子肌育Blog アトピーに負けない生活。 -5ページ目

子肌育Blog アトピーに負けない生活。

子どものアトピー性皮膚炎治療、スキンケアなどについての正しい知識を、わかりやすくまとめています。

科学という「ともしび」をつないでいく重み…山中伸弥教授のノーベル賞受賞を祝福して


こんにちは。橋本です。


2012年のノーベル生理学・医学賞が、先日10月8日に発表されましたが、この発表は日本にとって歴史的な出来事となりました。


言うまでもなく、受賞したのが、京都大学教授の山中伸弥(やまなか・しんや)iPS細胞研究所長(50)だったからです。


山中伸弥教授:ノーベル賞受賞


 


だって、初めての純国産の研究なんですよ


一般的には、日本人はそこそこノーベル賞を取っているというイメージがあるかもしれません。


たしかに日本は化学賞に強く、これまで7人を輩出しています。


しかし、生理学・医学賞はというと、これまで利根川進教授ただひとり。


それも利根川教授の受賞は、スイスで研究した内容でアメリカ在住時に受賞したものです。


「純国産」の生理学・医学賞は、これが初めてといってもいいのかな、と思うんですね。


「日本で生み出された研究」として、歴史的に大きな意味のある受賞だということを、きっちり押さえておく必要があるとも思っています。


そして、日本の医師がノーベル賞を受賞したのも、これが初めてです。


 


教科書の「常識」を書き換える発見


2012年のノーベル生理学・医学賞は、2人の共同受賞ということで、もう1人の受賞者は、ジョン・ガードン英ケンブリッジ大名誉教授(79)。


「何度も分裂を繰り返した成熟した細胞は、もう元に戻らない」


この学校の教科書にも「常識」として書かれている事実をひるがえす大きな発見をしたのが、ジョン・ガードン教授。


そのジョン・ガードン教授が開拓した研究をもとに、その後、人工多能性幹細胞(じんこう・たのうせい・かんさいぼう)…。


その後、様々な能力を持った細胞になることができる、タネとなる細胞。


そう。もうニュースでおなじみのiPS細胞(アイ・ピー・エス・さいぼう)を世界で初めてマウス、さらにヒトの皮膚から作製する方法を確立したのが、山中伸弥教授です。


まさに、教科書の内容を書き換えなければならなくなるほどの発見です。


ここまでの発見は、そうあるものではありません。


大人の皮膚の細胞を「リセット」させて、胎児のような「多能性」を持った細胞にすることに成功したのは、「超」を通り越すぐらい大きなインパクトのあること。


「人間がタイムマシンを手に入れた」と言っても、あながち間違いではないといわれています。


まるで映画の中のような話。


iPS細胞の不思議さを、山中教授自身は、著書でこう話しています。


iPS細胞から作った心筋細胞がドクッ、ドクッと波打つ様子をはじめて見たときの衝撃がぼくの脳裏に焼きついています。


もとは皮膚の細胞だったのに、心臓のように拍動していたのです。


iPS細胞から作られたさまざまな種類の細胞を見ると、いまでも不思議な気持ちになります。


- 山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた(講談社): 山中 伸弥, 緑 慎也, p.1より.


 


「まさに日本という国が受賞した賞」


山中教授の受賞決定後の会見で印象的だったのは、「私が受賞できたのは、国の支援のおかげだ」という発言です。


もう、あれですね。


「謙虚さ」が服を着て歩いてるような感じ。


会見を見ていて、山中教授をそう思わずにいられませんでした。


山中教授の発想、執念、ハードワークがなければ、実現できなかった成果……。


それを、偉ぶることなく、「無名の研究者だった私を、国が支援をしてくれたおかげで実現できた」と堂々と言い切ってしまう。


なんとも、器の大きさを感じるというか、なんというか。


山中教授自身の言葉で人生とiPS細胞について語った本、「山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた(講談社)」も読んでみました。


山中伸弥:著書


この本で感じるのは、山中教授の正直さ、誠実さ、一所懸命さ、です。


そうした人柄からか、ほかの研究者からの推薦状が多かったのも、ノーベル賞受賞につながったともいわれています。


本では、山中教授がどういう道のりで、iPS細胞の作製にたどりつき、iPS細胞について、どこまでわかってきたかがわかります。


しかも、なるべく必要以上の専門用語は避け、わかりやすい言葉を使って説明してくれる素人向けには現時点ではベストなiPS細胞の解説書です。


マウスの世話に明け暮れる日々。


それから、自分の研究に理解してくれる人がいなく、「もうちょっと医学の役に立つことをしたほうがええんやないか」とアドバイスを周囲から受けたというエピソードには涙が出てきてしまいます。


最初は整形外科の道を選んだが、ほかの医者が20分で終わる手術に2時間ほどの時間が掛かったりしたため、「ジャマナカ」といわれていた。


その挫折(ざせつ)から研究者の道に転向したことで、幸運にもiPS細胞の研究につながった、的なことがよく報道されています。


しかし、山中教授の話を実際に聞いてわかるのは、人より手術に手間取ってしまったのは、決して手先が不器用だったからではないこと。


患者さんのことを気遣う思いの強さと経験の少なさ、そこから来るプレッシャーから手間取っていたんだなということがわかります。


患者さんのことを気遣う思いの強さ。


研究者になってからも、この思いの強さ、想像力は変わることなく、「iPS細胞を実際の治療として実現させる」という大きな原動力にもなっているように感じます。


 


山中教授は優秀な研究者じゃない?


現在の研究環境について話を聞いてみると、山中教授はイメージ通りの「ひたすら研究を続ける優秀な学者」ではないことがわかります。


iPS細胞を医療として実現させる……そのプロジェクトのリーダー。


そういったほうがふさわしいしいのかな、と。


実際、問題や仮説を立てるのは山中教授であるものの、それを検証するための実験をするのは研究室に所属する若いメンバー。


彼ら、彼女らの大胆なアイディアも取り入れ、それがiPS細胞の早い実現につながったので、山中教授は、「(彼らには)足を向けて寝られません」と照れくさそうな感じで語っています。


山中教授の仕事は、すでに「研究そのもの」ではなく、研究をその後どうしていくのかという「将来のビジョン」を作っていくことのようなんですね。


iPS細胞を実際の医療として実現していくためには、あと何が必要か。


どんなステップを踏んでいけばいいのか。どんな問題点があるのか。


そういったものを明らかにして、はっきりした「ビジョン」をしめして、協力してくれる人たちを引っぱっていくのが、山中教授の大きな役割になっています。


だからこそ、山中教授は研究そのもの以上に、「プレゼンテーション(聴衆の前で発表すること)を重要に考えている」というのも、うなづけます。


大きな発見につながる研究も、研究資金が工面(くめん)できなければ、続けることができません。


たとえば、国からの研究への予算も、研究そのものの評価よりも、プレゼンテーションの良し悪しで判断されてしまうのも現実のようです。


プレゼンテーションを学んだことで人生が大きく変わったことを、山中教授は次のようなエピソードとして話しています。


1999年から4年間、私は奈良最先端科学技術大学院大学で、誰にも注目されずに「細胞の初期化」の研究を細々としていました。


もちろん研究費はほとんど出ていませんでした。


その状況が大きく変わったのは2003年のことです。


科学技術振興機構のプロジェクトに応募して、必死のプレゼンをした結果、年間5000万円の研究費が5年間支給されることになったのです。


このときの審査で、研究総括である岸本忠三先生(元・大阪大学学長)に、海のものとも山のものともしれない私の研究を「面白いじゃないか。芽が出そうな研究だ」と評価して頂いたことに、心から感謝しています。


- 「大発見」の思考法 (文春新書): 山中 伸弥, 益川 敏英, p.143より.


最後に研究を花開かせるか、最大の決め手になってくるのは、研究の内容だけではなく、教授のような「人の心を動かす」まっすぐな心なのかもしれません。


 


科学は「すべてオープン」にしている


山中教授のリーダーとしての責任は、私たちには想像できないくらい大きなものだと思います。


ノーベル賞を受賞したことで、それがより大きくなったのは、間違いないのかなと。


このような「将来のビジョン」を作っていく仕事は、研究だけの分野に限りません。


それは、たとえば、特許の問題だったりします。


せっかく研究がさかんになっているiPS細胞ですが、iPS細胞の利用方法について個人や企業が特許を取ってしまうと、自由にiPS細胞を研究できなくなってしまう……。


このことが、iPS細胞を医療の現場に実現してく過程で大きな障害になる危険性があるわけです。


そうならないために、iPS アカデミアジャパン株式会社という組織を作って、企業が特許を独占しないように活動しています。


科学研究のいいところは、「すべてをオープンにしている」ことです。


科学では、実験で検証してわかったことは、論文にされ、すべて公開されています。


この「すべてオープンにする」という原則があるからこそ、新たな研究が生まれ、その成果を誰でも知り、利用することができます。


さらに、実験に間違いがあれば指摘され、きちんと批判もされるわけですね。


利益を確保しなければいけない企業では、このように「すべてオープンにする」というようなことができません。


そのために、企業は特許を取りまくるわけです。


しかし、特許によって企業が研究の大事な部分を非公開にしてしまうことは、いろいろな人が研究をするチャンスを奪ってしまい、結果的には研究の発展が遅れてしまうことになりかねません。


 


試される日本人の良心


結局、こうした研究は、多くの研究者が国内外の壁を越えて、自由に協力していかないと実を結びません。


ノーベル賞を受賞するに至った山中教授のiPS細胞も、もともとは芽が出るかどうかは、誰も保証ができるものではありませんでした。


それを、仮説…実験…検証…という気の遠くなるようなハードな繰り返し。


科学という灯火(ともしび)」を多くの人がつないでいくことによって、奇跡的にできたもの、でもあるのです。


科学:聖火


今回のジョン・ガードン教授と山中伸弥教授の同時受賞は、くしくも、科学が灯火をつないでいく作業であることを象徴しているようにも思えます。


しかも、iPS細胞は、「日本で生み出された研究」といっても言い過ぎではありません。


これから先も、この「科学という灯火(ともしび)をつないでいく」ことを、いかに日本人が理解して、支えていくかが大切になってくるように感じます。


日本で生み出されたiPS細胞の研究。


これが医療として実現し、日本がその分野で世界をリードしていけるか。


科学をイメージや思い込みではなく、正しく理解し、日本人全体がまっすぐな心……良心で支えていく必要があるのではないかな、と思うんですね。


そう。科学に対して、過度に期待することなく。過度に失望することなく。


 


 


 


関連記事:

最善のアトピー治療法とは?

世界からみた「日本のステロイド外用薬」の違い

コホート研究とは?…これからの健康管理の常識を作っていくもの


5週間でようやく退院できました…ネフローゼ再発1回目


こんにちは。橋本です。


一般に言われるとおり、順調に再発したネフローゼ。


薬の服用のみで、一度寛解(かんかい:「症状が消失する」こと)状態が続いたものの、4か月後に期待通りというか、何というか(苦笑)。


最善の治療を考えると、受け入れざるをえなく、また入院。


それでも5週間、入院治療もトラブルなく、ようやくお医者さんのOKを取り付けることができまして、やっと無事退院することができました。


日々忙しいライフスタイルを否応なく迫られる世間では、時間のことをよく「あっという間」なんていったりしますが、今回の入院はそんな風に感じられませんでしたね。


長かったー。


結局、都合、5週間ですから。


8月ももう終わりという時期に再発してしまったので、8月、9月、10月と経過。


その間に、季節が夏から秋へと、移り変わってしまいました。


まあ、病院のやさしい空調の中では、季節のうつろいを肌で感じることはできませんでしたが…。


やっと退院ということで、朝、病院の目の前の鶴舞公園で、ちょっとだけ散歩を楽しんでみました。


約5週間、運動も安易に許されないような雰囲気で、ほぼ部屋に軟禁状態というのも、つらかったし。


まあ、あっちふらふら、こっちふらふらする患者さんでは、対応する看護師さんも大変でしょうが。


退院後には、ゆっくり散歩する機会もないだろうということで、とりあえず久しぶりの朝の散歩です。


 


まだ、こんな色鮮やかな花が咲いてるんですね。


鶴舞公園:散歩(花)


 


鶴舞という地名にちなんで、名大病院の病棟は、「鶴が羽を広げた感じ」にデザインされているそうです。


なるほど。。。言われるまで気がつきませんでした。


鶴舞公園:散歩(名大病院)


 


和風テイストな池もありますよ、と。


鶴舞公園:散歩(池)


 


天気も良くなってきて、なんとも歴史ある建物をみてると、子どもの頃の休日な雰囲気が、ふとよみがえったりなんかします。


鶴舞公園:散歩(奏楽堂)


 


非日常だから不安なんですよね


さてさて。


私が入院していた病棟は、泌尿器科や腎臓内科の患者さんがいたということで、入院期間中にも、腫瘍(しゅよう)の摘出手術をする患者さんも多くいました。


大変な闘病となる化学療法を続ける方もいました。


手術前にお話を聞いてみると、大きな手術にもかかわらず、楽天的な人。


反対に落ち込んでいる人。


不安をあらわしたくないのか、気丈をふるまっている人。


思うところは人それぞれなわけで、人間はこういう「非日常的」なときこそ、その人「らしさ」がよく見えてくるのかな、と思ったり思わなかったり…。


で、「よくまあやってますよね」と思うのが、こうした患者さんたちの「非日常」に接しているお医者さんたちです。


お医者さんたちにとっては、手術も、それにかかわる事前の準備、説明、術後のアフターケアも「日常」なのかもしれません。


しかし患者サイドからみてみれば、手術に向かうということは、不安そのものであり、希望であり、先の見えないものでもあります。


これをナビゲートしていくのが、お医者さんの仕事。


それをこの入院中に見て感じることができたというのは、いい経験でしたよ、と。


見方ひとつで、見えてくるもの、感じるものが、やはり違いますね。


まあ、人それぞれ、その時その時で、大切なもの、立場が違うわけで。。。


以前の自分では、お医者さんをこんな目で見なかったのかなと思った次第であります。


見方や価値観の変化って、いつおこるか分からんもんですね。


「子どもなんていたら好きなことができなくなる…」と、ついこの間までなげいてたママが、今では息子の世話をするのが生きがいそのものになってる、なんてこともあるんですから。


というわけで。


では、再び日常モードに戻る私ですが、今後もよろしくお願いしますね。


 


橋本夏樹


 


 


 


関連記事:

こいつが記事を書いています

突然ですが、1か月入院します

「標準治療」にまつわる誤解


厳しい生活指導を要求するお医者さん…いい医者?ダメな医者?(その3)


こんにちは。橋本です。


信頼できるお医者さんを見分けるひとつのポイントとして、「診察で厳しい生活指導を要求されていないか?」というのがあります。


誤解を恐れずはっきり言ってしまうと、あまりにも厳しい生活指導を要求するお医者さんは、悪いお医者さんです。


私は、こういうタイプの先生を「生活にアレコレ要求型」の先生とよんでいます。


お前が勝手によんでるだけだろ、という話ですが(苦笑)。


お医者さん:生活にアレコレ要求型


ただ、お医者さんの個性も様々で、ひよこのオスメスのように選別できるものではないので、先生をタイプ分けしてレッテルを貼るつもりはありません。


あまり言い過ぎると、日々まじめに患者さんと向き合っているお医者さんにも文句を言われそうですし。


それでもあえて、「厳しすぎる生活指導」の何が問題なのか、まあ軽く、かいつまんでつづっていきたいな、と思いますので、よろしくどうぞ。


 


もくじ:

⇒ 1. 厳しすぎる生活指導ってなに?

⇒ 2. 良心的な名医なのか?

⇒ 3. 成功例は、偶然の産物じゃないの?

⇒ 4. 「アトピー性皮膚炎の治療=人生」じゃないよね


 


厳しすぎる生活指導ってなに?


厳しい生活指導って、たとえばどんなことか?


普通に考えて、やるのがとても大変なことを、やれと言う。


または、あれもダメこれもダメ、あれもしろこれもしろと、こと細かく生活指導する。


ありがちな例は、次のようなものです。


極端なアトピーの生活指導の例

甘いものは食べるな

砂糖を使うな

牛乳を飲むな

コーヒーを飲むな

肉を食べるな

たんぱく質は白身魚と納豆だけ

主食は玄米か雑穀にしろ

パンを食べるな

無農薬や有機栽培の食材にしろ

添加物の入ったものは食べるな

一口30回以上噛んで食べろ

健康食品で免疫力を高めろ

デトックスしろ

ストレスのかかることはやめろ

ジーンズははくな

深ヅメにしろ

かゆくてもかくな

かゆみが強い時は手袋をしろ

下着は裏返して着ろ

服は綿製品だけ

プールは禁止

皮膚を消毒しろ

風呂にビタミンCを入れろ

毎週海で泳げ

青汁を毎日飲め

1日水を2リットル以上飲め

冷たい物を飲むな

保湿剤を使うな

馬油だけでケアをしろ

足の裏をよくもめ

ツメをもめ

砂遊びをさせるな

紫外線に当たるな

汗をかくな

もっと運動をしろ

筋トレをしろ

部活をするな

亜鉛を飲め

ビオチンを飲め

毎日風呂に入るな

石鹸を使うな

塩で体を洗え

1日3回シャワーを浴びろ

30分以上半身浴しろ

ご飯の前に風呂に入れ

風呂上りに冷水を浴びろ

冷房にあたるな

ひどくても薬を使うな

腸を洗浄しろ

エステで肌をきれいにしろ

マイナスイオンを浴びろ

毎日掃除機を掛けろ

ペットを飼うな

空気清浄機を買え

浄水器を買え

防ダニ布団を買え

毎日布団を干せ

塩素除去できるシャワーを買え

毎日ヨーグルトを食べろ

合成洗剤を使うな

シャンプーは無添加にしろ

姿勢を良くしろ

口呼吸するな

かみ合わせを治せ

夜更かしするな

8時間以上寝ろ

毎日朝早く起きろ

努力が足りない


こんな並べ方をすると、ちょっと私の悪意がにじみ出てるように感じるかもしれませんが、全部が全部、事例を誇張して並べているわけではありません。


こうして例を挙げてみると、何だか、「うーん」という言葉しか出てこないというか、なんというか。


今まで慣れ親しんだ生活から、1つのことを変えるのでも大変なのに。


何とか良くなってほしいアトピーのためとはいえ、さらに、2つも3つもとなると、もっと大変。


あれもこれも、あれもこれも…こうなると、まるでお説教のようです。


しかも、その努力の割には、効果があるのかどうかは、不明確。


厳しい生活指導によって、「アトピーが良くなる」という根拠のほとんどは、「良くなってきた人がたくさんいる」という体験談の集まりでしかないのが、まず問題です。


参考記事:

体験談という落とし穴


成功例がたくさんあればあるほど、「いい治療」というわけではありません。


もし、良くなった体験者が100人いても、良くならなかった人が300人いたら、どうでしょう?


トータルでみて、その生活指導に「効果がある」と言っていいのか、はなはだ疑問です。


 


良心的な名医なのか?


私のような、いち患者ごときが、せっかくの治療を「お説教みたいじゃん」というと、なんか嫌味な感じですが。


もちろんこういった治療も、「何とかしてアトピーを治してあげたい」というストレートな情熱から指導しているのかもしれません。


「患者さんに良くなって欲しい」という良心があって、時間もかけてくれる、いい先生。


パッと見て、パッと終わる、いわゆる「3分間診療」とは、大違い。


しかも、ほかの病院ではやっていない特別な指導をたくさんしてくれる。


そうした評判から、「名医」としてあがめられ、病院には毎日長蛇の列。


診察を受けようと思っても、すでに予約でいっぱい。


何とか見てもらうには、数か月待ち…なんて話も耳にします。


こうした話を聞くと、余計に「この先生についてゆけば…」と思えてきてしまうあたりが、「アトピーで有名な先生」たるゆえんでしょう。


でも、冷静に考えてみてください。


お医者さん自身ができないような、極端な生活指導を子どもや家族にしいるのは、ちょっと理不尽(りふじん)な気がするんですよね…。


あまりにも厳しい生活指導…普通の人には「無理やがな!」と感じるエッセンスが、ふんだんに盛り込まれているあたりがなんともかんとも。


お医者さん自身が、やれと言われて嫌がることを、患者さんにさせるなんて、現実的ではないように感じます。


無理難題のような、厳しすぎる生活指導には、最低限のケアで済むようなアトピーの治療を、より一層難しくしてしまう危険性があるのです。


 


成功例は、偶然の産物じゃないの?


アトピーは何をしなくても自然に良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴の病気です。


そのため、実際には効果がない治療法でも、「この方法だから良くなったんだ!」と思い込んでしまうケースがあることも考えられます。


アトピーは、悪化、良化の波を繰り返す。


そして、何をせずとも、症状が軽くなる、出なくなるというケースがあることもよく知られています。


じつは、その一方で、適切な治療をしないと、どんどんと症状がひどくなっていってしまうケースもあるのですが…。


まあ、それはさておき。


このようなアトピーの自然に良くなっていく波と、「特別な生活指導」を始めたタイミングが偶然にも一致するとどうでしょう?


実際には効果のない生活指導も、「奇跡の治療法」に思えてしまうのです。


ところがその実際は、極端な指導のひとつが、たまたま「当たったように見えた」に過ぎないのです。


このような成功例は、本当に治療のおかげなのか、真偽は明らかにできないものの、「何かいい治療法」を探している人の目には、とても魅力的に映ります。


「そんな方法もあったのか!」と。


こうした理由でも、お医者さんがアトピー専門の「名医」としてあがめられ、病院には毎日長蛇の列なんてこともおこるわけです。


 


「アトピー性皮膚炎の治療=人生」じゃないよね


アトピーを治療することが、人生の目的ではありません。


アトピーがあるがために、かゆい、痛い、眠れない、通常の生活ができない。


そもそも、それをなんとかするのが、アトピー治療の出発点です。


ところが、アトピー克服の名のもとに、あれダメこれダメ、あれしろこれしろ、ではどうでしょうか?


アトピー:制限


ちょっと大胆に言ってしまえば、「アトピーを治療すること」は、人生のごく一部のことに過ぎません。


にもかかわらず、あまりにも厳しい生活指導のために、膨大な手間を時間を取られる。


それも、効果があるかどうかは不明確。


より「やりたいことができる生活」「ごく普通の生活」ができるようになることが、本来の人生の目的ではないのでしょか。


もっともらしい理屈をつければ、どんなこともアトピーを悪くするもの…悪化因子(あっか・いんし)に思えてきてしまいます。


それではキリがありません。


そういう意味では、


それが悪化因子である可能性が、ある程度分かってからなら、なるべく負担のかからない、できる範囲で取り除いて、生活改善をしていく


これこそが、アトピー治療、悪化因子対策の基本なんですよね。


だからこそ、かかりつけ医は、口コミで評判の遠くの名医ではなく、適切な診断、ごく当たり前の治療をしてくれるなら、近所のお医者さんでも十分なわけです。


近所ですぐに診てもらえる先生を見つけ、お医者さんとよく相談し、より生活に負担のかからないケアを、工夫して探していくことが大切じゃないのかな、と。


最終的には、「周囲の子と同じような生活」ができるように、最低限のケアでアトピーが出ないようにしていくのが目標です。


「アトピー性皮膚炎の治療=子どもの生活そのもの」にはしたくありませんよね。


お医者さんが、厳しい生活指導を要求しすぎていないか?


診察を受けた時は、こんな視点をある程度持っていただくのも、いいんじゃないのかな、と思います。


 


 


 


関連記事:

「お風呂に入れる前」に決めておきたいこと

小児科は治療のコンシェルジュ

きちんとした先生に子どものアトピーを診てもらいたい


塩素系?酸素系?どっちの洗濯槽クリーナーがいいの?…という「分解性」のお話し


こんにちは。橋本です。


いわゆる「塩素系」といわれる漂白剤、カビ取り剤、洗濯槽クリーナー。


こういうのって、とても効率的に殺菌、漂白、さらにはカビも落としてくれるので、日頃のお掃除には欠かせないアイテムですよね。


でも、ほかのクリーナーにはないその強力な作用がある分、使う時はきちんと保護をしないと、肌に刺激を与えてしまうのも、また事実。


しかも、「混ぜるな危険」という製品ラベルのメッセージが、「できれば使わないほうがいいかも」というイメージをダメ押ししている感があります。


そのため、


塩素系を使いたいのはやまやまだけど、洗濯槽に残った塩素が肌にダメージを与えそうで怖い


そう思い、塩素系より効果がおだやかな、酸素系の洗濯槽クリーナーにに切り替えたよー、という人もいるかもしれません。


雑誌の特集でもてはやされるのは、「ナチュラルお掃除術」というのが、今も、これからも続く世間の空気ですからね。


洗濯槽に注ぐ:塩素系漂白剤


しかし…事実をよく知るとどうでしょう?


「 塩素系洗濯槽クリーナー ⇒ 強力⇒ 残り続ける 」というのはあくまでもイメージ。


じつは塩素系の洗濯槽クリーナーや漂白剤には、「分解しやすい」という性質があります。


 


もくじ

⇒ 1. もちろん、直接触れると肌に悪いわけで…

⇒ 2. 実際の塩素系製品の濃度

⇒ 3. 塩素系に「水酸化ナトリウム」を加えなければいけない理由

⇒ 4. 塩素系漂白剤は、分解されやすい

⇒ 5. 「化学物質は、環境に残りやすい」というイメージ

⇒ 6. ごく微量に出る「環境で分解されにくい」もの

⇒ 7. 「カビをきちんと落とせない」のも、デメリット

⇒ 8. 塩素系か?酸素系か?…ライフスタイルで使い分ける


 


もちろん、直接触れると肌に悪いわけで…


「塩素系」といわれる漂白剤も、洗濯槽クリーナーも、主成分は次亜塩素酸ナトリウム(じあえんそさん・なとりうむ)です。


主成分といっても、製品の容量ほとんどが、次亜塩素酸ナトリウムで満たされているとうわけではないんですけどね。


ほとんどは、水。


つまり、こういった漂白剤は、「ごく薄く次亜塩素酸ナトリウムを水に溶かしたもの」をシンプルにパッケージしたに過ぎません。


ただ、いくら「薄いですよ」といっても、この次亜塩素酸ナトリウムが、直接触れると、肌に悪い影響を与えるのは間違いありません。


次亜塩素酸ナトリウムは、強いアルカリ性と酸化作用があるため、濃度が高いと肌のたんぱく質を溶かし、強い刺激を与えてしまいます。


だからこそ、塩素系のものを使う時は、肌につかないよう、目に入らないよう、吸い込まないように、きちんと保護することが大切だ。


なんて説明書きでは、口うるさく言われているわけですね。


 


実際の塩素系製品の濃度


では、次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、実際の製品ではどのくらいなんでしょうか?


現在のところ、次亜塩素酸ナトリウムの濃度に表示義務はないので、以下の濃度はあくまでも目安です。


用途に合わせ希釈して使うタイプ:(自主基準4~6%まで)

・ つけ置きタイプの家庭用漂白剤(キッチンハイターなど)⇒ 6%

洗濯用漂白剤(ハイターなど)⇒ 6%

キッチンハイター:製品ハイター:製品


 

泡スプレー式:(自主基準3%まで)

スプレー泡タイプの漂白剤(キッチン泡ハイターなど)⇒ 0.5%

スプレー泡タイプのカビ取り用洗浄剤(カビキラーなど)⇒ 0.5%

カビキラー:製品キッチン泡ハイター:製品


 

洗濯槽の洗浄剤として:(自主基準1~6%まで)

塩素系洗濯槽クリーナー(洗濯槽カビキラーなど)⇒ 0.5%

・ 洗濯機メーカー純正洗濯槽クリーナー6%

洗濯槽カビキラー:製品純正洗濯槽クリーナー


 

哺乳びん消毒薬

ミルトン1%

ミルトン:製品


 

実際に含まれる塩素の濃度…「有効塩素濃度」は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度だけでは単純に比較できない部分があります。


それを差し引いても、ここから分かるのは、できる限り安全を優先する配慮です。


法律で定められているわけではないものの、たとえば、カビ取り用洗浄剤については、「次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、3%以下にしましょう」というのを、業界の自主基準で設定しています。


しかも、実際の製品はというと、その6分の1の濃度という徹底ぶりで、「最大の効果を」というよりも安全性を優先しているのが実態です。


濃度に多少の違いはあれど、カビ取り剤も塩素系漂白剤も、主成分が次亜塩素酸ナトリウムという点では変わりありません。


カビ取り剤(カビキラーなど)と、キッチン用漂白剤(キッチンハイターなど)には、少量の界面活性剤(洗浄成分)が入っていて、殺菌漂白効果に加えて、カビに付着しやすくしたり、汚れを落とす効果などもあります。


ハイターなど、白物用の洗濯用漂白剤(ハイターなど)には、界面活性剤は入っていません。


このような濃度や、界面活性剤、防サビ剤の有無に違いがあるため、同じ塩素系だからといって、ほかの用途に使うのは、原則的におすすめできません。


しかし、塩素系漂白剤もカビ取り剤も洗濯槽クリーナーも、効果を発揮する部分は同じ。


適量の「次亜塩素酸ナトリウム」を水に溶かし、1%程度の「水酸化ナトリウム」を混ぜたもの。


それが塩素系の製品の大事な部分です。


では、なぜ殺菌・漂白する「次亜塩素酸ナトリウム」だけでも良さそうなのに、わざわざそこに「水酸化ナトリウム」を入れるのでしょうか?


 


塩素系に「水酸化ナトリウム」を加えなければいけない理由


漂白剤に、少しばかりの水酸化ナトリウムを加えてあるのは、保管中の製品を安定化させるためです。


次亜塩素酸ナトリウムは、もともと不安定なもので「反応をおこしやすい性質」があり、殺菌漂白効果が高いのも、この反応のしやすさがあるからなんですね。


カビ取り剤の「キモ」である、強力にカビを落とす力も、この「反応をおこしやすい」という特徴を利用しているのです。


でも逆に言うと、反応しやすい性質があるために、次亜塩素酸ナトリウムは、工夫をしてあげないと不安定になりやすく、保管中にもどんどん自然分解されていくという困ったことにもなってしまいます。


元々は、何をしなくても、早々と分解していくものなんですね。


とくに、液体が酸性の状態では極めて急激に分解反応を起こし、毒性の強い塩素ガスを発生させてしまいます。


それが、製品ラベルに表示されている「混ぜるな危険!」のゆえんともなっているわけです。


この不安定な状況を避けるために、「水酸化ナトリウムを加える」というのも、次亜塩素酸ナトリウムをうまく保管する方法の1つであるわけです。


水酸化ナトリウムは、石鹸を作る時には苛性ソーダ(かせい・そーだ)とも呼ばれ、強いアルカリ性の性質を持っています。


酸性とアルカリ性は、正反対の性質です。


酸性になると不安定。


そこで、水酸化ナトリウムを加え、アルカリ性になるよう、うまくバランス調整することで、漂白剤を安定化させてあるわけですね。


安定化させるといっても、アルカリが強すぎると、肌のたんぱく質を溶かし、刺激を与えてしまい危険です。


そのため、実際に加える水酸化ナトリウムは、業界の自主基準で1%までと決められています。


 


塩素系漂白剤は、分解されやすい


こうして、「アルカリ性の水に溶かす」という工夫をすることで、次亜塩素酸ナトリウムは安定し、長期の保存が可能になっています。


しかし、安定するといっても、次亜塩素酸ナトリウムの反応しやすい性質がなくなるわけではありません。


ただ単に保管しているだけでも、時間と共に自然分解し、酸素を少しずつ出しながら、ゆっくりゆっくり、塩化ナトリウム水溶液に変化していくことが知られています 1)


塩素の濃度は時間と共にゆるやかに減っていく…

有効塩素濃度の経時変化


 

「塩化ナトリウム水溶液」というと何か危険な薬品みたいにも聞こえますが、カンタンにいえば「塩水」となんら変わりありません。


つまり、漂白剤は長く放っておけば、特別なことをしなくても、酸素をチビチビと放ちながら、最後には塩水になっていくもの。


1年2年と長い時間をかけて、ゆっくりですが、保管中も漂白剤、カビ取り剤としての能力は低下していくわけですね。


また、高温にさらされたり、直射日光を受けることで次亜塩素酸ナトリウムの反応性は高まり、自然分解も進みやすくなることも分かっています 1)


温度が高いと、
自然分解も早く進む

有効塩素濃度の経時変化(6%品):保管温度別


 

「漂白剤やカビ取り剤の保管は、冷暗所で」というのは、自然分解がなるべく進まないように、という気づかいなんですね。


 


「化学物質は、環境に残りやすい」というイメージ


「化学物質は、なかなか分解しない」


なんとなく、そういうイメージを持っている人もいるんじゃないかなと思います。


たしかに、人工的な化学物質には、とても分解されにくいものもあります。


たとえば、昔、アタマジラミの駆除に大量に使われたDDT(ディーディーティー)という有機塩素系の殺虫剤


日本では第2次大戦後、DDTを使うことで蔓延したアタマジラミが激減したのですが、環境に残りやすいことが分かり、今では慎重に管理されています。


しかし、実際には、「人工的な化学物質だから、残りやすい、環境を汚していく」とは限りません。


次亜塩素酸ナトリウムの場合は、ほかの物質の化学結合を切る(酸化させる)作用をもっています。


その作用によって、色素が分解され、漂白されたり、微生物が殺菌されたりするのです。


タイルのカビ、洗濯槽のカビを落とすのに、つけ置きがより効果的なのは、次亜塩素酸ナトリウムが反応性が高く、すぐに分解されやすいことを考えてのこと。


反応をなるべく長く続かせるために、つけ置きしておきたいわけです。


このように何らかの反応によって、ほかのものに作用する化合物は、反応を引き起こしながら、自らは分解していきやすいともいえます。


つまり、反応が強いために、すみやかに分解するのです。


次亜塩素酸ナトリウムの場合、最終的には、酸素と塩水に。


その点では、排出された後での環境に対する悪影響は、洗剤や殺虫剤などに比べると、ほとんど無視できるものであると言ってもおかしくはありません。


 


ごく微量に出る「環境で分解されにくい」もの


ただ、次亜塩素ナトリウムは、漂白や殺菌という反応をこなす中で、ごく微量ではあるのですが、多種多様な有機塩素化合物物


たとえば、クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルムといったもの。


こういった、よく「トリハロメタン」とよばれるものを発生させ、その一部は環境に長く残りやすく、毒性があることが指摘されているものもあります。


だからといって、漂白剤は、そう日常茶飯事に使うものではなく、一般家庭で発生する量で、「環境汚染につながる」というのは、少し大げさな気もします。


 


「カビをきちんと落とせない」のも、デメリット


結論を言うと、次亜塩素ナトリウムを使った塩素系の洗濯槽クリーナーは、反応が早く、分解されやすい。


そして、洗濯槽の掃除が終わった時には、もちろん大量の水で洗い流される。


そういうわけで、「塩素系の洗濯槽クリーナーを使うと、その後洗った服に塩素が残留するため、肌を痛める原因になる」ということは、まず考えられません。


次亜塩素ナトリウム自体は、水に溶けやすいものなので、何度もすすいだり、必要以上に大量の水で流したり、長時間水洗いする必要はありません。


極端に言ってしまえば、「肌を思って、より反応性の弱い酸素系の洗濯槽クリーナーを使いたい」というのは意味がないわけです。


肌を痛めないようにというならば、カビを落とす作用がおだやかな酸素系を使うほうにも、リスクがあります。


なぜなら、洗濯槽内のカビをきちんと落とせないことで、アトピーやアレルギーが悪化してしまうことも考えられるからです。


参考記事:

カビはアトピー悪化のリスクのひとつ


これでは何のために掃除をし、何のためにわざわざ効果の弱い漂白剤を使っているのか分からない状態になってしまいますよね。


もともこうもない、というか。


カビを落とす力がより強力なのは、反応しやすい性質を持った塩素系であり、それと比べると酸素系は、どうしても効果がおだやかになってしまいます。


参考記事:

しつこいカビ落としには、どのカビ取り剤がいい?


ですから、「取り扱いに注意するものだ」ときちんと意識した上でなら、カビ取り効果の高い塩素系の洗濯槽クリーナーをうまく使うことも、大きな意味でのスキンケアにつながるわけですね。


 


塩素系か?酸素系か?…ライフスタイルで使い分ける


アトピーやアレルギーの引き金ともなるカビをしっかり落とすには、取り扱いに注意さえすれば、塩素系を使うほうが便利。


そうは言っても、「カビ落としに酸素系の洗濯槽クリーナーを使うなんてバカだよねー」と言いたいわけではありません。


「塩素系、酸素系、どっちの洗濯槽クリーナーを選べばいいのか?」は、その人、その人のライフスタイルによって決めるもの。


どちらがいい、悪い、ではなく、使い方次第なんですね。


「赤ちゃんのことを考えて」とか、「取り扱いに注意が必要なものは、どうしても使いたくない」なんていう場合は、酸素系でもありなのかな、と思います。


また、たとえば、


取り扱いに危険性の少ない酸素系を使いたい。そのためなら、1か月ごとなど、こまめに洗濯槽をお掃除するのも苦じゃないよ。


なんていう場合なら、酸素系の洗濯槽クリーナーでも、通常は十分だと思います。


つまり、まとめると…


塩素系の製品

カビ取り効果がより高いのを選ぶなら、塩素系。


酸素系の製品

ほんのごくわずかでも環境を汚したくない。そして、効果がおだやかだけど、取り扱いやすい。その分、「こまめに掃除します」というなら、酸素系。


おおまかにいうと、そういった使い分けができるわけですね。


そして、塩素系洗濯槽クリーナーの主成分である次亜塩素酸ナトリウムは、水に溶けやすく、分解されやすい。


そのため、普通に使用すれば、洗濯槽内に薬品が残ったり、「目に見えない残留塩素が肌を痛める」なんてことはおこらないはずです。


今の時代的には、「人工的なものより、ナチュラルなもので」というものが好まれます。


しかし、その「人工的なもの=害を与える」「ナチュラルなもの=恵みを与える」には、何の根拠もなく、雰囲気や思い込みでそう思ってしまっているケースも、実際にはよくあります。


たとえば、カビの掃除にしても、なんとなくのイメージや体験談を聞いただけで、塩素系か酸素系かを選ぶと、せっかくの努力が無意味になってしまうこともある。


だからこそ、人工的な化学物質だからといって、毛嫌いするのではなく、特性を少し知っておくだけでも、安全を確保しつつ、その便利さのお世話になることができるわけなんですね。


 


 


 


関連記事:

勘違いされやすい「ハウスダスト」の意味

かゆみ止めは、効くのにどれぐらいかかるのか?

接触皮膚炎(かぶれ)とは?


参考文献:

1) 高杉製薬工業株式会社: 次亜塩素酸ソーダ 取扱説明書. 2009年6月22日(改定).


[コメント] アトピーが出て7年くらい経ちますが、なかなか治りません…


こんにちは。橋本です。


ゆずママさんからコメントをいただきました。


コメントのおおよその内容は、


息子にアトピーが出て、まじめに治療を続けているが、7年経ってもなかなか治らない。


いつになったら治るのか、先が見えない。


といった、母親としての、ごくストレートな気持ちです。


コメントの内容は、私に質問をしているわけではないのですが、この場を借りて私の思っていることを、少し伝えたいなと思います。


「ああ、わかる、ゆずママさん。その気持ち」


と同じく、似たシュチュエーションに置かれているママも少なからずいるのではないのでしょうか。


そこで、「この状況を、こうとらえることもできるよ」「こんな考えもあるんだよ」というのを、ぜひここで共有できれば、と。


ゆずママさんは軽い気持ちで、ふと感じたことをコメントしてくれたのかもしれません。


それに対して、私の答えは少し考えすぎで、人によっては「なんて重いテンションだよ」と感じるかもしれませんが、ご勘弁くださいませ。


子ども:旅行


 


なかなか治りません


実際にいただいたコメントの内容はこちらです。


なかなか治りません


>こんにちは


>息子もアトピーで治療中です。


>1対3で混ぜた薬を塗って7年位立ちますがなかなか治りません。


>よくなったり、悪くなったりの繰り返しで24歳になりました。


>いつまで続くのかと思います。


>いろいろ参考にさせてください。


ゆずママさんより


短い中に、複雑な思いが詰まっているように感じます。


アトピーでひどい思いをした私だからでしょうか。。。


あなたはどう感じますか?


 


多感な時期をどう過ごせるか


1対3で混ぜた薬を塗って7年位立ちますが


なかなか治りません。


人生のいちばん大事な時期になかなか治らないアトピーに悩まされる辛さは、私も同じ経験をしたものとして、よく分かります。


その辛さを側で見ているしかない、ゆずママさんのもどかしい気持ちを考えると、いかほどかと。


 


結局、良くなったり、悪くなったりの繰り返し


よくなったり、悪くなったりの繰り返しで


24歳になりました。


アトピーは、今のところ完治の保証ができる治療法がありません。


残念ながら、どんなに頑張っても、長く湿疹が繰り返すのは、どうしても仕方のない部分もあります。


ただ、だからといって、「あれこれやってもムダ、自然にまかせるしかない」というわけでもないんですよね。


 


いかに、いかに、いかに


アトピーは、


何度も繰り返す皮膚の炎症をいかにおさえるか?


いかに皮膚に炎症がおこりにくい環境を作るか?


にかかっていて、こうしたケアを地道に探していくことで、肌のいい状態をなるべく長くキープしていくのが理想です。


完治させるのではなくて、そうやって完治に持ち込みやすい状況を整えてあげたいわけです。


なるべく症状のない状態を増やしていき、せめて「アトピーだからアレができない、コレができない」という生活にならないように。


そのために、私がサポートできることがあれば、できる範囲でしますので、これからも何でも気軽に相談してくださいね。


アトピーを治すための答えは、人それぞれ違います。


「何が問題点か」「何ができるか」「どこまでやるか」などは、子ども、それからそれを支える親、それぞれの考えやライフスタイル、症状などによって変わってきますので。


もちろん、アトピーに効くという商品をすすめたり、宗教など、怪しい団体に勧誘することはありませんので、ご心配なく。


それに、信頼できるお医者さんによる、適切な診断、治療が第一なのは言うまでもありません。


子ども:お絵かき


 


有益な情報に、より簡単にアクセスできるように


世間には、苦しんでいるつらい子どもたち、親たちを惑わせる情報が、たくさんあります。


アトピーについては、むしろそういった情報が多数派といってもいいくらいなのでは、と感じています。


私もそうした情報に流され、アトピーを重症にしてしまった過去があります。


アトピーという病気に正面から向き合える、正しく有益な情報が増えてくれる。


有益な情報が、少しでも手軽にネット上で知ることができる環境になる。


それが、私の願いです。


 


 


 


関連記事:

治療がうまくいく目標の立てかた

「ステロイド外用薬は怖くない」は本当か?

治療の成果をみるタイミング「3-4-3」