源氏物語イラスト訳【末摘花206】かたはらいたし☆
「これを、いかでかは、かたはらいたく思ひたまへざらむ。されど、朔日の御よそひとて、わざとはべるめるを、はしたなうはえ返しはべらず。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)と逢瀬を迎えた光源氏。返歌もできない教養のなさや、雪明かりの朝に見た彼女の容貌に驚き、幻滅します。しかし、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めました。光源氏19歳の年末のとある日、宮中の宿直所に大輔命婦が訪ねて来て、末摘花の恋文を源氏に渡します。
源氏物語イラスト訳
「これを、いかでかは、かたはらいたく思ひたまへざらむ。
訳)「これを、どうして、みっともないとお思い申し上げないでしょうか、いや他人事ながらみっともないものです。
されど、朔日の御よそひとて、わざとはべるめるを、
訳)けれど、元日のご衣装ということで、わざわざございますようなのを、
はしたなうはえ返しはべらず。
訳)無愛想には 返すことができ ません。
【古文】
「これを、いかでかは、かたはらいたく思ひたまへざらむ。されど、朔日の御よそひとて、わざとはべるめるを、はしたなうはえ返しはべらず。
【訳】
「これを、どうして、みっともないとお思い申し上げないでしょうか、いや他人事ながらみっともないものです。けれど、元日のご衣装ということで、わざわざございますようなのを、無愛想には 返すことができ ません。
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■【これ】…指示代名詞。直前の衣筥をさす。
■【を】…対象の格助詞
■【いかで】…どうして~か
■【かは】…反語の係助詞(結び;「む」)
■【かたはらいたく】…ク活用形容詞「かたはらいたし」連用形
※【かたはらいたし】…みっともない。側で見ていて恥ずかしい
■【思ひ】…ハ行四段動詞「思ふ」連用形
■【たまへ】…ハ行下二段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…謙譲の補助動詞(命婦⇒光源氏)
■【ざら】…打消の助動詞「ず」未然形
■【む】…推量の助動詞「む」連体形
■【されど】…けれど
■【朔日(ついたち)】…月初めの一日。ここでは正月の元日
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【御―】…尊敬の接頭語(命婦⇒光源氏)
■【よそひ】…衣装
■【とて】…~ということで
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【わざと】…わざわざ
■【はべる】…ラ変動詞「はべり」連体形
■【める】…推定の助動詞「めり」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【はしたなう】…ク活用形容詞「はしたなし」連用形ウ音便
※【はしたなし】…無愛想だ。そっけない
■【は】…取り立ての係助詞
■【え~ず】…~できない(「え」は陳述の副詞)
■【返し】…サ行四段動詞「返す」連用形
■【はべら】…ラ変動詞「はべり」未然形
※【はべり】…丁寧の補助動詞(命婦⇒光源氏)
■【ず】…打消の助動詞「ず」終止形
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