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カチオン界面活性剤の刺激について
「ポリクオタニウム-10」
という成分があります。
この成分は現在頻繁にシャンプーの添加物として加えられており、
帯電防止作用や微弱な保湿作用など、
毛髪に対するコンディショニング効果があります。
→ポリクオタニウム-10
よくインターネットの化粧品成分辞典などでは
「低刺激で安全性が高い」
などというような評価を受けることが多いですね。
しかしこの評価は一部誤解をまねくものになります。
確かにポリクオタニウム‐10は安全性は高いですが、
無刺激の添加剤では決してありません。
配合量が少なければ問題のある成分ではありませんが、
たくさん配合されるとなるとまったく話は別なのです。
◎ポリクオタニウム‐10は「カチオン界面活性剤」?
ポリクオタニウム‐10は正式には
「カチオン化セルロース」と呼ばれる物質で、
カチオン界面活性剤の一種(遠い親戚)です。
セルロースというのは簡単に言えば植物性の多糖で、
植物の細胞壁などを構築している物質です。
まぁつまるところ「糖」の一種ということになりますね。
↑このように糖の構造の一部をカチオン化しています。
糖構造自体は親水性のヒドロキシ基(‐OH)がたくさんついているので
水と馴染みやすく
通常の界面活性剤のように親油基を持たないことから洗浄性能などは一切ありませんが、
カチオン化した部位がマイナスの電荷に吸着して中和するので
カチオン界面活性剤のように毛髪に対して柔軟効果を発揮することができます。
さらにセルロース本来の効能として水との親和性がある為、
保湿効果を持ち、毛髪のコンディショニング剤として用いられるのです。
◎シャンプーと一緒に配合できる「カチオン」
ポリクオタニウム‐10はカチオン界面活性剤の一種であるにも拘らず、
アニオン界面活性剤の効果を阻害せずシャンプーに一緒に配合できます。
通常のカチオン界面活性剤をシャンプーと一緒に配合すると、
溶液に混ぜた段階でアニオン界面活性剤(洗剤)と中和しあって
界面活性効果(洗浄能力)を失ってしまいます。
しかしカチオン化セルロースはシャンプーと一緒に配合しても
その洗浄能力を阻害しません。
カチオン化セルロースは
通常の界面活性剤と比べると非常に大きな分子で、
上記の糖構造がなが~く繋がった高分子化合物です。
↑イメージはこんな感じです。
このサイズのカチオン化セルロースは水に溶解するのに時間がかかるため
シャンプーなどで水となじませた時には
アニオン界面活性剤は素早く水と馴染んで洗浄機能を発揮しますが
カチオン化セルロースはしばらく時間が立たなければ
カチオン界面活性剤として働かないのです。
つまり、
シャンプーの洗浄剤とは時間差で効果を発揮することで
シャンプーの洗浄効果を阻害しない画期的な成分とも言えるのです。
このような効果からカチオン化セルロースは
シリコーンなどの皮膜を行わず質感の調整が可能ということから
リンスが必要ない「リンスインシャンプー」の主原料として
長く用いられてきています。
昨今のシャンプーにこのカチオン化セルロースが配合されていないことはむしろ希ですから、
ある意味では今のシャンプーのほとんどがリンスインシャンプーということになりますね。
◎カチオン化セルロースの皮膚刺激性
さてカチオン化セルロースはこのように画期的な成分として現在も広く利用されていますが、
実際のところこの成分の扱いにはいくらか注意が必要です。
当然のことながら画期的な効果を秘めた成分には大きな弱点もあるのです。
カチオン化セルロースの大きなデメリットの一つは、
その皮膚刺激性です。
毛髪に対して吸着する分にはほとんど影響が無いと言えますし、
セルロースという「糖」を加工していることから急性毒性も低く安全性の面では申し分ありません。
しかしプラスの電荷を持つカチオンという物質の性質上、
皮膚などに吸着されると少なからずの一次刺激があります。
しかも、
このように巨大な膜構造として皮膚にベタっと張り付いてしまうので、
水で流れにくく、残留性が高い(刺激が持続してしまう)のです。
このため
あまりにカチオン化セルロースを大量に配合しているリンスインシャンプーなどは皮膚への刺激が懸念され、
実際にカチオン化セルロースの量が多いシャンプーでは
頭皮の痒みやフケなどの症例がよく報告されます。
アトピー体質の方や敏感肌の方は、
ポリクオタニウム‐10が大量に配合されているシャンプーは避けるが懸命です。
◎カチオン化セルロースで質感が低下?
もう一点カチオン化セルロースの大きな欠点と言えるのは
配合量によっては質感が低下する
という点です。
効能度のカチオン化セルロースが多重に重合して毛髪をびっしりコーティングしていくと、
本来は質感を柔らかなモノに変える成分のはずが
いきなり「バリバリ」「ゴワゴワ」とした質感になってしまうことがあります。
これはセルロースが高分子化合物であり、
かつシリコーンのような油状物質ではないことから想定可能な質感です。
本来は植物の細胞壁などを構成する分子ですから、
分子が重なっていくと硬度が増して硬い質感になっていくということです。
シャンプーを短時間で済ませれば
カチオン化セルロースが吸着する前に流してしまえるので
このような質感になることはありませんが、
シャンプーの時間が長くなるとこのようなことになりかねません。
また一つのシャンプーの効果の感じ方に個人差があるのも、
この成分が原因である可能性が高いです。
例えば女性と男性ではシャンプーの時間が絶対的に異なっており、
シャンプーの時間が短い男性にとっては「サラサラ」の仕上がりでも、
時間が長い女性の場合には「ゴワゴワ」になった…
ということがしばしばあるのです。
ですから大昔からこのカチオン化セルロースの配合には注意が必要ということはよく知られており、
「低刺激で質感調整作用がある画期的な成分」
というイメージで適当に乱用すると困った結果を招くことになります。
取るに足らない成分…
という印象でポリクオタニウム‐10を見ていると、
意外なところで足元を掬われるかもしれません。
コンディショニング効果を謳うシャンプー
では比較的高配合になっていることが多く、
シャンプー選びの際にはぜひ注意したいポイントですね!
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