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「子どものQOLを考える」ということ


こんにちは。橋本です。


一般的には、あまりなじみがないかもしれない、QOL(キュー・オー・エル)という言葉。


あえて、日常的に使う必要がある言葉では、ないかもしれません。


それでも、このQOLというキーワード。とても大事な「ものの見かた」「考えかた」を含んでいるので、このブログでもよく使っています。


ただ、ここまで「QOLとは何か?」について、詳しく取り上げてきませんでした。


なのでここで一度、「QOLとは何か?」ということにクローズアップして、少しみていこうかなと思います。


QOLとは?


 


QOLとは?……ごく普通の生活をさせたい


QOL(キュー・オー・エル)とは:


英語の Quality Of Life(クオリティ・オブ・ライフ)を頭文字で略したもの。

ひとりひとりの人生の内容の質、もしくは社会生活における質のことを指す。

個人がどれだけ人間らしく、自分らしい生活を送り、人生に幸福を感じているか、ということを尺度としてとらえる考え方がQOL。

QOL の「幸福」とは、身心の健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、十分な教育、レクリエーション活動、スポーツ、レジャーなどの様々な要素からもたらされると考えられる。


QOL に対する取り組みは、1970年代以降、医療の歩みとともに発展してきました。


もともと、医療は人を見るものであって、医学は病気を見るものだとする考え方が中心の世界。


ところが、病気を治すことだけにとらわれるあまり、症状はよくなるものの、社会的にみて「人間らしい生活」が損なわれることに疑問がおこりました。


たとえば、わかりやすく極端な例を出すと、


治療によって、てきめんに、癌(がん)が小さくなった

    ↓    

副作用で歩けなくなった


という場合。


これでは、治療によって QOL が高くなったとは、素直にいえないわけです。


むしろ低下したと言うべきかもしれないですね。


つまり、QOL の向上を目的とすると、「その治療は、本当に必要なのか?」という疑問がおこるわけです。


「 QOL の向上」というのは、何も急に新しく生まれた理論ではなく、ただ単に人間が本来持つ、「ごく普通に生活をしたい」という感情をあらわしているのかもしれませんね。


 


QOL は目に見えにくい


ただし、QOL が高いか、低いかというのは、その人によって感じ方が違います。


周りの人からは、QOL の高い充実した生活を送れているように見えても、本人は現在のQOLにまったく満足していないというケースもありえるわけです。


そういう意味で、QOL は人が決めるものではなく、本人が感じるもの。


ここが「生活水準」といわれるものと、大きく違うところ。


生活水準は、個人の収入や財産から計算をすれば、ある程度、他人と比較できますが、QOLとなると、そうはいきません。


つまり、QOL というのは、じつは実態がつかみにくいものなんですね。


これをしたから QOL がよくなった、もしあれをしていたら QOL がめちゃくちゃになっていた、というのは、その人の現在の結果からは、比較しにくい面も多くあります。


 


「 QOL を高める」ものにも…


QOL の向上をねらうことは、「よく生きる」ために、とても大切なことです。


しかし、注意してほしいのは、どんなケアや治療でも、QOL には二面性あること。


表(おもて)と裏(うら)があることに、注意してほしいんですね。


どんなケアでも、QOL を高める一方で、少なからずQOLを低下させる面があるのが、普通です。


注意をしないと、ときには、QOL を高めるようにみえて、じつは、QOL を大きく低下させるものもある。


実際には、「これをすればQOLが高くなる」とか、「これは、QOLにとって悪い」とか、そう単純にはいえないことのほうが多いのです。


足に不調が出て、ゆっくりとしか歩けない人、歩くのがつらそうな人には、「車いすを使えばいいじゃん」と単純に思いがちです。


が、実際には、人によっては自分の足で歩けないことにプライドが傷つき、QOL がいちじるしく低下するケースもありうるわけです。


 


QOLの「光と影」のバランスをとる


たとえば、アトピーの治療に保湿剤を使うとき。


これを単なる症状を治すという目でみると、「カサカサ肌をなくす」ということが大きいですよね。


視点を QOL に移すと、少々意味が違ってきます。


北風がつらくないので、外出しやすくなる

水を触るときに、あかぎれに対する不安がなくなる

肌がきれいになって、自分に自信が持てる


こうやって、QOL の向上だけを取り上げて見ると、「保湿剤を使わない手はないな」と、保湿剤ですべてが解決するかのように過信してしまいます。


先ほどいったように、普通のケアには、QOL の二面性があります。


保湿剤でいうと、「塗る」という手間、それから時間がかかるということ。


そして、保湿剤を買うという、経済的負担。


だから、QOL の二面性、そして効果をみながら、バランスのいいケアを見つけていくことが大事なんですね。


ここの「効果をみながら」という、効果をたしかめていく根拠。


この根拠として、このブログでは一貫して、広く公開されている「科学」という知識を利用しています。


効果のわからない「妖怪」のような治療法が住むほらあな。


そこを少しでも明るく照らしていこうという試みが、科学だと考えているからです。


 


治療に熱中すると、QOL を忘れてしまいがち


「誰にとっての QOL なのか?」


ともすると、こういうことって、忘れがちです。


極端な治療法にのめりこむと、「この治療法がしたい」ということが、いつしか目的になり、QOL の向上が置き去りにされることがあります。


たとえば、


根拠にとぼしい食事制限

根拠のない長時間の入浴法

植物は絶対に安全と、根拠なく体に塗りつける治療法

高価な水を飲み続ける治療法


こういうものですね。


QOL を考えないということは、結果的に、生活する中で子どもに我慢をしいることになってしまいます。


治療では、症状をなくすことと同時に、生活する中でおこる「つらさ」を、なるべくなくしてあげること。


QOL を高めてあげることが、重要になってきます。


そして、独りよがりな治療に走らないこと、「誰にとっての QOL なのか?」を考えることが、さらに重要になってくるわけですね。


QOL:子どもの笑顔を最優先にする


 


子どもの笑顔を最優先にする


子どもの QOL を考えること。


それは、普通に生活することの素晴らしさを実感するプロセスでもあります。


QOL なんていうと、なんだか少し難しくい言葉ですが。


QOL を最優先に考える


これってカンタンにいうと、結局は、


子どもの笑顔を最優先にする


ということと、同じだったりします。


だから、取り立てて難しい考えかたではないわけです。


最終的な子どもの QOL を考えながら、最善の治療をみつけていく。


将来をになっていく子ども、無限の可能性を持つ子どもにとって、こういうことが一番大事じゃないのかなあ、って思うんですね。


今という時間には限りがあり、時間はあとからは取り返せないという気持ちがあれば、なおさらかもしれません。


 


 


 


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