源氏イラスト訳【若紫315】父の涙
見わたしたまひて、
「かかる所には、いかでか、しばしも、幼き人の過ぐしたまはむ。なほ、かしこに渡したてまつりてむ。…」
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【源氏物語イラスト訳】
見わたしたまひて、
訳)ぐるっと見渡しなさって、
「かかる所には、いかでか、しばしも、幼き人の過ぐしたまはむ。
訳)「このような所には、どうして、少しの間でも、幼い子供が過ごしなさるだろうか、いや過ごせないだろう。
なほ、かしこに渡したてまつりてむ。…」
訳)やはり、あちらにお引き取り申し上げ よう。…」
【古文】
見わたしたまひて、
「かかる所には、いかでか、しばしも、幼き人の過ぐしたまはむ。なほ、かしこに渡したてまつりてむ。…」
【訳】
ぐるっと見渡しなさって、
「このような所には、どうして、少しの間でも、幼い子供が過ごしなさるだろうか、いや過ごせないだろう。やはり、あちらにお引き取り申し上げ よう。…」
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■【見わたし】…サ行四段動詞「見わたす」連用形
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒兵部郷宮)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【かかる】…このような
■【に】…場所の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【いかで】…どうして~か(いや~ない)
■【か】…反語の係助詞
■【しばし】…少しの間
■【も】…強意の係助詞
■【幼き人】…若紫をさす
※【幼き】…ク活用形容詞「幼し」連体形
■【の】…主格の格助詞
■【過ぐし】…サ行四段動詞「過ぐす」連用形
※【過(す)ぐす】…過ごす。暮らす
■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(兵部郷宮⇒若紫)
■【む】…推量の助動詞「む」連体形
■【なほ】…やはり
■【かしこ】…あちら。ここでは、兵部郷宮の自邸をさす
■【に】…場所の格助詞
■【渡し】…サ行四段動詞「渡す」連用形
※【渡(わた)す】…移動させる。引き取る
■【たてまつり】…ラ行四段動詞「たてまつる」連用形
※【たてまつる】…謙譲の補助動詞(兵部郷宮⇒若紫)
■【て】…強意の助動詞「つ」未然形
■【む】…意志の助動詞「む」終止形
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もの寂しい六条邸に、寂しく暮らす若紫を
あわれに思っている、父兵部郷宮。。。
今まで、放っておいたのに…
と思っていましたが、
彼の言葉のなかに、「なほ」という重要古語があります。
これは、「やはり」という意味であり、
何らかの前提があっての「やはり」ですよね。
つまり、以前から若紫を自邸に移そうという意図があったものの、
少納言の乳母の言葉にもあったように、
正妻が来るのを嫌がっている、とか、
いろんな事情から、それをしてこなかったのが、わかります。