【夕顔344-2】古典文法のラスボス☆敬語☆
高校受験を終えられたみなさん。
古文の大学受験は、情報処理能力がカギ☆
早めの古文目線の習得が不可欠ですよ~♪
源氏物語イラスト解釈
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光の君は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下、「源氏」姓を名のり、左大臣の娘葵(あおい)の上を正妻にもらいました。一方、帝の後妻である、亡き母によく似た藤壺宮(ふじつぼのみや)への恋慕、そして、中流の女空蝉(うつせみ)との一夜限りの情事、プライドの高い六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)との逢瀬…。光源氏は尽きせぬ恋を重ねていくのでした。
ただ今、「4.夕顔」の巻です。17歳の光源氏は、五条にひっそり住まう夕顔の君に恋をし、彼女を廃院に誘いますが、夕顔は物の怪に襲われ急死してしまいました。部下の惟光(これみつ)の助けを借りながら夕顔の葬儀を終え、光源氏は失意に沈んでいます。ある夕暮れ時、右近(夕顔の侍従)を呼び寄せて、亡き夕顔のことを聞き出します。
【今回の源氏物語】
「何か、隔てきこえさせはべらむ。自ら、忍び過ぐしたまひしことを、亡き御うしろに、口さがなくやは、と思うたまふばかりになむ。…」
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☆ 古文オリジナル問題~敬語の問題~☆
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「何か、隔て⒜きこえさせ ⒝はべらむ。自ら、忍び過ぐし⒞たまひしことを、亡き御うしろに、口さがなくやは、と思う⒟たまふばかりになむ。…」
問)傍線部⒜~⒟の敬語の説明として間違っているものを、次の中からすべて選べ。
1.⒜は、光源氏に対する敬意を表す。
2.⒝は、夕顔に対する敬意表現である。
3.⒞は、夕顔に対する敬意表現である。
4.⒟は、光源氏に対する敬意表現である。
5.⒜から⒟の中で、尊敬語は2つある。
6.⒜から⒟のすべて、右近からの敬意表現である。
高校1、2年生のみなさん。
もう助動詞や重要古語は覚えましたか?
助動詞・古文単語をある程度覚えたら、
次に立ちはだかるのは、敬語です!
ヽ(゚Д゚;)━━
先日のセンター試験でも、
敬意対象の問題が出ましたよね~;;
今後、大学入試共通テストに向けて、
敬語の識別は、長文読解の中で
ある程度浮かんでくるようにしておくこと!
このイラスト訳で、古文目線が習得できたら、
問題ないと思います。
それでは、上のような問題を解くには、
どのようなことを勉強すればよいのか…?
まずは、次の3点を確認しておきましょう。
⑵敬語を見て、そのもとの動詞が言えるか。
※補助動詞かどうかも含めて
⑶誰から誰に対する敬語表現か、
文脈を見て確認できるか。
敬語は、たったこれだけの習得でOKですっ!
「何か、隔て⒜きこえさせ ⒝はべらむ。
⒜は、「きこえさす」という謙譲の補助動詞、
⒝は、「はべり」という丁寧の補助動詞です。
【きこえさす(聞こえさす)】
【補助動詞:サ行下二段活用】
…~申し上げる(謙譲の意を表す)
【はべり(侍り)】
【補助動詞:ハ行下二段活用】
…~でございます。~であります。~です(丁寧の意を表す)
*『全訳古語例解辞典(小学館)』より
敬語の種類が見分けられたら、
次に、誰から誰に対する敬意かを確認します。
今回の傍線部は、
すべて、右近の会話文中の言葉なので、
すべて、右近からの敬意表現です。
6.⒜から⒟のすべて、右近からの敬意表現である。(○)
また、
「何か、隔て⒜きこえさせ ⒝はべらむ。
夕顔が、光源氏に対して「隠し隔て」をしたので、
⒜は、動作の受け手である光源氏に対する敬意です。
1.⒜は、光源氏に対する敬意を表す。(○)
⒝の「はべり」は、丁寧語なので、
この会話文を聞いている人、
すなわち、光源氏に対する敬意となります。
2.⒝は、夕顔に対する敬意表現である。(×)
「…自ら、忍び過ぐし⒞たまひしことを、亡き御うしろに、口さがなくやは、と思う⒟たまふばかりになむ。…」
⒞と⒟は、「たまふ」という敬語ですね。
実は、「たまふ」が入試で出てきたときは、
敬語の種類を注意して確認しなければなりません。
`;:゛;`;・(゜ε゜ )ブッ!!
【たまふ(給ふ)】
【他動詞:ハ行四段活用】
①お与えになる。お下しになる(「与ふ」の尊敬)
②軽い尊敬の気持ちをこめて、人を誘ったり、何かを頼んだりする意を表す。
【補助動詞:ハ行四段活用】
…~なさる。お~になる
【他動詞:ハ行下二段活用】
…(上代語)いただく。頂戴する(「受く」の謙譲)
【補助動詞:ハ行下二段活用】
…(「思ふ」「見る」「聞く」などの連用形に付いて)動作主自身のへり下りの気持ちを表す。~させていただく。~ております
*『全訳古語例解辞典(小学館)』より
つまり、
活用の種類によって、敬語の種類も変わるんです。
!!щ(゜Д゜щ)
「…自ら、忍び過ぐし⒞たまひしことを、
⒞の場合は、「たまひ」という形から、
明らかに四段活用(=尊敬)ですよね!
夕顔が忍び過ぐす(=秘密にし通す)という文脈なので、
⒞の敬語は、夕顔に対する敬意表現です。
3.⒞は、夕顔に対する敬意表現である。(○)
問題は、⒟ですねー!
(`・д´・ ;)
「…口さがなくやは、と思う⒟たまふばかりになむ。…」
副助詞「ばかり」は、体言や連体形によく付きますが、
辞書をみると、終止形などにも付くとあります。
(;゚;∀;゚;)
なので、
もしこの「たまふ」が連体形であれば四段活用ですが、
終止形であれば、下二段活用の可能性もあるため、
活用の種類では、判別することができないのです。
!!!o(・´д・`o)))三(((o´・д`・)o
ではどうすればよいか…?
文脈判断するしかないんですねー;;
ちなみに…
もう一度辞書的意味を、確認してましょう。
【たまふ(給ふ)】
【補助動詞:ハ行下二段活用】
…(「思ふ」「見る」「聞く」などの連用形に付いて)動作主自身のへり下りの気持ちを表す。~させていただく。~ております
…ん…?
「…口さがなくやは、と思う⒟たまふばかりになむ。…」
この⒟は、「思う」に付いてますよね!
…こういうパターンが、文脈判断の役に立つこともあるんですよね。
「口さがなし(=勝手なことを言いふらす)」のは、
話し手の右近本人ですので、
この「思うたまふ」は謙譲表現です。
4.⒟は、光源氏に対する敬意表現である。(○)
光源氏に対して思いを向けているので、
光源氏に対する敬意と捉えてよいでしょう。
古典文法のラスボス、敬語の極意☆
つかめましたかねぇ~?
【解答】…2、5