源氏イラスト訳【若紫316】所狭し
「…何の所狭きほどにもあらず。乳母は、曹司などして、さぶらひなむ。君は、若き人びとなどあれば、もろともに遊びて、いとようものしたまひなむ」などのたまふ。
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【源氏物語イラスト訳】
「…何の所狭きほどにもあらず。
訳）「…何の窮屈に感じる所ではない。
乳母は、曹司などして、さぶらひなむ。
訳）乳母は、部屋などもらって、ちゃんとお仕えす ればよい。
君は、若き人びとなどあれば、もろともに遊びて、
訳）姫君は、若い女童たちなども自邸にはいるので、一緒に遊んで、
いとようものしたまひなむ」などのたまふ。
訳）きっと とても仲良くやって行きなさる だろう」などとおっしゃる。
【古文】
「…何の所狭きほどにもあらず。乳母は、曹司などして、さぶらひなむ。君は、若き人びとなどあれば、もろともに遊びて、いとようものしたまひなむ」などのたまふ。
【訳】
「…何の窮屈に感じる所ではない。乳母は、部屋などもらって、ちゃんとお仕えす ればよい。姫君は、若い女童たちなども自邸にはいるので、一緒に遊んで、きっと とても仲良くやって行きなさる だろう」などとおっしゃる。
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■【何の】…何の、どのような
■【所狭（ところせ）き】…ク活用形容詞「所狭し」連体形
※【所狭し（ところせし）】…窮屈だ
■【ほど】…場所。ここでは兵部郷宮の自邸をさす
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【も】…強意の係助詞
■【あら】…ラ変動詞「あり」未然形
■【ず】…打消の助動詞「ず」終止形
■【乳母（めのと）】…少納言の乳母をさす
■【は】…取り立ての係助詞
■【曹司（ぞうし）】…女房などの部屋。私室
■【など】…例示の副助詞
■【し】…サ変動詞「す」連用形
※【す】…代動詞。ここでは部屋をもらう意
■【て】…単純接続の接続助詞
■【さぶらひ】…ハ行四段動詞「さぶらふ」連用形
※【さぶらふ】…「仕ふ」の謙譲（兵部郷宮⇒若紫）
■【な】…強意の助動詞「ぬ」未然形
■【む】…適当の助動詞「む」連体形
■【君】…姫君。ここでは、若紫をさす
■【は】…取り立ての係助詞
■【若き】…ク活用形容詞「若し」連体形
■【人びと】…女房たち。ここでは、兵部郷の自邸にいる女童をさす
■【など】…例示の副助詞
■【あれ】…ラ変動詞「あり」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【もろともに】…一緒に
■【遊び】…バ行四段動詞「遊ぶ」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【いと】…とても
■【よう】…ク活用形容詞「よし」連用形「よく」のウ音便
■【ものし】…サ変動詞「ものす」連用形
※【ものす】…代動詞。ここではやっていく、の意
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞（兵部郷宮⇒若紫）
■【な】…強意の助動詞「ぬ」未然形
■【む】…推量の助動詞「む」終止形
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若紫の父兵部郷宮が、
娘が自邸にくることに、何も問題ないことを、
切々と語っています。
「所狭し」は重要古語。
「窮屈だ」という意味ですが、
ここでは、心理的に、窮屈に感じる必要はない、というぐらいの意味でしょう。
少納言の乳母が、以前に光源氏に語ったように、
いろいろと、正妻などのことで、気詰まりなことがあるやも、
と、尼君ともども心配していましたよね。
もしかしたら、以前に尼君からも、
父宮は、そう言われたことがあるのかもしれません。
いや、どうではない、と
兵部郷宮は、一蹴しているのですね。
