滲出液(しんしゅつえき)…アトピーの湿疹から出る黄色っぽい汁は何なの?
こんにちは。橋本です。
アトピーになると、湿疹や引っかいて傷になったところから、黄色っぽい汁がにじみ出てくることがあります。
このしみ出してくる汁のことを滲出液(しんしゅつえき)とよんでいます。
湿疹から滲出液が出てくることで、「肌は乾燥してるのに、ジュクジュクした状態」になってしまうわけなんですね。
これが原因で、湿疹がテカテカ、ベトベトした状態になることもあります。
滲出液の正体とは?
アトピーの湿疹や、乾燥で肌が割れたところ、かきむしった傷などから出てくるこの滲出液。
この黄色っぽい汁は、リンパ液などの血液成分が、しみ出てきたものです。
症例写真:滲出液がにじみ出たアトピー
アトピーなどで皮膚に炎症がおこると、真皮(しんぴ:皮膚の深いところ)の毛細血管が拡張します。
そうすると、血管の壁から血液成分が外にもれやすい状態になってしまいます。
通常は血管外には出ないフィブリノーゲンやグロブリン、アルブミンなどの血漿(けっしょう)やタンパク質のような血液成分が血管の壁からもれ出してしまうわけです。
もれ出した血液成分の多少の違いによって、湿疹のジュクジュクした汁が透明に近かったり、黄色っぽかったりするんですね。
このような血液成分を、一般的にリンパ液とよぶこともあります。
ただの湿疹なら肌の表面に、こうしたリンパ液がしみ出すことはありません。
しかし、皮膚の傷つき方やダメージによっては、時には湿疹がジュクジュクになるほどリンパ液がしみ出してきてしまうわけです。
「しみ出す」というのを漢字では「滲み出す」とか「浸み出す」と書くので、このようなしみ出したリンパ液を、
・ 滲出液(しんしゅつえき)
・ または、浸出液(しんしゅつえき)
という感じでよんでいます。
「リンパ液が体を守る」というけれど…
傷のようになってしまった湿疹は、とびひなどの原因にもなるありふれた細菌…たとえば、黄色ブドウ球菌(おうしょく・ぶどうきゅうきん)などの温床になることもあります。
リンパ液にはこうした細菌など、外敵に抵抗する作用があるといわれています。
つまり、滲出液が出ることで、わずかながらでも細菌への感染を防いでくれているわけです。
そのリンパ液が傷をおおってくれるなら、傷が化膿(かのう)しにくくなるわけなので、「体の自然な仕組みも、良くできているよなー」と思いますよね。
でもだからといって、リンパ液が湿疹を治してくれるわけではありません。
リンパ液には、多少細菌に対抗する力があったとしても、皮膚の炎症をおさえる力はないのです。
滲出液が邪魔をする
滲出液をそのままにしてもアトピーが治っていくわけではありません。
しかも、滲出液が服についたりすると、ひどく汚れガビガビになり、血液成分なので洗濯してもきれいに落ちてくれません。
これってやっかいですよね。
滲出液が出るような症状を長く続けることは、子どものQOLを、いちじるしく低下させ、日常生活にストレスを与えてしまいます。
さらにやっかいなのは、この汁のおかげで、皮膚の炎症をおさえるための薬、ステロイド外用薬も塗りにくくなってしまうこと。
患部がジュクジュクになっていては、せっかく薬を塗っても流れてしまい、うまく薬が効いてくれない可能性もあるんですね。
結局、この浸出液は、普段の生活をする上でも、湿疹を治療する上でも、邪魔になってしまうのです。
滲出液が出たらどうすればいいの?
やっかいな浸出液を処理するには、通常、亜鉛華軟膏(あえんか・なんこう)を使います。
亜鉛華軟膏は、白い練り物のような軟膏で、酸化亜鉛(さんか・あえん)が含まれています。
酸化亜鉛には、滲出液を吸収し、乾燥させる作用があるので、亜鉛華軟膏を患部に塗ることで、いやなジュクジュクをさらっとさせてくれるわけです。
ただ、亜鉛華軟膏にも炎症をおさえる作用があるとはいわれるものの、その力はごく弱いもの。
湿疹を治すほどではありません。
そのため、滲出液が出ているようなアトピーは、次のような手順で湿疹を手当てします。
最近になって患部をわざと乾燥させないようにする湿潤療法(しつじゅん・りょうほう)というのが注目されていますが、それとは違い、以下の方法は、あくまでも今現在の一般的な方法です。
1) リント布に亜鉛華軟膏をヘラで塗り広げる
↓
2) 湿疹の重症度に合った強さのステロイドを適量、患部に塗る
↓
3) その上から亜鉛華軟膏を塗ったリント布を貼り付ける
↓
4) さらに上から包帯を巻く
これで炎症がおさまり、通常、1~2週間ほどで、すべすべの肌に戻っていきます。
もちろん、肌がきれいになった後も、ていねいなケアをしていかないとすぐに症状がぶり返してしまうことも多いので、その後も保湿剤でフォローアップしていきます。
亜鉛華軟膏には、皮膚を乾燥させる作用があるので、滲出液がおさまった時点で使用を中止するか、ほかの保湿剤に切り替えるのが原則です。
また、もう1つ注意してほしいのが、リント布などのように患部を密閉する治療では、ステロイドの吸収が良くなること。
吸収がいいと薬の効きがよくなるのはいいのですが、注意しないとそれだけ皮膚萎縮などの副作用も出やすくなります。
「皮膚萎縮がおこっているかどうか」は、素人目にはなかなかわかりません。
だからこそ、患部を密閉してステロイドを使っているような時は、特に注意して、ていねいな再診を受けることが大事になってきます。