日本の消費税負担はすでにスウェーデン並み(どうみる?財政赤字(15) 山家悠紀夫さんに聞く) | くろすろーど

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 《※連載「どうみる?日本の財政赤字(山家悠紀夫さんに聞く)」の「(1)孫子の代まで借金漬け?」 「(2)国の財政と家計は性格が違う?」 「(3)日本がギリシャのようになる?」 「(4)国民を黙らせる「呪文」?」 「(5)公務員人件費が高いから財政赤字が増えた?」 「(6)社会保障費が財政赤字の原因?」 「(7)赤字の原因は大型公共事業?」 「(8)法人税減税・高額所得者減税が赤字を拡大?」 「(9)賃上げが赤字減らす?」 「(10)最賃アップと派遣法改正が必要?」 「(11)強きを助け弱きをくじく税の転換?」 「(12)「日本の法人税は高くない」と経団連幹部が証言」 「(13)法人税の増税が必要」 「(14)軍事的には小さな政府が必要」 のつづきです。》


 ――財政赤字が増える中で、消費税増税が必要とする論調もありますが。


 ◆消費税は負担能力のない人に重い負担強いる最悪の税


 山家 消費税は、強きを助け弱きをくじく税金です。「負担能力に応じた負担原則」という税の大原則で見ると、消費税は負担能力のまったくない人にも一律に負担を強い、負担能力のとぼしい人ほど負担が重いという最悪の税です。


 現在の消費税率と税制においても、強きを助け弱きをくじいていることは、これまでに「(11)強きを助け弱きをくじく税」「(6)社会保障」 「(8)法人税減税・高額所得者減税」 などを考える中で見てきたとおりです。


 ◆貧困を深刻化させる消費税


       ▼実収入に対する消費税負担率
        【総務省統計局「家計調査」2005年の収入階級別税負担より】

くろすろーど-消費税負担


 上のグラフは、実収入に対する消費税負担率です。このように消費税は、低い収入の人ほど負担が重い逆進性の強い税であり、その他にも、中小・零細企業の経営を圧迫しますし、実質消費を抑え景気を悪くするという欠陥を持っています。


 にもかからず、消費税増税が必要な理由として、①所得税で勤労世代にばかり負担をかけられない、②所得税より消費税の税収が景気変動にあまり影響されない、などといったことが最近主張されています。しかし、この理由は説得力がありません。①所得税は勤労世代のみではなく年金世代にも、およそ所得のある人には課せられる税であり、②所得税の税収が景気変動の影響を消費税よりは受けやすいのは事実としても、好況時に増えた税収をプールして不況期の税収減を補うようにすればすむ話です。


 ◆実態見ず消費税率だけ国際比較するのは間違い
  日本の消費税負担はすでにスウェーデン並み


 また、「日本の消費税率5%は、国際的にみれば低すぎる」とか、「福祉先進国のスウェーデンの5分の1、ヨーロッパ各国の4分の1と日本の消費税率は低すぎるから消費税増税が必要だ」などとよく言われます。財務省なども消費税率だけの国際比較のグラフなどをよく持ち出してきます。しかし、これは消費税率という数字だけを表面的に比べるもので、実態をきちんと見ない間違った議論です。


          ▼各国の国税収入に占める消費税収入の割合

くろすろーど-保団連


 上のグラフ全国保険医団体連合会 作成にあるように、国税収入に占める消費税収入の割合をみると、約22%と、日本はスウェーデンやイギリスとまったく同程度であることがわかります。これは、日本の消費税が「網羅的」に課税されているのに対して、ヨーロッパ各国の付加価値税は、①医療・教育から住宅取得・不動産・金融など幅広い非課税項目があること、②食料品や医薬品など、生活必需品は軽減税率をとっているためです。日本の消費税は、税率だけを見るとヨーロッパ各国よりも低いのですが、生活必需品や医療・教育などにも一律に課税されるため、所得の低い人の暮らしを破壊するのです。日本の消費税は、世界から見ても、強きを助け弱きをくじく最悪の税なのです。このことは、下のグラフのように、収入のない子どもたちの貧困を、世界で日本だけが税によって悪化させていることにもあらわれています。(※グラフの説明は、「(6)社会保障費が財政赤字の原因?」 を参照ください)


    ▼日本だけが社会保障・税によって「子どもの貧困」を悪化させている

くろすろーど-貧困削減効果


 強きを助け弱きをくじく消費税増税ではなく、①証券優遇税制の是正、②所得税・住民税の最高税率の引き上げ、③大企業に対する法人税率の引き上げ、を柱とする「負担能力に応じた負担原則」による税制の実現が必要です。


(つづく)


(聞き手・編集=国公労連・行革対策部 井上伸)