どうみる?財政赤字(14) -軍事的には小さな政府が必要(山家悠紀夫さんに聞く) | くろすろーど

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 《※連載「どうみる?日本の財政赤字(山家悠紀夫さんに聞く)」の「(1)孫子の代まで借金漬け?」 「(2)国の財政と家計は性格が違う?」 「(3)日本がギリシャのようになる?」 「(4)国民を黙らせる「呪文」?」 「(5)公務員人件費が高いから財政赤字が増えた?」 「(6)社会保障費が財政赤字の原因?」 「(7)赤字の原因は大型公共事業?」 「(8)法人税減税・高額所得者減税が赤字を拡大?」 「(9)賃上げが赤字減らす?」 「(10)最賃アップと派遣法改正が必要?」 「(11)強きを助け弱きをくじく税の転換?」 「(12)「日本の法人税は高くない」と経団連幹部が証言」 「(13)法人税の増税が必要」 のつづきです。》


 ――民主党政権は、「事業仕分け」などで「ムダな歳出の削減」が必要だとアピールしていますが。


 山家 これまで見てきたように、財政赤字を解消していくための財源を生み出す基本は、「負担能力に応じた負担原則」をきちんと貫く税制を実現することにあります。具体的には、①証券優遇税制の是正、②所得税・住民税の最高税率の引き上げ、③大企業に対する法人税率の引き上げ、この3つが柱となります。


 ◆「事業仕分け」でムダ削減をアピールするが
  一番大きなムダ=軍事費を削減しない民主党政権
  ――「思いやり予算」など米軍関係経費は過去最高に


 これらに加えて政府が行うべきことはムダな歳出の削減です。大型公共事業費とともに、ムダの代表格は、民主党政権になってもなぜか聖域化されていて、削減が検討される気配すらない軍事費です。


         ▼日本の軍事費の推移
          ――自公政権時より162億円増やした民主党政権

くろすろーど-軍事費の推移


 そもそも、戦力不保持を定めている憲法のもとで、軍事費の支出は違憲であるという問題があります。ところが、民主党政権は、「事業仕分け」でも軍事費には手をつけず、今年度予算は4兆7,903億円(上のグラフ参照)で、昨年度より162億円も増やしています。とりわけ、米軍への「思いやり予算」やグアム移転などの米軍関係経費が3,370億円と史上最高になっています。


           ▼世界で突出して高い日本の米軍駐留経費

くろすろーど-米軍負担


 上のグラフは、米国防総省が2004年に公表した「共同防衛に対する同盟国の貢献度報告」によるものです。2001年の数字で、アメリカの同盟国27カ国が米軍のために負担した金額は総計で約8.398億円です。このうち日本が支出した金額が約4,411億円で、日本だけで全体の53%を占めます。


 日本の米軍負担は、2番目に多いドイツ1,564億円の3倍弱、3番目の韓国843億円の5倍以上と突出しています。米兵1人当たりの負担額は、韓国やヨーロッパは約2万ドルですが、在日米軍の場合は約10万6,000ドルと他国の5倍以上です。(※アメリカの同盟国27カ国=日本、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、トルコ、英国、オーストラリア、韓国、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)


 ◆「軍事的には小さな政府」を目指すべき


 いまヨーロッパ諸国では、財政赤字を減らすために軍事費を削減する動きが強まっています。社会保障など国民の暮らしにかかわっての「小さな政府」は目指すべきではありませんが、「軍事的には小さな政府」を目指すべきです。


 世界で異常に突出している米軍への「思いやり予算」など米軍関係費3,370億円の削減や、海外派兵経費などの削減で、当面少なくとも年間1兆円は軍事費を削減する必要があります。


(つづく)


(聞き手・編集=国公労連・行革対策部 井上伸)