源氏物語イラスト訳【末摘花44】掛詞 | 【受験古文速読法】源氏物語イラスト訳

源氏物語イラスト訳【末摘花44】掛詞

「人の思ひよらぬことよ」と憎む憎む、
「里わかぬかげをば見れどゆく月のいるさの山を誰れか尋ぬる

 かう慕ひありかば、いかにせさせたまはむ」と聞こえたまふ。
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【源氏物語イラスト訳】

 

思ひよらこと憎む憎む

訳)思いも寄らことを、びっくりするではないか憎らしがりながら

 

 

わかかげをば見れ

訳)「どの土地分け隔てなく照らす月光空に見えるけれど

 

 

ゆくいるさの山誰れ尋ぬる

訳)空をゆくその隠れる山入佐山)まで尋ねて来ようか、いやそんな人は貴方ぐらいですよ

 

 

かう慕ひありかいかにさせたまは聞こえたまふ

訳)このようにわたしが後を付け回すならばどうなさるだろうか申し上げなさる

 

【古文】

思ひよらこと憎む憎む
わかかげをば見れゆくいるさの山誰れ尋ぬる

 かう慕ひありかいかにさせたまは聞こえたまふ
 

【訳】

思いも寄らことを、びっくりするではないか憎らしがりながら

「どの土地分け隔てなく照らす月光空に見えるけれど

 空をゆくその隠れる山入佐山)まで尋ねて来ようか、いやそんな人は貴方ぐらいですよ

 このようにわたしが後を付け回すならばどうなさるだろうか申し上げなさる

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

■【人】…誰か。ここでは光源氏自身を指す

■【の】…主格の格助詞

■【思ひよら】…ラ行四段動詞「思ひよる」未然形

■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連用形

■【よ】…詠嘆の間投助詞

■【と】…引用の格助詞

■【憎む憎む】…憎らしげな様子を強調した表現

■【里(さと)】…人里。なじみの土地

■【分か】…カ行四段動詞「分く」未然形

※【分く】…区別する。分け隔てする

■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形

■【かげ】…月光。光源氏の見立て

■【をば】…「を」の強調

※【を】…対象の格助詞

※【ば】…強意の係助詞「は」の濁音化

■【見れ】…マ行上一段動詞「見る」已然形

■【ど】…逆接の接続助詞

■【ゆく月】…空を渡ってゆく月。ここでは光源氏の見立て

■【の】…主格の格助詞

■【いるさの山】…「(月が)入る」意と「(兵庫県)入佐山」の掛詞

■【を】…対象の格助詞

■【誰(たれ)】…誰が~か、いや~ない反語

■【か】…反語の係助詞

■【尋ぬる】…ナ行下二段動詞「尋ぬ」連体形

※【尋(たづ)ぬ】…訪ねる

■【かう】…このように「かく」のウ音便

■【慕ひありか】…カ行四段動詞「慕ひありく」未然形

※【慕(した)ひありく】…あとをつけてまわる

■【ば】…順接仮定条件の接続助詞

■【いかに】…どう。どのように

■【せ】…サ変動詞「す」未然形

■【させ】…尊敬の助動詞「さす」連用形

■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形

※【たまふ】…尊敬の補助動詞(光源氏⇒頭中将)

■【む】…推量の助動詞「む」連体形

■【と】…引用の格助詞

■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」連用形

※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒頭中将)

■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)

 

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☆本日の『源氏物語』☆

 

頭中将のことを憎げに思った光源氏ですが、

さすが、風流人。ちゃんと和歌で返していますね!

 

頭中将の贈歌のなかで「入る」が出てきましたが、

この光源氏の答歌では、「いる」となっています。

 

こういうあたりで、「あ、掛詞だな」と見抜いてください。

 

 

 

笑い泣き笑い泣き笑い泣き


 

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