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子どものアトピー性皮膚炎治療、スキンケアなどについての正しい知識を、わかりやすくまとめています。

「コクラン」ってなに?…誰もが本当に効果のある最善のケアにめぐり会えるように


こんにちは。橋本です。


健康に関する情報を耳にする、目にする機会というのは、ここ最近、年を追うごとに増えているのも、すでに多くの人が実感しているかと思います。


普段何気なく目にするブログの記事にしてもそうですよね。


だだし。


その内容に関しては、いい加減な中身のものから、しっかりしたものまで、情報の質はバラバラ。


情報の受け手としては、できれば、しっかりした、たしかな中身の情報を選んでいきたいものですよね。


そこで、質の高い情報を得るために出てくるキーワードの1つに、「コクラン」というものがあります。


なかなか聞き慣れない、この「コクラン」とは、いったい何なんでしょうか?


コクラン:ニュース


 


「コクラン共同計画」とは


コクランというと、山歩きが好きな人は、黒い蘭(ラン)…小さな黒い花を咲かせる野生のコクランを思い浮かべるかもしれません。


黒蘭:野生に咲く花


しかし、健康、医療の世界で「コクラン」というと、コクラン共同計画(The Cochrane Collaboration)のことを指します。


人間が生まれてから存在しているであろう医療の長い歴史の中でも、「コクラン共同計画」ができたことは、ある意味「最大の革命」といってもいいくらいのこと。


それぐらい「コクラン共同計画」ができたことは、重要な出来事だったんですね。


「コクラン共同計画」とか、堅苦しい専門用語で「なんだか難しい話だなー」と思ってしまいますが、なんのことはない。


「コクラン共同計画」とは、ひと言でいえば…


様々な健康法、治療法、薬などが「本当に効果があるのか?ないのか?」正しい評価をして、その結果を世界に伝える


という国際的なプロジェクトのことです。


つまり、・・・


コクラン共同計画すべての治療法・健康法の信頼性をひとつひとつ検証するための国際研究組織


であるわけです。


「今、治療の選択肢にある、この治療法に効果があるのか?ないのか?」


その裏づけとして、現場のお医者さんたちが最も信頼しているもののひとつ。


それが、コクラン共同計画です。


「コクラン共同計画」は、日本語に訳した名称ですので、英語のままストレートに「コクラン・コラボレーション」(The Cochrane Collaboration)とよばれることもあります。


コクラン共同計画がはじまったのは、1992年。


当初は、イギリスの国民保健サービス(National Health Service:NHS)…日本でいうところの国民健康保険の組織に付属する形で、実験的に立ち上げられました。


 


「アーチー・コクラン」が夢みたプロジェクト


コクラン共同計画の「コクラン」は、人の名前に由来しています。


「コクラン」は誰の名前かというと、アーチーボールド・コクラン(Archiebald Cochrane, 1909~1988)。


一般には名前を縮めて、アーチー・コクランとよばれているイギリス、スコットランドの医師です。


アーチー・コクラン


このアーチー・コクランが提唱して立ち上げられたプロジェクトなので、「コクラン共同計画」と名付けられたわけです。


「治療の判断材料になる科学的根拠をあきらかにして、その結果を世界中に届ける」


アーチー・コクランが夢見たこの夢を現実させようというのが、コクラン共同計画のスタートなのです。


コクラン共同計画の本部はイギリス、オックスフォード大学。


現在では世界13カ国15カ所にコクランセンターが設立。


日本も含め世界中100か国以上、28,000人以上のボランティアによって運営されています 1)


 


メンバーはボランティアで参加する


組織の最大の特徴は、いわゆるNPO(えぬ・ぴー・おー:Non Profit Organization)とよばれる、独立した「民間非営利団体」の形をとっていること。


つまり、活動によって利益を求めないため、特定の団体、利権による圧力に左右されないような運営方式になっているのです。


同じく健康に関する世界的な組織として有名なWHO(だぶる・えいち・おー:世界保健機構)でさえ、裏では政治的なかけ引きが影響しているとも言われています。


それに対し、コクラン共同計画は、そのような政治的なかけ引き、さらには、どんな団体にも左右されない。


だからこそ、完全に中立な立場でモノが言える。


コクラン共同計画は、本当の意味で正しく「健康法」「治療法」「薬」といったものを評価できる組織なんですね。


「国が文句を言ってくるから、正しいことが言えない」


「製薬メーカーにとって都合の悪いことは公表しない」


こんなことがおこらないような仕組みに、そもそもなっていますよー、というわけなんです。


このあまりにもまじめすぎるほど正確さを追求していることによって、世界の医療関係者から絶大な信頼を置かれている。


それが、コクラン共同計画です。


コクラン共同計画のおもな活動は、コクラン・ライブラリを構築することです。


 


「コクラン・ライブラリ」とは


コクラン・ライブラリは、直訳すれば「コクラン図書館」、コクラン共同計画が発行しているデータベースです。


データベースとは、「整理されたデータの集まり」のことで、誰でもアクセスできるようにインターネット上に公開されています。


データベースの中心はコクランレビューCDSR:Cochrane Database of Systematic Reviews)とよばれる、コクラン共同計画により作成されたシステマティックレビューです。


つまり、「コクラン・ライブラリ」は…


コクラン共同計画が作ったコクランレビュー(科学的根拠の頂点である「システマティックレビュー」の方法で作ったレビュー)を膨大に集めた図書館


というわけです。


システマティックレビューは…


1) 1つの治療法やケアに関する論文をすべて集めて、

2) 質の悪い研究は除外し、質の高い研究の結果をまとめて、

3) 結論を出す


…という作業で作られる論文です。


これがじつは、想像以上に手が掛かったりします。


1件のコクランレビューを作るのに、ときには何千件の論文、何万ページの論文の内容を読んでデータを解析していくという作業をしなければいけないことも。


これをボランティアでやるんですから、すごいとしか言いようがないですよね。


データベースは、現在では1か月に一度更新されるようになり、レビューの数もどんどん増えています。


総数は、2012年12月の時点で7,626件にもなっています。


コクランレビューは、現場の医師が絶大な信頼を置くぐらい厳密なもの。


そのため、日本では数多くの大学や病院が、コクラン・ライブラリと法人契約を結んでいます。


登録している関係者には、全文(フルテキスト)がダウンロード購読の形で販売されています。


「じゃあ、素人はレビューの内容を読むことはできないのか」というと、そうではありません。


それぞれのレビューの要約 (アブストラクト) については、コクラン・ライブラリのサイトやPubMed(ぱぶめど:医学論文検索サービス)を通じて、広く一般に無料で公開されています。


 


コクラン共同計画のロゴ


コクラン共同計画のロゴは、独特の奇妙なデザインをしています。


コクラン共同計画:ロゴ


このロゴには具体的な意味があって、あるレビューをデザインにしたものなのです。


あるレビューとは、「早産になりそうな妊婦にステロイド薬を投与すると、新生児の呼吸不全を予防できるかどうか?」というもの。


その予防法を検証する複数の研究データをまとめて解析(メタアナリシス)した結果をグラフにしたものが、ロゴの中心になっています。


このグラフを、コクラン・コラボレーション(Cochrane Collaboration)の2つの「C」で囲んだデザインが、コクラン共同計画のロゴです。


 


常に「最新にバージョンアップ」


コクラン・ライブラリは、レビュー作成後も常にその内容を見直す作業を行っています。


なぜかというと、どんなに正確に、厳密にレビューを作っても、その後におこなわれた研究や試験で、新たな事実がみつかったりすると、結論が変わってくる可能性があるからなんですね。


新しい研究がおこなわれれば、その内容も追加してレビューを更新する。


そうした、「つねに最新化する」ことにこだわっているのも、コクランレビューの特徴です。


コクラン共同計画は、いつでも新しいエビデンス(科学的根拠)を探し、それをレビューに組み込み続けているのです。


1) レビューを「つくり」、

2) 「手入れし」、

3) 「誰でも読めるようにする」


ということを繰り返しているのが、重要なコクラン共同計画の活動です。


 


資源をムダなく


コクラン共同計画の目的は、「できる限り多くの命を助ける」「できる限り多くの人が健康な生活が送れるようにする」ことです。


エビデンス(科学的根拠)のレビューがシステマティック(適切・公平な形式にしたがって)におこなわれ、つねに更新される。


もし、このようなコクラン共同計画の役目が達成されないと、ヘルスケア…治療法や健康法の効果は適切に知らされず、ヘルスサービス(医療など)は、間違って提供される可能性が多くなってしまいます。


ともすると、効果があやふやな治療をしたり、高価な薬を多用したりしてしまうことにもつながりかねない、というわけですね。


医療にかかわる人材、それから医療にかけられるお金…そういった、医療にかけられる「資源」には限りがあります。


その限りある医療資源を大切に、ムダなく使うためにも…


「安価で実際の役に立つものを使う」


医療をこの方向へ導くようにサポートするのも、コクラン共同計画の大きな役割です。


たとえば、2012年10月のレビューでは、「一般健康診断には効果がない」と結論づけられ、国民医療費にも大きな影響を与えかねない健康診断の必要性に疑問が投げかけられています 2)


もちろん、何を検査するか目的を持って健康診断をすることは、重大な病気の早期発見につながることは、いうまでもありません。


医療費:削減


 


医療の質を向上させるために


こういう話を聞くとよく「つまり、コクランの最終目的は、医療費削減なんですね」と思う人もいます。


じつは、これは誤解で、コクランがもっと優先しているのは、「医療の質」です。


人間には、自然治癒(しぜん・ちゆ)という、「何もしないのに病気が治ってしまう」という力が生まれながらに備わっています。


必要のない治療や薬をほどこすことによって、この人間の治癒力を邪魔してはいけない、という考えが「アーチー・コクランの夢」の根本にあります。


ただ、病気や症状によっては、治療や薬をほどこさないと、えらいことになってしまうことも、当然ありますよね。


必要な時に、必要な治療をする。できる限りムダな治療はしない。


それが、より適切な治療、質の高い医療というわけです。


EBM(いー・びー・えむ:科学的根拠に基づく医療)は、「患者に少なくとも害を与えない」のを、まずは最低限の目標としています。


つまり、一方では「必要以上の検査・治療を避け」て、一方では「十分な検査・治療をおこなう」のが、科学的根拠に基づいているよね、と言っているわけなんです。


言うのはカンタンだけど、このさじ加減は微妙で難しいもの。


そこへ適切な判断材料を与えようというのが、コクランレビューの役割です。


お医者さんにとって、患者に対してより良い医療を行うための1ステップが、「コクランレビューを利用する」ことでもあるのです。


 


コクランレビューの例を挙げると


治療法を検証するランダム化比較試験の実施数は、年々、うなぎ昇りに増えています。


検証する治療法、薬、健康法の種類も様々。


それだけ、そのような比較試験をシステマティックレビューとしてまとめる立場であるコクランレビューも、どんどん増加しています。


そうすると、当然のように、コクランレビューの発表を伝えるニュースも、数多くなってくるわけですけども。


コクランレビューは重要なものが多く、その例を挙げていくとキリがありません。


なので、ここでは、2つだけコクランレビューの例を挙げてみます。


 


1) タミフルの効果と安全性に疑問あり


1つは、2012年1月18日に新聞で報道されたコクランレビューです 3)


医学研究の信頼性を検証する国際研究グループ「コクラン共同計画」(本部・英国)は17日、インフルエンザ治療薬タミフルが重症化を防ぐ効果を疑問視する報告書を発表した。


タミフルは世界で広く使われ、特に日本は世界の約7割を消費している。


各国が将来の新型インフルエンザの大流行を防ぐため備蓄を進めており、その有効性を巡り議論を呼びそうだ。


報告書は、製薬会社に有利な結果に偏る傾向がある学術論文ではなく、日米欧の規制当局が公開した臨床試験結果など1万6000ページの資料を分析。


タミフルの使用で、インフルエンザの症状が21時間ほど早く収まる効果は確認されたものの、合併症や入院を防ぐというデータは見つからなかった。


報告書は「当初の症状を軽減する以外、タミフルの効果は依然として不明確」と結論、「副作用も過小報告されている可能性がある」と指摘した。


(2012年1月18日夕刊 読売新聞)※太字強調は当ブログによる


カンタンにいうと、インフルエンザに対しての特効薬と思われていたタミフルの効果には「疑問がある」と結論づけているわけです。


レビューを作成するにあたって、製薬メーカーによる臨床データの提供が非協力的だったこと(都合の悪いデータを隠していないか?)。


それから、多額の費用をかけて、タミフルの備蓄を行う各国政府の取り組みが、予算のムダづかいではないか、といったこと。


こういった問題が、厳格なコクランレビューがおこなわれたことで、初めて明確になったのです。


 


2) いちばん優れた歯ブラシはどんなヤツ?


もう1つ例に挙げたいコクランレビューは、2005年2月16日に発表されたもの 4)


普通にゴシゴシ歯ブラシを使って「手で歯を磨く」のと、「電動歯ブラシで歯を磨く」のと、どっちがいいか?を検証したコクランレビューです。


このレビューでは、3,855人の対象者からなる45件の試験データをまとめています。


結論は…


回転振動型の電動歯ブラシは、手用歯ブラシよりも歯垢と歯肉炎を減少させる


他の形式の電動歯ブラシの場合は、手用歯ブラシに対して優れた効果があるかどうかはわからない、ということ。


歯ブラシの比較に関しては、現在のところ、これがコクランレビューが伝える結論です。


 


デタラメな効果に惑わされないために


ただし、先ほどにもいったとおり、コクランレビューが「完璧」「絶対」というわけではありません。


新しく追加されてくる研究によって、レビューの結論がわずかに変わったり、ときには全く違った結論になってしまうことも考えられます。


また、治療法にこうした科学的根拠があっても、患者さんの症状や置かれた状況によっては、レビューの結論とは違った結果になることも、十分ありえます。


でも、世の中を見渡すと…。


健康や医療に関しての情報(治療法・薬・健康法)は、あからさまにデタラメなものから、事実に沿った正確なものまで、様々なものが存在している。


それが、今の現状じゃないかな、と。


それなりの理屈をつけたり、プラセボ効果があると、ムダな治療でも効果があるかのように思えてしまいます。


そのようなものに惑わされないためにも、最新のコクランレビューを参考にするのも、健康を管理していく上では賢い行動のひとつではないのかなと思います。


コクラン共同研究:利用


 


コクランの意義が理解できれば…


たとえば、●●という治療法をネットで検索するなら、「●●」「効果」とか「●●」「体験談」といったキーワードを使うことも多いかと思います。


そこを、「●●」「コクラン」という検索のしかたをすると、より科学的根拠の高い情報を読むことができるかもしれないですよね。


それから、コクラン共同計画の意義を知っていれば、ニュースの読み方も変わってきます。


ニュースで報道される医学的研究の結果が、「マウスの実験」によるものなのか、それとも「コクランレビュー」によるものなのか?


その差で、耳をダンボにして聞いたほうがいいのか、さらっと流して聞く程度でいいのか?


意味合いが大きく変わってくるわけですね。


 


 


 


関連記事:

「標準治療」にまつわる誤解

「体験談」という落とし穴

「対症療法ではアトピーは治らない。体質改善すれば治る」は本当か?

「学会で発表」された効果なら、間違いないのか?


参考文献:

1) Claire Allen, Kiley Richmond: The Cochrane Collaboration: International activity within Cochrane Review Groups in the first decade of the twenty-first century. J Evid Based Med 4(1): 2-7, 2011.

2) Lasse Krogsboll, Karsten Jorgensen, Christian Larsen, et al: General health checks in adults for reducing morbidity and mortality from disease. Cochrane Database Syst Rev. 10: 2012.

3) Tom Jefferson, Mark Jones, Peter Doshi, et al: Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database Syst Rev. 1: 2012.

4) Peter Robinson, Scott Deacon, Chris Deery, et al: Manual versus powered toothbrushing for oral health. Cochrane Database Syst Rev. 4: 2007.


「漢方薬」と「一般的な医薬品」はどう違うの?(2つのポイント)


こんにちは。橋本です。


「漢方薬」と「普通にもらう病院の薬」って、どう違うんだよ?


急にこう聞かれても答えに困ってしまうかもしれませんが……


漢方薬 ⇒

ゆっくり効く体質改善できる長く続ける必要がある副作用がない


一般的な医薬品 ⇒

すぐに効いてくる効き目が強い長く続けると体に悪い副作用が大きい


こんなイメージを持っている人も多いかと思います。


こういったイメージは、ある部分では当たっているのですが、「そうとは言い切れないよ」という部分もあるのです。


では実際に、漢方薬、それと病院でもらうような薬……この間で大きく違う点を2つ。


基本ともいえる2つのポイントをおさえておきたいと思います。


漢方薬:医薬品


 


漢方薬とは


漢方薬は、いくつかの生薬(しょうやく)を組み合わせて作られています。


生薬とは、薬としての効果があると思われる、自然から採取した植物動物鉱物などを元に、乾燥などさせて作ったもの。


その多くは、植物の草、木、根、皮などを乾燥させたものです。


「自然のものをそのまま用いる」という点では、薬でありながら、ものによっては、食品に近い性質を持ち合わせているともいえるんですね。


たとえば、よく知られている漢方薬「葛根湯」の成分は、次のような割合で配合されています 1)


葛根湯の成分:

葛根4-8、麻黄3-4、大棗3-4、桂皮2-3、芍薬2-3、甘草2、生姜1-1.5


葛根(かっこん)は葛(くず)と呼ばれる植物の根っこ。


麻黄(まおう)は、砂漠に地をはうように育つ植物の茎。


大棗(たいそう)は、ナツメとよばれる植物になる実。


桂皮(けいひ)は、シナモンとよばれる香辛料にもなる木の枝や皮。ニッキともよばれます。


芍薬(しゃくやく)は、きれいな花を咲かせるシャクヤクの根っこ。


甘草(かんぞう)は、カンゾウとよばれるマメ科の草の根っこ。


生姜(しょうきょう)は、一般的にはショウガとよばれる根茎。


葛根湯:配合


このように、漢方薬は、決められた割合で、複数の生薬をあらかじめ組み合わせて作られた薬なのです。


では、こうした漢方薬に対し、一般的な医薬品はどうでしょうか?


 


病院の薬は化学合成したもの?


じつは、一般的な医薬品にも、木々の成分、動物、カビや菌など、天然物を元にして作られている薬も数多くあるのです。


しかしそのほとんどは、自然由来のものから、「効き目のある成分」だけを抽出、精製して作られます。


たとえば、漢方薬の「葛根湯」の成分のひとつである麻黄(まおう)から抽出した物質に「エフェドリン」というものがあります。


エフェドリンには、気管支(きかんし)を広げる作用があり、コンコン続く(せき)をしずめる働きがあるんですね。


かつては、気管支喘息の特効薬としてこの「エフェドリン」が利用されていました。


また、そのような「効き目のある成分」を、化学的に合成して薬を製造するパターンも実際の医薬品には多いですし、「薬といえば化学合成品」というイメージも強いかと思います。


エフェドリン(エフェドリン塩酸塩)よりもマイルドに作用するように化学合成されたものに、dl-メチルエフェドリン塩酸塩(でぃーえる・めちる・えふぇどりん・えんさん・えん)があります。


dl-メチルエフェドリン塩酸塩は、エスタックイブ、パブロンゴールド、新ルルA錠など、市販されている多くのかぜ薬にも配合されています。


風邪薬:新ルルA錠


こうした合成したものも含めて、医薬品は 効き目のある成分だけが、ぎゅっと凝縮(ぎょうしゅく)されているから、自然由来そのままの形よりも「効きやすくなっている」ともいえるわけです。


そして、精製することにより、体によくない影響を与えるような不純物も取り除ける。


さらに、薬の純度が高いことによって、品質のばらつきが少なくなる。


もっというと、合成のしかたをいろいろと工夫することによって、薬の効き方、副作用の出かたを変えることができる。


こういった点が、現在製造、開発されている一般的な医薬品のメリットでもあるところです。


 


「症状」によって、処方する薬を決める


そして、もうひとつ。


「漢方薬」と「一般的な医薬品」の大きな違いといわれているのは、「何に対して薬を使うのか?」ということ。


薬の処方のしかた、ですね。


病院の診察では、お医者さんは患者さんをみて、「どんな病気か」を突き止める。


まずは、それが治療のスタートだと思います。


診察で病名をはっきりさせて、その病気を治すための薬を処方するのが普通ですよね。


つまり、一般的な医薬品は、患者さんの「症状」によって、処方する薬を決める。


1つの症状に対して、どの薬を使うか決めるわけです。


 


漢方薬は、「証」に合わせて処方する


それに対して、漢方薬は、症状だけでなく、(しょう)に合わせて、処方する薬を決める 2) というのが特徴です。


証というのは、「体の状態」のことで、ニュアンス的には「体質」に近いものですね。


ですから、漢方を処方する先生は、まず患者さんのこの「証」を診てあげるわけです。


証は、問診、脈、舌、腹診などを参考にして診断されます。


もちろん、アトピーでは、皮膚の状態をみることも重要なポイントです。


漢方薬を適切に使うには、こうした証(しょう)……体の状態をみることがまず最初、ということになります。


漢方薬の診察:証


 


漢方薬でよけいに症状がひどくなる?


……ということはですよ。


証が違えば、あの人と同じ症状でも処方される漢方薬が違ってくる、というのが十分ありえるわけなんですね。


漢方薬の処方が証に合っていないと、伝統的な中国医学では誤治(ごち)をおこすことがあるといわれています。


誤治とは、治療が適切でなかったために、症状が悪化したり、新たな病気を増やしてしまうような状態のこと。


だれでもかれでも、「風邪を引いたなら葛根湯」としてしまうと、誤治…たとえば、風邪がひどくなったり、調子が余計に悪くなったりということも考えられるわけです。


こんな誤治をおこさないためにも、漢方薬では「証を合わせることが大事ですよー」といわれているんですね。


漢方薬を適切に使うには、まずは証を診てもらい、その結果に合わせた漢方薬を処方してもらう。


症状にあわせて薬を処方する一般的な医薬品とは、ここが大きく違います。


 


 


 


関連記事:

最善のアトピー治療法とは?

アトピー性皮膚炎に効く健康食品はありますか?

漢方薬って、ほんとにアトピーに効くの?


参考文献:

1) 厚生労働省医薬食品局: 一般用漢方製剤承認基準. 7, 2011.

2) 夏秋 優: 皮膚科における漢方療法の現状. MB Derma 74: 50-55, 2003.


2013年、新年明けましておめでとうございます


おはようございます。橋本です。


あけましておめでとうございます。


新しい2013年。今年もよろしくお願いします。


ここ名古屋は、朝もほどほどの寒さで勘弁してくれているようでありまして、おてんと様も気持ちよく晴れ上がっております。


私は、あいかわらず例年通り、熱田神宮に詣でているのですが、無数の両脇に並ぶ露店を越え、鳥居をくぐると、朝からきしめんのダシのなんともいい匂いが、鼻をくすぐってきます。


この気持ちのいい朝。


年の始めとしては、これ以上、縁起がいいったらありゃしません。


今年もゆるくゆるく、ブログを続けていきますので、よろしければお付き合いください。


では、今年もはりきっていきましょう!


橋本夏樹


2013年初詣:熱田神宮


 


 


 


 

2012年、今年1年ありがとうございました


こんばんは。橋本です。


今年も残すところあとわずか。ようやく終わろうとしています。


このブログは、2011年の6月に始めましたので、1年以上続けてこれたということになります。


今年後半、バタバタと忙しい中、国内的にも、世界的にも、国のトップが変わるところが多かったようで、いいか悪いかは別として、来年は大きな変化がおこることもありえる年なのかな、と。


まあ、それ以上難しいことは私には考えつかないので、あとちょっとだけ残された年末を存分に面白おかしく、楽しく過ごさせていただきたいと思います。


あなたにとって、来年も希望があふれる年でありますように。


どうぞ、よいお年をお迎えくださいませ。


橋本夏樹


2012年:年越し


 


 


 


 

冬なのに「アレルギー性結膜炎」で目がかゆい?


こんにちは。橋本です。


一般的に、目がかゆくなるアレルギー性結膜炎(アレルギーせい・けつまくえん)というと、花粉の飛ぶ時期…とくに春になるとおこる病気だと思われがちです。


しかし、アレルギー性結膜炎は、寒い冬にも悪化する要素がひそんでいる病気。


つまり、「アレルギー性結膜炎がひどくて目がかゆい!」っていうのは、冬場でも十分ありえるのです。


冬:アレルギー性結膜炎


 


冬に飛ぶ花粉とは?


アレルギー性結膜炎は、アレルゲンによって、白目が充血したり、まぶたの裏の粘膜にブツブツができたりする病気。


まぶたがはれたり、目やにや涙が多くなったりもします。


アレルギー性は、かゆみが強いのが特徴です。


春にひどく悪化するアレルギー性結膜炎は、花粉が原因、アレルゲンであるケースが多い、というのももはや常識になっていますよね。


くしゃみ、鼻水、鼻づまりがやっかいな、アレルギー性鼻炎とあわせて、花粉症とよばれている症状です。


「冬は花粉が飛んでないから花粉症はおこらない」


そう思われがちですが、冬もわずかながらですが、花粉が飛んでいることが観測されています。


たとえば、イネ科の雑草は、花粉が夏や秋にとくに多く飛散し、冬にも少ないながら飛散します。


ブタクサとよばれる雑草も同様に、夏や秋に多く飛散し、冬にもわずかに飛散することが知られています。


参考サイト:

花粉カレンダー(政府広報オンライン)


こうして、花粉は冬にも飛んでいるわけですね。


とはいっても、より多く飛ぶのは、やはり他の時期です。


とくに春、そして夏、秋です。


だから、花粉によるアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎が、冬に一気にひどくなるとは、通常、考えにくいんですね。


ブタクサ


 


冬なら、原因はハウスダストかも?


目がかゆい。冬にひどく悪化するアレルギー性結膜炎…。


その大きな原因のひとつは、ハウスダストだろうと考えられます。


ハウスダストといわれると、あのモコモコした「わたぼこり」がチクチク刺激して、目がかゆくなるんだろう、と思ってしまいがち。


ですが厳密にいうと、そうではありません。


ハウスダストとは、日常生活でできあがるチリやホコリ。


その中身は、繊維くず、髪、フケ、ペットの毛、昆虫の死がい、フン、砂、排気ガス、食べかす、カビ、細菌などなど…すべてをひっくるめたものです。


参考サイト:

勘違いされやすい「ハウスダスト」の意味


そのハウスダストの中でも、とくにアレルゲンになりやすいものは、ダニの死がいフンです。


ただ、夏や梅雨時期に比べ、冬はダニが増えにくい時期のはずです。


ところが、このダニの死がいやフンをはじめとしたハウスダストが舞い上がりやすい状況。


それが冬にはあるのです。


ハウスダストの中身


 


温風がハウスダストを舞い上げる


冬は寒いので、ついつい窓は閉めっぱなし。


エアコン、ファンヒーターなどを使う家庭も増えてきます。


そうすると、その暖かい風に乗って、家のホコリが舞い上がります。


その温風がダイレクトに子どもに当たれば、そのホコリが目に入るなんてことも、当然考えられるわけです。


また、温風の当たるところは、高温を好むダニも繁殖しやすくなり、それもホコリとともに舞い上がります。


「冬に目がかゆくてたまらない…」


そんな場合は、こうした理由によるアレルギーも考えられるんですね。


 


「目のまわり」と「目」…それぞれの治療


で、「目がかゆい!」というと、すべて一緒くたにしがちですが、症状は人それぞれです。


大きくわけると、「目のまわり」のかゆみ、それと「目」のかゆみ。この2つにわけられます。


「目のまわり」のかゆみや湿疹を、専門用語でいうと、眼瞼炎(がんけんえん)、もしくは眼瞼縁炎(がんけんえんえん)とよんでいます。


眼瞼縁炎というのは、「瞼(まぶた)の縁(ふち)の炎症」という意味ですね。


それに対し、「目」そのものの炎症、かゆみが、アレルギー性結膜炎


アトピーをともなうアレルギー性結膜炎のことを、アトピー性角結膜炎(アトピーせい・かくけつまくえん)とよんだりもします。


つまり、ひとくちに「目がかゆい」といっても、かゆいのは


「目のまわり」なのか?(眼瞼炎)

「眼球」なのか?(アレルギー性結膜炎)

・ それとも両方なのか?


これを見極めて治療する必要があるんですね。


なぜかというと、「目のまわり」か「眼球」か、炎症がどこかで治療が変わってくるからです。


眼瞼炎であれば、おもに塗り薬を使って炎症をおさえた後、保湿剤でケアをしていきます。


目の周り:塗り薬


アレルギー性結膜炎であれば、おもに目薬(点眼薬:てんがんやく)や眼軟膏(がんなんこう)で治療していくのが普通です。


ステロイド:目薬


 


「いつまで経っても良くならない」にならないために…


たとえば、アレルギー性結膜炎でかゆくて目をこする。


それで目のまわりが湿疹になっていたとしたら…。


目のまわりを塗り薬で治すだけでは、アレルギー性結膜炎は良くならないはずですよね。


目の中の炎症は、おさまっていないわけですから。


そうなれば、せっかく治したまぶたも、またかいてしまう、なんてことの繰り返しになることも。


アレルギー性結膜炎は放置すると、思春期などでは、春季カタル(しゅんきカタル)という重症になってしまうこともあります。


春季カタルになると、症状もひどく、それだけ治療も難しくなってしまいます。


「眼瞼炎なのか?アレルギー性結膜炎なのか?」


これをきちんと見極めて治療することが、「いつまで経っても良くならない」にならないためにも大事なんですね。


なので、場合によっては、皮膚科と眼科など、複数のお医者さんに診察してもらったほうが、治療がスムーズにいくこともあります。


眼瞼炎:アレルギー性結膜炎


「目がかゆい」ということで、ひとまとめにされやすい「眼瞼炎」と「アレルギー性結膜炎」。


この2つをきちんと区別していくことで、より適切な治療、ケアができるんですね。


また、ウイルスによる結膜炎、いわゆる「はやり目」など、ほかの病気をアレルギー性結膜炎と勘違いしないためにも、専門のお医者さんに症状を診てもらうことは重要です。


 


冬のアレルギー性結膜炎:生活環境の対策


冬にアレルギー性結膜炎がひどくなる場合ですが。


ハウスダストによるアレルギーをおこしているとなると、目薬などを使って治療することも大事ですが、それだけでは症状を繰り返してしまうこともあります。


ファンヒーターなどで、ハウスダストが舞い上がっている中で生活していれば、症状が何度も繰り返すことも当然ありえるわけです。


ファンヒーター:子ども


そうならないためには…


ファンヒーターのまわりにカーペットをひかない

温風をカーテン側に当てない

温風が子どもに直接当たらないようにする

なるべく床付近から風を送るようなファンヒーター以外の暖房を使う

適度に掃除をする

時々、換気をする


などなど、温風やダニに対して、できる範囲で対策をしていくことも大事です。


「これで劇的に症状が改善する!」という方法はありませんが、ちょとした工夫でできることはしておきたいですね。


 


 


 


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