源氏イラスト訳【若紫382】官服
見も知らぬ、四位、五位こきまぜに、隙なう出で入りつつ、「げに、をかしき所かな」と思す。御屏風どもなど、いとをかしき絵を見つつ、慰めておはするも、はかなしや。
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【源氏物語イラスト訳】
見も知らぬ、四位、五位こきまぜに、隙なう出で入りつつ、
訳)見たことも ない四位や五位の人々の服装が色とりどりに入り混じって、ひっきりなしに出入りしては、
「げに、をかしき所かな」と思す。
訳)「本当に、素晴らしい所だわ」と、お思いになる。
御屏風どもなど、いとをかしき絵を見つつ、
訳)御屏風類などの、とても素晴らしい絵を見ながら、
いとをかしき絵を見つつ、慰めておはするも、はかなしや。
訳)気持ちを慰めていらっしゃるのも、あどけないことよ。
【古文】
見も知らぬ、四位、五位こきまぜに、隙なう出で入りつつ、「げに、をかしき所かな」と思す。御屏風どもなど、いとをかしき絵を見つつ、慰めておはするも、はかなしや。
【訳】
見たことも ない四位や五位の人々の服装が色とりどりに入り混じって、ひっきりなしに出入りしては、「本当に、素晴らしい所だわ」と、お思いになる。御屏風類などの、とても素晴らしい絵を見ながら、気持ちを慰めていらっしゃるのも、あどけないことよ。
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■【見も知らぬ】…見たこともない
※【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
※【も】…強意の係助詞
※【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【四位・五位(しゐ・ごゐ)】…四位・五位の官職の男達。四位は黒、五位は緋色の服を着る。
■【こきまぜ】…ザ行下二段動詞「こきまず」連用形
※【こきまず】…かきまぜる
■【に】…状態の格助詞
■【隙(ひま)なう】…ク活用形容詞「隙なし」連用形ウ音便
※【隙(ひま)なし】…絶え間がない。ひっきりなしである
■【出で入り】…ラ行四段動詞「出で入る」連用形
■【つつ】…継続の接続助詞
■【げに】…ほんとうに。なるほど
■【をかしき】…シク活用形容詞「をかし」連体形
※【をかし】…趣深い。すばらしい
■【かな】…詠嘆の終助詞
■【と】…引用の格助詞
■【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒若紫)
■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒若紫)
■【屏風(びょうぶ)】…移動式の仕切りの調度
■【―ども】…複数の接尾語
■【など】…例示の副助詞
■【いと】…とても
■【をかしき】…シク活用形容詞「をかし」連体形
※【をかし】…趣深い。すばらしい
■【を】…対象の格助詞
■【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
■【つつ】…継続の接続助詞
■【慰め】…マ行下二段動詞「慰(なぐさ)む」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【おはする】…サ変動詞「おはす」連体形
※【おはす】…「あり」の尊敬語(作者⇒若紫)
■【も】…強意の係助詞
■【はかなし】…取るに足りない。あどけない
■【や】…詠嘆の間投助詞
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「四位・五位」というのは、
男性の官職のことです。
当時は、官位によって服の色が変わります。
若紫は、四位の黒い官服や、五位の緋色の官服を見て、
その色鮮やかな様子に見入っていたのですね。
2014年度のセンター試験で『源氏物語』が出題されましたが、
その内容は、「夕霧」の話でした。
(詳しくは、アメンバー記事をご参照に)
夕霧は、今をときめく光源氏の息子なのに、
六位の官職からの出発であり、
浅葱(あさぎ)色の官服だったため、
恋人の乳母に「六位宿世よ」と蔑まれ、
「あさみどりとや言ひしをるべき」と詠んだ歌も有名で
よく大学入試に問われます。