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「重層法」ってどんな塗り方?…ステロイドの塗り方(その2)


こんにちは。橋本です。


ステロイドを塗る最も一般的な方法は、単純に指で塗り広げる方法です。


これを、ちょと専門的にいうと、単純塗布(たんじゅんとふ)とよんでいます。


ステロイドを塗るのは、この単純塗布が基本です。


しかし、湿疹の状態によっては、重層法(じゅうそうほう)という方法で、ステロイドを塗って治療することがあります。


ステロイド:リント布


 


ステロイドの重層法とは?


重層法とは、カンタンにいうと「ステロイド」と「ほかの外用剤」、2種類を塗り重ねる方法です。


たとえば、


ステロイド外用薬とプロペト


ステロイド外用薬とヒルドイドソフト軟膏


など、アトピーの治療では、ステロイドと保湿剤を塗り重ねるような方法が、よくおこなわれます。


ステロイドと保湿剤……「どの順番で塗り重ねていくか?」は、ケースバイケース。


実際の症状によっても変わってくるので、お医者さんとよく相談して決めることが大事です。


参考記事:

ステロイドと保湿剤は塗り重ねていいの?


ステロイドと保湿剤の塗り重ね。


これもいってみれば、重層法に違いありません。


が、しかし。


一般的に、「重層法」「重層療法」といった場合、ステロイドと保湿剤の塗り重ねを指すことは少ないです。


「重層法」「重層療法」といえば、実際には、ステロイドと亜鉛華軟膏(あえんかなんこう)の塗り重ねを指すことが多いんですね。


 


ステロイドと亜鉛華軟膏の重層療法


重層療法といえば多くは、ステロイドなどの外用薬を塗った上に、亜鉛華軟膏などを厚く伸ばしたシートを貼る方法のことを指します。


細かい手順は以下のようになります。


 


1) ステロイドなどの外用薬を塗る


まず、湿疹の部分にステロイドを塗ります。


適切なランクのステロイド(湿疹の重症度に合った効き目の強さを持つステロイド)を使うこと。


それから、十分な量、適切な量(フィンガー・チップ・ユニット)を塗ることが重要になってきます。


ステロイド:塗る


 


2) 亜鉛華軟膏のシートを作る


リント布といわれるガーゼ状のものに、ヘラバターナイフなどを使って、亜鉛華軟膏をたっぷり塗り広げます。


5cm2あたり5gの割合で、十分な量の亜鉛華軟膏を塗ってあげることが大切です。


リント布には、表面と裏面の区別があって、表面が毛羽立って(けばだって)いるほうが裏面。


この裏面のほうに、亜鉛華軟膏をたっぷり塗り広げます。


亜鉛華軟膏:塗り広げる


場合によっては、亜鉛華軟膏ではなく、亜鉛華単軟膏(あえんかたんなんこう)やサトウザルベなどを使うこともあります。


また、あらかじめ、亜鉛華軟膏がシート状になっている製品……ボチシートを使うと、亜鉛華軟膏を塗り広げる手間が省けます。


ボチシート


 


3) シートを加工する


亜鉛華軟膏を塗り広げたシートを5cm四方ぐらいの大きさに切り分けます。


患部にシートを貼った時にフィットしやすいように、四隅に切込みを入れておきます。


リント布:分割する


 


4) シートを貼る


湿疹の部分に合わせて、亜鉛華軟膏を塗ったシートを貼ります。


湿疹から出る体液(滲出液:しんしゅつえき)が中にたまらず、うまく排出されるように、シートとシートのすき間を1~2mmほどあけて貼るのが、ポイントです。


リント布:患部に貼る


 


5) ガーゼや包帯で固定する


貼ったシートが動かないように、ガーゼや包帯を巻いて固定します。


リント布:包帯を巻く


 


6) 1日1回貼り替える


1日1回を目安に貼り替えます。


1日に1回はがして患部の状態をチェックする。


そして、患部をお風呂できれいに洗ってあげるのも大事です。


ステロイドを塗ってシートで密閉したままだと、細菌が繁殖しやすく、毛包炎(もうほうえん)などのブツブツの原因にもなります。


 


どんなところに重層法を使うの?


亜鉛華軟膏の重層療法は、比較的症状がひどいアトピーに使う塗り方です。


たとえば、次のような部分に使います。


 


ジュクジュクが強い湿疹:


皮膚の浅い部分がはがれて、ジクジクとただれた状態(びらん)のところ


湿疹から体液(浸出液:しんしゅつえき)が、しみ出ているところ


 


苔癬化した湿疹:


かき壊しを繰り返して、ゴワゴワと皮膚が厚く硬くなってしまった状態(苔癬化:たいせんか)のところ


 


ボロボロやかさぶたがついた湿疹:


ボロボロ(鱗屑:りんせつ、落屑:らくせつ)や、かさぶた(痂皮:かひ)が、ぽろぽろと落ちやすい湿疹


 


重層法をする目的とは?


亜鉛華軟膏による重層法のいちばんのメリットは、ジクジクとただれた湿疹(びらん)を保護できることです。


かき傷でひどくなった部分を保護することもできます。


また、患部をガーゼで保護することになるため、ひっかいたり、刺激したりといったことを防止できます。


同時に、そうした湿疹から出てくる汁(浸出液:しんしゅつえき)を、亜鉛華軟膏がうまく吸収してくれます。


亜鉛華軟膏には粘着性もあるので、湿疹からポロポロはがれる角質やかさぶたも、うまく回収してくれます。


そして、リント布でおおうことによって、患部が半密閉されるので、ステロイドの吸収が高まり、治療効果も高くなります。


 


ステロイドの副作用に注意


ステロイドの吸収が高まり、治療効果も高くなる。


そんな便利な重層療法ですが、その分だけ注意をしないと、皮膚萎縮などの副作用が出てしまうことにもなりかねません。


 


プロトピックの重層療法はダメ


患部が半密閉状態になることで、薬の吸収が高まる重層療法。


そのため、プロトピック軟膏を重層療法に使うのは危険です。


プロトピック軟膏を重層療法に使うと、薬剤が血液中に高濃度で吸収される可能性があり、リンパ腫(リンパしゅ:血液のがん)になる危険性があると考えられます。


「プロトピック軟膏を重層法に利用することで、がんになる」というと少し大げさですが、重層法には利用しないほうが安全です。


参考記事:

プロトピック軟膏の「発がんリスク」について


重層療法に使う薬は、基本的にはステロイド外用薬。


プロトピックは使わないようにします。


 


重層療法は短期間にとどめる


亜鉛華軟膏の重層療法は、原則的に短期間にとどめます。


湿疹の重症度に合ったステロイドを使えば、通常は1~2週間ですべすべの肌に戻すことができます。


ですので、重層療法をはじめたら、1~2週間後の再診で、効果や副作用をお医者さんにチェックしてもらうことが重要です。


亜鉛華軟膏は一般的に、保湿剤に分類されるものの、保湿剤というより、「保護剤」としての性格が強い塗り薬です。


患部のジュクジュクを吸収したり、保護したりというのが得意なんですね。


「ジクジクした湿疹をうまく乾かしてくれる」ということは、裏を返せば、亜鉛華軟膏を長期間使うと肌を乾燥させてしまうことになりかねません。


そういう意味でも、亜鉛華軟膏の重層療法は、再診でのチェックを受けた上で、短期間にとどめます。


重層療法は、便利な治療法ですが、アトピーをケアする上で常用する治療法には、しにくわけなんですね。


重層療法は、「ひどいアトピーの初期治療」に向いているステロイドの塗り方です。


 


 


 


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