源氏物語イラスト訳【末摘花43】十六夜 | 【受験古文速読法】源氏物語イラスト訳

源氏物語イラスト訳【末摘花43】十六夜

「ふり捨てさせたまへるつらさに、御送り仕うまつりつるは。
 もろともに大内山は出でつれど入る方見せぬいさよひの月」

と恨むるもねたけれど、この君と見たまふ、すこしをかしうなりぬ。

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【源氏物語イラスト訳】

 

ふり捨てさせたまへつらさ送り仕うまつりつる

訳)「わたしを置きざりにしなさっ薄情さに、見送り申し上げのですよ

 

 

もろともに大内山出でつれ

訳)一緒に皇居退出しけれど、

 

 

入る見せいさよひの月恨むるねたけれ

訳)入る見せない十六夜の月、それは貴方です」恨み言を言うのも癪だけれど

 

 

この君たまふすこしをかしうなり

訳)頭中将の君ご覧になると、少しおかしくなっ

 

【古文】

ふり捨てさせたまへつらさ送り仕うまつりつる
もろともに大内山出でつれ入る見せいさよひの月

恨むるねたけれこの君たまふすこしをかしうなり

 

【訳】

「わたしを置きざりにしなさっ薄情さに、見送り申し上げのですよ

 一緒に皇居退出しけれど、

 入る見せない十六夜の月、それは貴方です」

恨み言を言うのも癪だけれど頭中将の君ご覧になると、少しおかしくなっ

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

■【ふり捨て】…タ行下二段動詞「ふり捨つ」未然形

■【させ】…尊敬の助動詞「さす」連用形

■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形

※【たまふ】…尊敬の補助動詞(頭中将⇒光源氏)

■【る】…完了の助動詞「り」連体形

■【つらさ】…薄情さ

■【に】…原因の格助詞

■【御―】…尊敬の接頭語(頭中将⇒光源氏)

■【送る】…見送る

■【仕(つか)うまつり】…ラ行四段動詞「仕うまつる」連用形

※【仕うまつる】…謙譲の補助動詞(頭中将⇒光源氏)

■【つる】…完了の助動詞「つ」連体形

■【は】…詠嘆の係助詞(文末用法)

■【もろともに】…一緒に

■【大内山(おほうちやま)】…宇多法皇の御所となった御室(仁和寺)の裏山から意味が転じて内裏・宮中の意味として使われる。

■【は】…取り立ての係助詞

■【出で】…ダ行下二段動詞「出づ」連体形

■【つれ】…完了の助動詞「つ」已然形

■【ど】…逆接の接続助詞

■【入る方(いるかた)】…(月が)入る方向。(源氏の)行き先。

■【見せ】…サ行下二段動詞「見す」未然形

■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形

■【いさよひ(十六夜)の月】…陰暦十六日の夜の月。特に、陰暦八月十六日の夜の月。ここでは、光源氏を見立てている。

■【と】…引用の格助詞

■【恨(うら)む】…恨み言を言う

■【も】…添加の係助詞

■【ねたけれ】…ク活用形容詞「ねたし」已然形

※【ねたし】…しゃくだ。妬ましい

■【ど】…逆接の接続助詞

■【この君】…頭中将の君

■【と】…引用の格助詞

■【見たまふ】…ご覧になる

※【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形

※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)

■【をかしう】…シク活用形容詞「をかし」連用形ウ音便

■【なり】…ラ行四段動詞「なる」連用形

■【ぬ】…完了の助動詞「ぬ」終止形

 

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☆本日の『源氏物語』☆

 

光源氏が出てきたことに気づいた頭中将は、

即座に光源氏をつかまえて、恨み言を和歌に詠みかけます。

 

「ぬ」の識別は、できますでしょうか。

 

 

しかし、「見せ(サ行下二段)」は、未然形・連用形が同じ活用なので、

直前からは「ぬ」の識別ができません。

 

さらに、和歌の場合は、句読点がないため、直後のつながりも曖昧ですよね。

 

こういう場合は、文脈判断にたよるしかありませんが…、

 

和歌のラスト「いざよひの月」が体言止めで、最も言いたい部分。

したがって、そこにつながっていくはずの「「見せぬ」は、連体形でなければだめですよね。


このように、和歌というのは、どこが歌意なのかを見抜くことで、文法事項も根拠を見出せるのですよね。

 

 

ちなみに、「十六夜月」というのは、光源氏を見立てています。

 

笑い泣き笑い泣き笑い泣き


 

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