週40時間労働で誰もが安心して暮らせる日本へ(どうみる?財政赤字(20)山家悠紀夫さんに聞く) | くろすろーど

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 ――今回で最終回です。これまで財政赤字に関わる様々な問題についてお話をうかがいました。最後に日本経済の今後を考える上で大事な点についてお聞かせください。


 山家 大きく言うと、誰もが安心して暮らせる日本社会をつくることが、財政の問題も含めて日本経済を立て直すことにつながっていきます。とりわけ、構造改革が壊してしまった日本社会を何とか良くするために、私は次の3つの点が大切だと思っています。


 1つは、週40時間労働で人間らしい暮らしができる日本社会にすること。


 2つめは、社会保障をヨーロッパ並みの水準に引き上げて、誰もが安心して暮らせる社会にすること。


 3つめは、構造改革が壊した地方経済を再生して、日本全国どこにいても豊かに暮らせる社会にすることです。


 2つめの社会保障の問題については、すでに「(6)社会保障費が財政赤字の原因?」 の中で指摘していますし、3つめの地方経済の問題に関わっては、このブログで次回から京都大学教授の岡田知弘さんが「地域主権改革」の問題をめぐって詳しくお話されるようですので、私の方からは、週40時間労働で人間らしい暮らしができる日本社会にすることが大事だという点について最後に指摘しておきたいと思います。


          ▼日本の長時間労働は世界で突出している
            【週50時間以上働く人の割合】
             (2005年の対全雇用者の国際比較、ILO調査より)

くろすろーど-50時間以上


 上のグラフは、週50時間以上働く人の割合です。日本は、フランスの3倍以上、オランダの20倍以上と世界で突出しています。


          ▼帰宅時間もこんなに遅い日本
            【労働者の平日の帰宅時間】
            (内閣府「少子化社会白書(2005年版)」より)


くろすろーど-帰宅時間


 上のグラフは、働く人の平日の帰宅時間です。日本(東京)の男性の平均帰宅時間は、スウェーデン(ストックホルム)より3時間38分も遅く、女性も2時間15分も遅くなっています。


     ▼日本は労働時間の法的規制がないため過労死・過労自殺が多発
       【労働時間の法的規制】(ILOの2005年の調査より)

くろすろーど-労働時間規制


 上の表は、労働時間の法的規制です。ヨーロッパは、「1日の最低休息時間は連続11時間」と法律で決められていますので、1日24時間から休息時間の11時間を引いた13時間が1日の労働時間の上限になります。ところが、日本には労働時間の法的上限規制はありません。日本の大企業は、過労死・過労自殺に至るような長時間労働を労働者に強いています。(※→「このままでは仕事に殺される - 過労死・過労自殺を強制する経団連会長・副会長出身企業13社」 を参照ください)


 ◆人間らしい労働時間にするだけで
  何百万人もの雇用を創出できる


 ヨーロッパ並みに、労働時間をきちんと法的に規制するだけで、何百万人もの雇用を創出することができます。(※→「非正規の正社員化・サービス残業根絶・週休2日・有休完全取得で635万人の雇用創出し日本経済は拡大」 「経済危機打開のための緊急提言 - 内部留保を労働者と社会に還元し内需拡大を」 を参照ください)


 ◆日本政府は「1日の最低休息時間を連続11時間」と

   法律で定めるべき


 日本政府も「ワーク・ライフ・バランス」の実現や、「少子化対策」を本当にはかりたいとするなら、まっさきにヨーロッパのように「1日の最低休息時間は連続11時間」と法律で定めるべきです。


 週40時間労働で人間らしい暮らしができる日本社会をつくることによって、安定した雇用が大きく増え、国民の暮らしが向上して、内需主導の経済再建と財政の立て直しをはかることができるのです。


 ――たいへん長い時間、ありがとうございました。


 《※この記事は、連載「どうみる?日本の財政赤字(山家悠紀夫さんに聞く)」の「(1)孫子の代まで借金漬け?」 「(2)国の財政と家計は性格が違う?」 「(3)日本がギリシャのようになる?」 「(4)国民を黙らせる「呪文」?」 「(5)公務員人件費が高いから財政赤字が増えた?」 「(6)社会保障費が財政赤字の原因?」 「(7)赤字の原因は大型公共事業?」 「(8)法人税減税・高額所得者減税が赤字を拡大?」 「(9)賃上げが赤字減らす?」 「(10)最賃アップと派遣法改正が必要?」 「(11)強きを助け弱きをくじく税の転換?」 「(12)「日本の法人税は高くない」と経団連幹部が証言」 「(13)法人税の増税が必要」 「(14)軍事的には小さな政府が必要」 「(15)日本の消費税負担はすでにスウェーデン並み」 「(16)経団連が大企業の内部留保を還流すべきと提言」 「(17)非正規雇用改善・賃上げ成長戦略が財政赤字なくす」 「(18)民主党政権の新成長戦略で赤字解消は困難」 「(19)正社員vsハケンでなく企業から家計へ所得移転を」 のつづきです。》


(おわり ※連載「どうみる?日本の財政赤字(山家悠紀夫さんに聞く)」は今回で終了します)


(聞き手・編集=国公労連・行革対策部 井上伸)