一度筋肉を鍛えて強くしたことがあると筋肉はその状態を記憶していて、一度弱くなっても再び鍛え始めると急激に筋力が戻るというマッスルメモリーという現象があります。
筋肉の太さや強さが増すには、筋肉以外にも神経の発達やホルモンバランスなどが関わっています。過去に筋肉トレーニングをしていれば、筋肉を強くすることを体が覚えているため、トレーニングを再開した時に早く筋力が戻るのです。
トレーニングをしていない期間が長くても、マッスルメモリーという現象は起こります。学生の頃は部活などで運動していたけど、社会人になってからは全然運動はしなくなったという人でも、全く運動をしていなかった人に比べれば早くトレーニングの成果が現れます。
また、筋力だけでなく動作についても筋肉の記憶が関係しています。適切な運動や動作を行うために利用される記憶に、筋肉記憶というものあります。運動に限らず楽器の演奏などでも、筋肉記憶が使われていると考えられています。
筋肉記憶といっても筋肉自身に記憶が蓄積されているのではなく、小脳などの脳が関与している記憶です。運動などで反復練習を積むことによって、あまり意識しなくても動作を行えるようになりますが、これは筋肉が動きを覚えるというよりも、運動に関する脳の部位(運動野)の活動が強くなることによるものです。
筋肉記憶は、反復練習により脳神経を刺激して身に付けていくことができます。脳には多くの神経があり、運動のパターンなどを神経のネットワークを作ることで記憶します。同じ動作を繰り返すことによって、その動作に関する脳神経の結びつきが脳の中に生まれて強くなっていきます。実際に運動するときは、適切なパターンを記憶から引き出して調節を行っています。
このときに注意しなければいけないことは、正しい動きの反復練習をしなければいけないということです。反復練習の時に誤った動きをしてしまうと、誤った動きを脳に記憶させてしまうことになります。スポーツ選手の癖は、本人が意図しない動きを反復してしまった結果として付いてしまったものと言えます。
また、どのくらい反復練習をすれば脳に記憶できるのかには個人差があります。ちょっと練習すれば身に付く人がいれば、中々身に付かない人もいます。しかし、どんな人でも脳が記憶するまで反復練習をすれば、動作自体を身に付けることはできます。問題は、あきらめずに反復練習を繰り返すことができるかどうかです。
筋肉記憶を増強するためには、幾つかのポイントがあるようです。
まずは、自分の身体の動きを意識しながら動作を行うことです。動かす部位の筋肉を意識しながら、どのタイミングでどの筋肉を使うのかということをイメージして動作を行うようにします。
また、異なる動作を身に付けるためには、それぞれの練習の合間に休憩をとることです。運動記憶の干渉というものがあり、ある動作の練習をした直後に異なる動作の練習をすると、最初に練習した動作が脳に定着しにくくなります。そのため、異なる動作の練習の前に休憩をして、最初に練習した動作を脳に定着しやすいようにすることが必要となります。
そして、練習して覚えた動きを脳に定着させて忘れないようにするために、レム睡眠が必要だということです。質の高い睡眠をとることによって動きの記憶が増強されることになります。
その他にも、利き手や利き足と反対側でもトレーニングをすると効果が上がります。メジャーリーガーのダルビッシュ投手が、利き手と反対の左手で投げるのを見たことがある人はいると思います。
トップのスポーツ選手には天才と呼ばれる人がいますが、実は努力の積み重ねの結果として技術を習得している人がほとんどです。運動神経はほとんどが後天的なものであり、鍛えることで発達させることができます。運動神経は生まれ持った遺伝的なものよりも環境に左右されるもので、どのようにトレーニングに取り組んでいたのかで大きな差が付くようです。
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