく、メリットもあります。


普通に、常識の範囲内で食べるなら、銀杏には何の問題もなく、食生活を豊かにすることができるというメリットです。


それが日本の食文化の良さ、懐の深さでもあるわけです。


「危険性が少しでもあれば、なくすべき」


そうしたルールにしたがって、子どもに一切食べさせないのが安全、という考え方もあります。


たしかに、食べなければ、中毒をおこす可能性はゼロです。


しかし、だからといって世の中から、このような食べ物をなくすことはできません。


それどころか、子どもに


身近にあるもの、自然の恵みでも、食べ過ぎると良くないものもある


というのを教えるのには、銀杏は「具体例」として使えるんですね。


ただ危険を「なくす」よりも、「教える」ことのほうが大切な場合もあるわけです。


 


 


 


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1) Wada K, Haga M: Food Poisoning by Ginkgo biloba Seeds. Ginkgo biloba-A Global Treasure, Springer-Verlag Tokyo, Japan: p.309-321, 1997.

2) Takano T, Kobayashi M, Wada I: Study on Gin-nan food poisoning in experimental animals (in Japanese). Jui Chikusan Shinpo 109: 353-357, 1953.

3) Wada K, Ishigaki S, Ueda K, et al: An antivitamin B6, 4'-methoxypyridoxine from the seed of Ginkgo biloba L. Chem. Pharm. Bull. 33: 3555-3557, 1985.

4) Kajiyama Y, Fujii K, Takeuchi H, et al: Ginkgo seed poisoning. Pediatrics 109(2): 325-327, 2002.

5) Hasegawa S, Oda Y, Ichiyama T, et al: Ginkgo nut intoxication in a 2-year-old male. Pediatr Neurol 35(4): 275-276, 2006.

6) 入江 洋正, 山下 茂樹, 新庄 泰孝, ほか: 中毒物質濃度を測定した成人銀杏中毒の1例. ICUとCCU 32(2): 167-172, 2008.

7) 木下 真理子: 症例 銀杏中毒の1例. 小児科 50(12), 2079-2082, 2009.

8) 五十嵐 公洋: 症例報告 痙攣で発症した銀杏中毒の1幼児例. 秋田県医師会雑誌 60(1): 43-45, 2009.

9) 宮崎 大, 久保田 哲史, 林下 浩士, ほか. 健常成人に発症した銀杏中毒の1例. 日本救急医学会雑誌 21(12): 956-960, 2010.

10) Tomb RR, Foussereau J, Sell Y: Mini-epidemic of contact dermatitis from ginkgo tree fruit (Ginkgo biloba L.). Contact Dermatitis 19(4): 281-283, 1988.

11) 久保田 由美子, 中山 樹一郎: 銀杏皮膚炎の既往により早期診断できた銀杏中毒. 西日皮膚 68(3): 269-273, 2006.


ダニで、秋のアトピーが悪化するケース


こんにちは。橋本です。


夏や冬に悪化することが多いといわれているアトピー。


しかし一部には、秋口になると、ゆるやかにアトピーの悪化が進行するケースもあります。


「なぜか、毎年秋から冬にかけて、アトピーが悪化してしまう……」といったようなパターンですね。


そういった場合、ダニが悪化原因のひとつになってアトピーがひどくなっていることがあります。


でも、ダニは夏のような「高温多湿」の環境で増えやすいはず……ですよね。


なぜ、秋にダニでアトピーが悪化することがあるんでしょうか?


秋:ダニ


 


ダニ以外にもある、秋にアトピーが悪化する原因


もともとアトピーは、特に何をしたわけでもないのに、だんだん良くなったり、ジワジワひどくなったりを繰り返すのが特徴の病気


だから、「秋になったから」「季節の変わり目だから」アトピーが悪化するものだとは限りません。


ただ、その反面で、秋はアトピーが悪化させる可能性があるもの……いわゆる、悪化因子(あっかいんし)が顔をのぞかせる時期であるのも確かです。


秋だと、たとえば、


秋にアトピーが悪化する要因

花粉(キク科のヨモギ・ブタクサなど)

ダニ

湿度の低下(乾燥)

過度の暖房(体温上昇によるかゆみ)

服による刺激(ニット、セーターなど)

体調の崩れ


などですね。


アトピーの悪化因子は人それぞれで、ある人で悪化因子になっているものが、ほかの人では全く悪化因子になっていないということも、よくあります。


でも、人によっては、上に挙げたような悪化因子が大きくかかわっているようなアトピーの子の場合、秋にドカンと悪化することもありうるんですね。


 


ダニのフンや死がいがアレルギーを引き起こす


アトピーの原因になるのは、チリダニ(ヒョウヒダニ)といわれる種類のダニです。


参考記事:

「刺すダニ」と「アレルギーの原因になるダニ」は種類が違う


チリダニは、室内のホコリの中にいますが、体長が0.3~0.4mmほどと、とても小さくいため、肉眼では見えません。


問題なのは、こうした生きているダニよりも、さらに小さいフンや死がいがアレルギーを引き起こすこと。


ダニのフンは、じつに体の数十分の1の大きさ、0.01mmほどの細かさなんですね。


 


秋にかけて、ダニのアレルゲンがたまっていく


ダニは、室温25~30度湿度60%以上の高温多湿……具体的には、梅雨の時期によく増えます。


そして、寿命はおよそ2~3か月といわれています。


ですので、夏に増えたダニが寿命を終え、涼しくなり湿度も低くなる秋になると、ダニの死がいがたまっていくわけです。


部屋の掃除を定期的にしていなければ、夏の間に増えたフンも部屋にたっまっていきます。


 


秋にダニアレルゲンが舞いやすくなる


生きているダニは、体の中に水分がある状態なので、比較的重たいです。


問題なのは、それに比べて死がいやフンは、水分がない状態であること。


細かく乾燥した状態の死がいやフンは、パウダー状になって、ホコリといっしょに舞ってしまうのです。


これがアトピーの悪化因子になるのと同時に、これらを体内に吸い込むことでアレルギー症状が引き起こされることがあるため、秋はダニに要注意というわけです。


フンや死がいは、目に見えないパウダー状になるほど細かく、気管支(きかんし)の奥まで届くため、喘息も引き起こしやすいと考えられています。


秋に喘息の悪化がよくみられるのも、こうしたダニアレルゲンが舞いやすいことが原因のひとつなんですね。


では、ダニが舞わないようにするには、実際にどんなことをすればいいのでしょうか?


 


布団の対策が最も重要


ダニは、部屋のホコリの中にまぎれていて、人のフケやアカ、食べ物のかすなどをエサにして繁殖します。


中でも、布団は子どもが最も長い時間を過ごすため、ダニのエサになるフケやアカがたまりやすく、ダニの影響を受けやすいともいえる場所です。


だからこそ、ダニ対策にとって、いちばん大事な場所は、布団まわり。


布団のダニ対策は、3つの方法があります。


布団のダニ対策

1)水洗い

2)天日干し

3)掃除機がけ


 


1)水洗い


ダニのフンは、水に溶けて流れ落ちやすいといわれています。


そのため、週1回程度、シーツや布団カバーを水洗いすることが、ダニアレルゲン対策になります。


 


2)天日干し


いくら水洗いが有効なダニアレルゲン対策だといっても、敷布団などは洗うことが、なかなか難しい場合がありますよね。


水洗いの次に有効なダニ対策が、布団の天日干しです。


具体的には週1回以上、天日干しをするのが目安。


布団の湿気が取り除かれ、ダニの繁殖をおさえられます。


 


3)掃除機がけ


ダニ対策は、布団の両面に掃除機をかけること。


これが最も重要です。


なぜかというと、布団を干すだけでは死がいやフンを取り除くことができないからです。


週に1回は、ゆっくり掃除機をかけることがポイント。


通常、畳やフローリングに使う掃除機のノズルだと、布団の布まで吸引してしまい使いづらいことがあります。


布団専用のノズルが、掃除機を購入した時についていない場合は、家電量販店やネットなどで購入すると便利です。


 


優先順位をつけて、「できる範囲」で


床、じゅうたんやカーペット、畳、ラグ、こたつ、布製のソファー、ぬいぐるみ、クッション、カーテンなどにもダニが潜みやすいので、掃除機をかけることが大切……。


とはいっても、ダニを減らす環境づくりは、色々な方法が紹介されていて、何からやればいいのか正直、よく分からなくなります。


それに、どれもこれもいっぺんにやると大変です。


仕事や生活環境など、ライフスタイルによって、掃除などにかけられる時間は、人それぞれ違います。


まず布団やシーツ、次に寝室、そしてリビングのカーペット……というように、優先順位をつけて、無理せずできることを続けるのが大事です。


そしてもちろん、アトピーによる湿疹、かゆみがあれば、薬を適切に使っておさえることが、ダニ対策よりも最優先です。


ダニ対策だけでは、今ある皮膚の炎症はおさえられませんので。


子ども:布団


 


冬の布団をクローゼットから出すときは……


夏に増えたダニアレルゲンがたまった、秋。


この時期に、特に注意が必要なのは、冬の布団を押し入れから出す時です。


「喘息がひどくなった」「アトピーがひどくなってきた」


思い返すと、寒くなって布団をクローゼットから出して、すぐに使った晩から悪化してきたな、というケースもあります。


押し入れやクローゼットの中は湿度が高いため、夏の間にダニが繁殖しやすく、そのまま使えば大量の死がいやフンを吸い込むことになります。


冬の布団を押し入れから出す時は、できるダニ対策をしてから使用することで、少しでも喘息やアトピーの悪化を防げるはずです。


参考記事:

しまってあった掛け布団を出すときは


 


 


 


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